更新日: 2023.11.14 その他暮らし

マンションの売却を検討中! 意外にかかる諸経費や税金はどれくらい?

執筆者 : 中村将士

マンションの売却を検討中! 意外にかかる諸経費や税金はどれくらい?
マンションの売却を検討するとき、最も関心があるのは「いくらで売却できるか」だと思われますが、諸経費や税金についてはご存じでしょうか。マンションを売却するときには、さまざまな手続きがあり、それに伴い費用が発生します。また、多くの場合、税金も支払わなければなりません。
 
本記事では、マンションを売却したときにかかる諸経費や税金について解説します。なお、本記事では、個人がマンションを売却することを想定しています。
中村将士

執筆者:中村将士(なかむら まさし)

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

マンションの売却に係る諸経費(譲渡費用)

マンションを売却するときの手続きの流れは、以下のとおりです。

(1)契約を結ぶ
(2)決済を行う

 

契約を結ぶときにかかる費用

契約時には、売主と買主で契約書を作成します。このとき、契約書には取引価格に応じて収入印紙を貼らなければなりません。不動産の譲渡に関する契約書に貼付する収入印紙の額(印紙税額)は、図表1のとおりです。
 
【図表1】


 
なお、平成26年4月1日から令和6年3月31日までの間に作成される、不動産の譲渡に関する契約書については、図表2のように印紙税額が軽減されています。
 
【図表2】

 
例えば、令和5年12月にマンションを3000万円で売却する契約書を作成した場合、その契約書に貼付する印紙税額は1万円となります。契約書は売主と買主が双方で保管するため、2部作成します。収入印紙はそれぞれの契約書に貼付する必要があるため、双方で1万円ずつ負担することになります。
 
ちなみに、収入印紙の代金は税金(印紙税)ですが、ここでは話の流れ上、諸経費として記載しております。
 

決済を行うときにかかる費用

「決済を行う」とは、不動産(ここではマンション)と売買代金の交換を行うことをいいます。言い換えれば、不動産の引き渡しと代金の支払いを行うことです。代金の支払いは、一般には、買主が売主の口座へ代金を振り込むことで確認します。一方、不動産の引き渡しは、「所有権移転登記(不動産の所有権を売主から買主へと移す)」手続きを、司法書士に委任することで確認します。
 
ここで発生する費用は、司法書士への報酬(手数料)です。売主から司法書士に支払う報酬は、一般には、1万円ほどであることが多いようです。ただし、取引不動産に別の権利(例えば「抵当権」)が付いており、それを消さなければいけない場合(これを「抹消登記」といいます)などは、別途費用が発生します。
 
また、マンションを売却するとき、不動産会社に仲介を依頼することが多いと思います。この場合は決済後に、不動産会社へ仲介手数料を支払う必要があります。仲介手数料は、法律の規定により「売買代金の3%プラス6万円(消費税別)」が上限となります。例えば、売買代金が3000万円だった場合、仲介手数料の上限は105万6000円(消費税込み)となります。
 

マンションの売却に係る税金

不動産の売却代金は、譲渡所得として所得税・住民税の課税対象となります。不動産所得は、以下の計算式によって計算します。

課税譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
 
※譲渡価額:売却代金
※取得費:購入時に支払った金額(購入代金や仲介手数料など)
※譲渡費用:売却するに当たり支払った金額(印紙税や仲介手数料など)
※特別控除額:特例で控除できる金額(自宅を売却したときは最高3000万円)

例えば、マンション(自宅)を3000万円で売却したときの譲渡所得金額は、以下のように計算します。

課税譲渡所得金額= 3000万円-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(3000万円)< 0

この場合の譲渡所得金額は0円となり、所得税・住民税は課税されません。ちなみに、譲渡所得金額がプラスになった(譲渡益がある)場合の税率は、図表3のとおりです。
 
【図表3】

長期譲渡所得
(譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合)
所得税15%、住民税5%
短期譲渡所得
(譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合)
所得税30%、住民税9%
軽減税率の特例(自宅の売却)
(譲渡した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えている場合)
6000万円までの部分:所得税10%、住民税4%
6000万円を超える部分:所得税15%、住民税5%

 

まとめ

マンション(自宅)を売却するとき、それに係る諸経費、税金は以下のとおりです。

・諸経費:登記費用、仲介手数料など
・税金:印紙税、所得税、住民税

マンションの売却価額を3000万円、4000万円と想定した場合の諸経費、税金は、図表4のようになります。なお、この試算では、上記諸経費、税金以外は考慮しないものとします。また、税金の計算上、取得費は概算費用として「売却価額の5%」を採用し、税率は「軽減税率の特例」を適用するものとします。
 
【図表4】

売却価額
3000万円の場合 4000万円の場合
諸経費 登記費用 1万円 1万円
仲介手数料(上限) 105万6000円 (※1)138万6000円
税金 印紙税 1万円 1万円
所得税 0円 (※2)65万9400円
住民税 0円 (※3)26万3760円
合計 107万6000円 232万9160円

※筆者作成
 
※1 138万6000円=(4000万円× 3%+ 6万円)×1.1
※2 65万9400円={4000万円-(200万円+140万6000円)- 3000万円}× 10%
※3 26万3760円={4000万円-(200万円+140万6000円)- 3000万円}× 4%
 
このように、マンションを売却するときには、諸経費や税金が少なからずかかることが分かります。最後にお伝えしたいのは、以下の点です。

・仲介手数料はあくまで上限であり、これより少ない手数料で済む会社もある
・軽減税率の特例は、利用するに越したことはない

不動産取引は大きな金額を取り扱うため、少しの違いで大きな差が生まれます。マンション(不動産)の売却を検討される際には、本記事もぜひ参考にしてみてください。
 

出典

国税庁 「印紙税額」
国税庁 「土地や建物を売ったとき」
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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