更新日: 2019.01.10 その他暮らし

「医療費の負担がキツイ…」と思ったら。医療費が高額になった時には覚えておきたい高額療養費制度とは

「医療費の負担がキツイ…」と思ったら。医療費が高額になった時には覚えておきたい高額療養費制度とは
2018年8月に、70歳以上の方の高額療養費の自己負担額の限度額が変わりました。
 
これまでよりも、現役並み所得者の方の区分が細かくなり、一般所得者の方の自己負担額が引き上げられる、痛みを伴う改正です。
 
ただ、高額療養費は複雑であるものの、しっかりと使いこなすとお得な制度です。ポイントを押さえておきましょう。
 
當舎緑

Text:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

改正の内容は70歳以上対象

今回改正となった部分は、【表1】の赤枠内です。
 

 
この表を見る場合の注意点を申し上げましょう。例えば、表中、「総医療費」と書いてあるのは、自分が窓口で支払った額ではありません。誤解されている方が多いのですが、例として、窓口負担が30,000円で、自己負担額が3割の方であれば、総医療費は100,000円となります。
 
ですから、一般の所得の方は、80,100円プラスアルファの計算式が、自己負担額の上限となります。そして、「多数該当」とは、直近1年間に3回以上、自己負担額が上限に達した時のことをいい、4回目以降は自己負担額が下がります。
 

限度額適用認定証があるから高額療養費は知らなくても大丈夫?

今年に限り、現役並み所得ⅡとⅠの該当の方に対して、限度額適用認定証が届いています。この「限度額適用認定証」とは、普通は、窓口で支払うべき医療費を、この認定証を窓口に提示することで、自己負担の限度額まで支払えばよくなるものです。
 
現役並み所得Ⅲの方と一般所得者の方は、高齢受給者証の提示で、自己負担額限度額までの支払いとなります。限度額適用認定証が届いていない方は、所得が該当していないことが考えられます。医療費が高額になりそうな時、限度額適用認定証があることで、手元に大金を準備する必要がなくなるのです。
 

高額療養費、申請するのはどんな時?

高額療養費の自己負担額を限度額まで支払うのは、窓口ごとです。ですから、特殊なケースには対応していません。例えば、医療機関と調剤薬局のどちらにも行った場合、同じ健康保険に加入している家族の医療費も高額になった場合などです。
 
多数該当や世帯合算などに該当した時も特殊なケースといえます。高額療養費の対象となるのは、医療機関で支払った自己負担額が対象ですが、「食費」「居住費」「差額ベッド代」「先進医療にかかる費用」は対象外です。領収書を見てわからなければ、自分が加入している健康保険に問い合わせてみるといいでしょう。
 

忘れがちな世帯合算の制度

高額療養費で特殊なケースとして忘れがちなのは、世帯合算という制度です。これは、自分で気付かなければ、誰かが教えてくれるものではありません。
 
一つの世帯で医療費の総額が高額になった場合に申請できます。同一世帯で複数の家族が同じ月に病気やケガ、病気などで医療機関を受診した場合、一人で複数の医療機関で受診した時、一つの医療機関で入院と外来で受診した場合、その自己負担額は、合算対象となるものは合算されます。
 
70歳未満の負担分であれば、それぞれが21,000円以上であることが必要ですが、70歳以上75歳未満の方の場合、全ての負担分が合算できます。ただ、いくつか注意点があります。世帯で合算できるのは、同じ健康保険に加入している場合です。被保険者の親と、離れて暮らす下宿中の被扶養者の子どもなどは合算できますが、共働きなど、別々の健康保険に加入していれば合算はできません。
 
同じ医療機関で受診した時、入院、通院、調剤、歯科外来に分けて計算します。高額療養費の申請は月ごとです。もし、処方箋を医療機関が交付し、翌月に調剤を受けたようなケースでは合算できません。また、月ごとの申請ですので、入院などで月をまたぐ場合には対象とならない場合があります(注)。
 
高額療養費は、申請後、レセプト(診療報酬明細書)の確定まで時間がかかることから、入金されるまで3か月程度といわれています。事前に限度額適用認定証の申請をするのがいいのですが、世帯合算などの特殊なケースは、自分が気付いて申請するしかありません。
 
医療費などが多額になる場合、高額療養費だけでなく高額療養費貸付制度、高額介護合算療養費、医療費の確定申告制度など、いくつもの使える制度があります。病気やけがになった場合には心細くなるものですが、何か使える制度はないか調べるくせを付けておきましょう。
 
注:一般所得者の方が、例えば9月1日から20日まで入院し、医療費が16万円かかった場合、高額療養費は申請できますが、8月31日に手術で8万円。8月31日から9月5日まで入院費用として8万円であれば、単独では対象外となるケースがあります。ただ、21,000円以上かかっていますので、世帯合算ができる場合があります。
 
Text:當舎 緑(とうしゃ みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)

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