更新日: 2019.08.20 その他暮らし
国際結婚の結婚ビザは取れてからも一苦労?日本で暮らし続けるための手続きとその問題とは
配偶者が日本人で外国籍の夫や妻を日本に呼び寄せる場合には、結婚ビザ(正式には「日本人の配偶者等」の在留資格)を取得することになりますが、初回の申請で結婚ビザがもらえたとしても、「これで安心…」とはなりません。
外国籍の配偶者と日本で長期的に生活するうえで、どのような手続きが必要か、どのような問題があるかを見ていきます。
執筆者:佐野誠(さの まこと)
ACROSEEDグループ 代表・行政書士
行政書士法人、社会保険労務士法人、税理士法人を併設したACROSEEDグループを設立し、外国人向け法務サービスを提供しています。
外国人やそれに関わる人々に”信頼と安心”のプロフェッショナルサービスを提供し、日本社会の調和と活力あるグローバル化に貢献しています。
http://www.acroseed.co.jp/
●生涯に亘るビザ手続きの流れ
一般的に国際結婚をした外国人配偶者は「結婚ビザ」をもらい、家族と共に日本で生活を行います。「結婚ビザ」では通常の就労が認められていますので、就職先を見つければビザを変更することなく日本国内で働くことも可能です。
このようにして数年が経過すると子供が生まれることもあり、その子が外国籍ならその子供にも※「結婚ビザ」が比較的スムーズにもらえます。このようにして日本社会に根を下ろすと最終的に取得するのが「永住権」です。
永住権は文字通り日本に永住してよい権利ですから、よほどの例外的なことがない限り生涯を日本で暮らすことができるようになります。また、永住権には更新もありませんので、これを取得するとおよそのビザ手続きから解放されたことになります。
※子供でも「結婚ビザ」なのは、正式名称の「日本人の配偶者等」の等の部分に子供も含まれるからです。
●結婚ビザのシステム
入国時にもらった「結婚ビザ」ですが、これには在留期限(5年、3年、1年、6カ月の4種類)が定められています。通常、初回にもらえる在留期限は1年が多く、その後更新を繰り返して実績を積むと3年や5年の許可がもらえるケースが多くみられます。
当然ですが、例えば1年の結婚ビザの場合には、取得してから1年後の在留期限が切れる日までに、更新の手続きをしなければなりません。
これをしなかった場合には不法滞在となり、警察に逮捕されたり、入国管理局に収容される事態にもなりかねません。
ですので、国際結婚をした人にとって“ビザの更新”というのは、自分の人生を左右するぐらいの重要な手続きなのです。
●ビザを更新するためには
ビザの更新は最寄りの入国管理局で行います。東京の場合、品川からバスで15分ほどの場所に入国管理局があり、多くの外国人がビザ更新のために数年に1回はここに通うことになります。
通常はビザ更新の申請時に外国籍の本人が訪問し、その後審査が行われます。
審査は終了するまでに3~4週間程度かかり、終了すると自宅に審査終了のはがきが送られてきますので、それをもって今度はビザを受け取るために再び入国管理局を訪れなければなりません。
つまり、1回の更新手続きで最低でも2回の訪問が必要となります。当然、入国管理局は役所ですから平日しか開庁していません。
そのうえ、現在の東京入国管理局は非常に混雑しているため、申請を終えるまでに2~3時間はかかり、往復の時間を考慮するとほぼ丸1日を費やすことになります。2回目のビザを受け取る際も同様となります。
原則として本人が行かなければならないため、外国籍の配偶者が会社に勤務している場合にはこの手続きのために2日間も有休を取る必要があり、さらに、更新の際には4000円の収入印紙を購入しなければなりません。そのため、本人への負担は大きいといえます。
●更新申請でもらえるビザの期間
結婚ビザには5年、3年、1年、6カ月の4種類がありますが、6カ月は通常はあまり利用されません。
通常は、5年、3年、1年のどれかになり、更新手続きの際にどの滞在期間が欲しいか希望を申し出ることはできますが、最終的には審査の結果で決定されます。
前述したように更新手続きには負担がかかるため、「1年に1回、毎年やりたい!」と思う人はおらず、ほぼすべての人が「5年」を希望しますが、何度申請しても「1年」しかもらえない人と、すんなりと「3年」、「5年」とステップアップする人に分かれます。
●ポイントは“収入”
ここでのポイントは「生活の安定」です。具体的には継続して安定した収入があり、生活環境が変化していないことです。結婚ビザ取得の際にも収入は非常に重要ですが、そのビザ更新の場合にも強く求められます。
つまり、日本に長期的に住み続けるためには、安定した収入が確保できているかどうか、永住権をもらえるまで定期的にチェックを受け続けなければなりません。
具体的な金額は公表されていませんが、その家族が日本で生活するうえで最低限の収入があるかどうかで判断されます。
扶養者がサラリーマンである場合には継続して安定した収入が明らかであり、あまり問題となることはありません。
ところが、自営業やアルバイト、それに親の支援で生活している場合などには、1年の在留期限しかもらえないケースが多くみられます。
特に夫が外国籍で来日したばかりという状況ではすぐに就職することは難しく、一時的であれ日本人の奥さんがアルバイトや派遣で基本的な生活費を稼ぎ、親との同居で食費や住宅費を支援してもらうケースもみられます。
当然、このようなケースではビザ更新のたびに戦々恐々とすることになってしまいます。
国際結婚は言葉や文化の違いなどの壁がありますが、それに加えて、日本で生活を続けるためには現実的な収入や堅実な生活設計が求められます。
日本で生活するのであれば、日本人配偶者がしっかりとしたファイナンシャル・リテラシー(お金の知識)を持つことも重要です。
Text:佐野 誠(さの まこと)
ACROSEEDグループ 代表・行政書士