マイナ保険証を受け付けてもらえない病院があると聞きました。従来の保険証を持っていかなった場合は自費になりますか?
配信日: 2024.12.26
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
目次
マイナ保険証で受け付けできない医療機関がある?
厚生労働省のサイトには「マイナンバーカードの健康保険証利用に対応する医療機関・薬局はこちら(マイナ受付のステッカーとポスターが目印です)」というタイトルのページがあります(2024年11月19日時点)。このようなページがあるということは、少なくとも閲覧時点では、マイナ保険証が未対応の医療機関があると考えられます。
マイナ保険証で受付ができないと治療費や投薬費は全額自己負担になってしまうのでしょうか?
従来の健康保険証を提示すれば、治療費や投薬費が全額自己負担になることはありません。いわゆる3割負担で治療や投薬を受けることができます。
マイナ保険証で受け付けできるはずの医療機関でも受付できないことがある?
マイナ保険証はシステムで利用者の情報を入手・確認します。そのため、マイナ保険証に対応できる医療機関だとしても、システムエラーが生じた時は対応でいないことが考えられます。
システムエラーが生じていない場合でも、「顔認証ができない」などの場合もあり得ます。顔認証ができず、「暗証番号」に誘導されることがあります。ここで暗証番号を思い出せないかもしれませんし、何らかの理由でロックされた場合には使用できません。
こういう場合には、住民票のある市区役所や町村役場の窓口等に行き、「利用者証明用電子証明書パスワード(4桁の暗証番号)の再設定」を行わなくてはなりません。今までの健康保険証ではあり得ない、しかも時間と手間を要する作業です。
顔認証ができない場合、「対面実施」に誘導されることがあります。対面実施とは、目視確認モードで認証を行います。
具体的には、厚生労働省の資料によると「マイナンバーカードの顔写真と患者本人が同一であるかを受付職員が目視で確認することで本人確認が可能となる」とのことです。目視ということで、要するにアナログな受付の可能性もあるということです。
医療機関は受付できるのに……なぜ?
マイナ保険証が医療機関では問題なく受付できているのに、ご自身のマイナ保険証では健康保険の資格確認ができない場合があります。理由は「電子証明書が失効している」ことが考えられます。このような場合は、マイナ保険証はまったく機能しません。
マイナンバーカードの電子証明書の更新と再発行の手続きはオンラインではできません。先述の暗証番号の再設定と同じく、市区役所や町村役場に出向き、電子証明書の更新や再発行手続きを行わなくてはなりません。
マイナンバーカードの電子証明書とは何でしょうか?
厚生労働省の資料によると「書面取引における印鑑証明書に代わるもの」とあります。マイナ保険証つまりマイナンバーカードを持ち歩くというのは、「印鑑証明書を持ち歩く」というイメージだといえるでしょう。
ところで、マイナ保険証で健康保険の資格確認ができない場合、治療は全額自己負担になるのでしょうか?
このような場合も、従来の健康保険証を提示すれば、治療費や投薬費が全額自己負担になることはありません。前述同様、3割負担で治療や投薬を受けられます。
ちなみに、健康保険が有効な場合は一定の窓口負担です。全額自己負担の場合は一定の窓口負担に比べると、およそ3.3倍の治療費になります。
投薬履歴の確認の留意点
マイナ保険証のメリットとして、過去の投薬履歴を自身のマイナポータルで確認できる点が挙げられます。しかし、そもそも健康保険の対象になっていない市販薬などは、マイナ保険証とは無関係ですから、マイナポータルでの確認ができません。
また、マイナ保険証の対象になっている調剤薬も留意するべき点があります。マイナポータルで確認ができるのは、直近1ヶ月~5年間に限られます。つまり、直近1ヶ月の間に複数の医療機関や調剤薬局を渡り歩いているような場合、その1ヶ月間の投薬履歴を確認できません。
なお、これらのことはマイナポータルに限らず、治療を受ける医療機関や処方箋を出す調剤薬局でも同じことがいえます。ただし、電子処方箋対応の医療機関や調剤薬局では、即時の確認が可能となっています。
投薬履歴の確認の有無に関わらず、投薬費の金額は同じです。
まとめ
前述のとおり、マイナ保険証が実質的に強制されている今日にあっては、選択の余地はありません。マイナ保険証が役に立つのは「病気をした」「ケガをした」など、不測かつ突発的な事態であり、あってはならない困った時です。
その困った時に一筋の望みを託すのが健康保険の制度なのですが、その健康保険の制度を利用するにあたって、これらの留意点も知っておきましょう。
出典
厚生労働省 マイナンバーカードの健康保険証利用対応の医療機関・薬局等についてのお知らせ
厚生労働省 よくある質問~マイナ保険証について~令和6年7月版
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役