更新日: 2024.02.27 その他暮らし
【注意】賃貸の原状回復は「借りた当初の状態に戻すこと」ではない!? 借主が「負担しなくて良い費用」とは?「損」しないために知っておきたい知識を紹介
そこで本記事では、賃貸物件の原状回復とはどういうことなのか? 具体例などを交えつつ解説します。
執筆者:山根厚介(やまね こうすけ)
2級ファイナンシャルプランニング技能士
賃貸物件の原状回復とは?
賃貸物件を退去する際には原状回復しなければならない義務があります。しかし、どこまでが「原状回復」に当たるのかを巡ってトラブルになるケースが少なくありません。
国土交通省住宅局が示したガイドラインでは「賃借人(借主)の通常の使用により生じた損耗は原状回復義務がない」とされています。つまり、借主が故意または過失(わざとまたはうっかりミス)で破損させたケース以外は貸主の負担で、借主が借りた当初の状態に戻さなければならない義務はありません。
借主が負担しなくて良い費用と負担しなければならない費用の具体例
前出のガイドラインでは、借主が負担しなくて良い費用について具体例が列挙してあります。代表的なものを紹介します。
●畳の表替え
●家具の設置による床やカーペットのへこみ
●(下地ボードの張り替えが不要な)壁の画びょう・ピンなどによる穴
●エアコン設置による壁のビス穴など
●テレビ・冷蔵庫などの設置による壁焼け
●(日照など自然現象による)クロスの変色
●網戸の張り替え
●ハウスクリーニング(借主が通常の清掃を実施している場合)
●鍵の取り替え(破損や紛失がない場合)
次に借主が負担しなくてはならない費用の具体例を紹介します。
●引っ越し作業などで生じた引っかき傷
●雨の吹き込みなどによるフローリングの色落ち
●借主が結露を放置したために拡大したカビやシミ
●タバコなどによるヤニやにおい
●(下地ボードの張り替えが必要な)壁のくぎ・ネジ穴
●故意による落書きなど
●ペットによる傷やにおい
●紛失や破損による鍵の取り替え
●庭の雑草
こうして列挙してみると、借主が負担しなければならない費用はもっともだと思われるものが多く、これであれば原状回復に関するトラブルは起きないように思えます。
特約に注意
それではなぜ原状回復に関するトラブルが多いのでしょうか。それは契約書に敷金の特約が定められているケースが多いことが挙げられます。例えば、賃貸住宅を退去する際にハウスクリーニング費用を負担したことがある人は多いのではないでしょうか。
前出のガイドラインによると一般的なハウスクリーニング費用は貸主負担ですが、特約で借主負担としてある場合は、借主がハウスクリーニング費用を負担しなければなりません。
このようにガイドラインで貸主負担とされている費用であっても、特約によって借主が負担するケースがあり、トラブルが起きる原因の1つとなっています。
筆者も築40年以上の賃貸物件を退去する際に、特約によって原状回復費用として20数万円を請求されたことがあります。国民生活センターや弁護士などに相談するなどして、最終的にはなんとか納得できる金額に落ち着きました。しかし、引っ越しでバタバタしているときに余計なトラブルが増え、精神的な負担が大きいものでした。
これも、特約に関する理解があいまいだったためにトラブルになったものです。契約自由の原則から特約を設けること自体には問題はありません。そのため、入居時に契約書をよく確認しておくことが大切です。また、入居時と退去時には貸主などと一緒にキズなどを確認しておく必要もあるでしょう。
まとめ
賃貸物件の原状回復は、借主が故意または過失で壊したり汚したりした場合以外は、原則として貸主が費用を負担します。しかし、契約に特約がある場合は借主が負担する場合もあります。そのため、契約の際には内容をよく確認しておくことが大切です。納得のできる契約を行い、損をしないようにしましょう。
出典
国土交通省住宅局 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)
執筆者:山根厚介
2級ファイナンシャルプランニング技能士