ワンルームマンションへの投資。手軽だが危険も潜む
配信日: 2017.07.19 更新日: 2019.01.08
資金は少額で購入できローンも可
不動産投資を考える場合、アパート1棟を買おうとすれば1億円以上は必要ですが、ワンルームマンションは、新築であれば3000万円前後、中古ならば1000万円台から購入可能です。金利の安い定期預金にしておくくらいなら、マンションオーナーになって、多少利益がでるだけでも満足、と考える人は多いはずです。
「副業でお小遣いが得られる」「将来の年金不安に備える」ことを目的に、購入者の多くは20代から40代です。販売業者も、そこをセールスポイントにして売り込んできます。マンションを販売する業者も大手から中小まで数多くあり、販売競争も激化しています。とくに独身の女性をターゲットとする業者も増えてきました。
10年以上にわたり賃貸料も下げずに空室になることがなく、安定的な収入が得られれば、資産運用としては成功といえます。しかし多くの物件が、そのような条件を保証してくれるわけではありません。「全額自己資金で賄える」「自分がそこに住んでもいい」「すでに何室も所有し追加購入」という人にとっては、多少のリスクは覚悟しての物件購入が出来るかもしれません。ところが、「金融機関から全額融資を受けた」「家賃収入は生活資金として不可欠」と考えている人にとっては、より注意深い選択が必要です。
収益性の高いマンションの選び方
建物の外観や内装、エントランスの仕様といった物件のもつ魅力も大切ですが、資産運用による成果を上げるためには、以下のことを考慮すべきです。
① <駅から近く人気エリアにある>
ワンルームマンションの借り手は、若手のビジネスマンや学生が中心です。駅から最低でも10分、できれば5分以内の立地が望ましいといえます。同時にその駅が人気の高いエリアであり、その駅近辺が住みたいと希望する人が多い沿線かどうかでも違ってきます。
最近の情報誌に「住みたい街ランキング」「住みたい沿線ランキング」などが公表されており、参考になります。いくら駅から近くても、都心まで遠い、沿線が不人気の地域にある物件は避けることが賢明です。家賃保証があるからといっても、何年同じ金額が保証されるかは不透明です。事情により売却することも考え、良い立地の物件を探し、それに投資することが重要になります。
② <家賃は下がることを前提に>
最近では、販売業者などが「家賃保証」をするケースが多くなりました。自分で借り手を探す必要はありませんが、その分家賃は割安になります。その場合「20年という長期に当初家賃を保証します」というセールストークをする業者もいますが、あとでトラブルになることも多く鵜呑みにしないことです。業者の立てた収支計画は、購入者に安心感をもたせるため、目立たない経費を削り、早期に収益が出るように見せています。こうした前提でつくられた見積もりで、利益がわずかしか出ない物件は、危険と考えたほうがよさそうです。すでに何室かを保有し運用経験があるならともかく、金融機関からの借入れをして、初めて購入する人は要注意です。
家賃に関しては、最初に決まった家賃が、数年後には値下げされるという前提で対処することが大切です。現に家賃保証をめぐる管理会社とのトラブルも多く、裁判に発展するケースも増えてきました。家賃保証の契約をするとしても、数年後に家賃が下がっても、利益が出る構造にできるかがポイントになります。
③ <すべての諸経費を正しく把握>
マンション投資は購入を決めるだけではありません。マンションを購入すると、固定資産税や都市計画税、さらに不動産取得税といった税金が購入者に対してかかります。それ以外に、各種備品の交換、壁面の補修などの修繕費も年を経るにつれ増えてきます。入居者が交代する際のメンテナンスも必要になります。会社勤務の人でも、確定申告をする手間も生まれます。
こうした経費を十分に見込んだ収支計画を、しっかり立てることが大切です。とくに金融機関から融資を受けている場合は、返済計画にこうした経費を計上したうえで、収益が確保できるかを点検しておく必要があります。
地価の動向と将来社会の見通し
2017年に発表された全国の路線価をみても、現在は上昇傾向にあります。とくに首都圏は値上がりしています。東京オリンピックに向けニーズが高まっていることはわかりますが、現在販売中のマンションを含め、ここ数年に建設されるものは、高い地価で購入され建設費も上昇しているため、かなり高額になると考えるのが自然です。
今後ともこの傾向が継続すれば問題はないのですが、今後数年で地価は下落傾向に向かうと考えるのが常識的です。それはオリンピック後の建設需要の低下と人口減少社会が現実となるからです。ここ1~2年が土地の価格はピークと思われます。現在買うか、安くなるのを待つかを、考える必要がありそうです。新築は見送り中古物件を買う、という選択もあるかもしれません。
人口減少社会の進展も住宅受給に大きく影響してきます。現在では、相続税対策を名目としたアパート建設がかなりのスピードで進行しており、金融機関が積極的に融資を行っています。その一方で、首都圏の周辺で空き家も急増しています。こと住宅に関しては完全に供給過剰の状態です。借り手である若手のビジネスマンや学生の数も、減ることはあっても増加は限定的です。借り手の側から見れば、遠距離通勤を覚悟すれば安い物件はいくらでもある、と考えられます。
ワンルームマンションの購入は、手軽にでき収益が保証されれば、低金利時代に向いている投資かもしれません。会社員であっても減価償却費など多少の経費計上もできます。その一方で、将来にわたる収益である家賃が、きちんと確保できるかが最大の問題といえます。社会情勢を含めた将来予測が大切になります。