更新日: 2019.06.13 その他暮らし

傷病や都道府県によって入院日数は変わるって本当!?

傷病や都道府県によって入院日数は変わるって本当!?
病気やケガで入院した時の日数が徐々に短くなっています。2019年3月に公表された厚生労働省平成29年患者調査では、入院日数の平均がついに1ヶ月を切り29.3日となりました。しかし、この日数は平均であり、実際は性別や年齢、地域、入院の原因となった傷病等によって大きく異なります。
 
そこで今回は、地域と傷病に着目し、主な傷病ごとに都道府県別の入院日数を確認してみました。
 
松浦建二

執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)

CFP(R)認定者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
http://www.ifp.cc/

がんによる入院の日数は地域差が小さい

厚生労働省の患者調査では、入院した時の平均日数(平均在院日数)に関する調査を詳細に行っています。最新の平成29年患者調査から、「悪性新生物(がん)」や「脳血管疾患」等について都道府県ごとに平均在院日数が長い都道府県と短い都道府県を表にまとめてみました。
 
悪性新生物から順に見ていきましょう。
 

 
患者調査によると、悪性新生物による平均在院日数の総数(全国平均)は17.1日となっています。都道府県別で最も長いのは青森県の24.1日で、総数より丁度1週間長くなっています。次に長いのは京都府と徳島県で共に21.6日となっています。
 
平均在院日数が最も短いのは香川県の14.3日で、次が神奈川県と宮城県の14.6日となっています。悪性新生物の場合、青森県を除く46都道府県は1週間程度しか差がないことから、地域による日数の差は比較的小さいと言えます。
 
糖尿病による平均在院日数の総数(全国平均)は33.3日で、悪性新生物の2倍弱となっています。都道府県別で最も長いのは福井県の86.0日で総数より52.7日も長く、次に長いのは僅差で鹿児島県(85.4)、その次が高知県(66.5日)となっています。
 
平均在院日数が最も短いのは山梨県の15.8日で、次が鳥取県(16.5日)、その次が島根県(17.4日)となっています。福井県と山梨県では平均在院日数に70.2日もの差があり、糖尿病の場合は地域による差が非常に大きいと言えます。
 

統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害は一部で入院日数が千日超え

次は精神及び行動の障害である、「統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害」と「気分[感情]障害(躁うつ病を含む)」の平均在院日数です。
 

資料:厚生労働省「平成29年患者調査」
 
統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害による平均在院日数の総数(全国平均)は531.8日で非常に長くなっています。さらに都道府県別に見ていくと、大分県では平均在院日数が1518.2日にもなっています。総数の3倍近く、4年を超えての入院は想像できないくらいの長さで、治療費の見当がつきません。
 
福島県(1408.3日)や佐賀県(1111.5日)も1000日を超えています。
 
一方で最も短い宮城県は172.2日で総数の3分の1程度しかなく、大分県とは1345.9日も差があります。地域によってこれほどまでに差が大きいと、もし統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害で入院する時は、地域の選択から始めた方が良さそうです。
 
気分[感情]障害(躁うつ病を含む)は、平均在院日数が113.9日で比較的長い方ですが、統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害の後に数字を見ると、とても短く感じます。都道府県別で日数が最も長いのは高知県の346.1日で、総数の約3倍になり、次に長い佐賀県(208.0日)やその次に長い島根県(206.0日)と比べると、高知県がかなり突出しています。
 
平均在院日数が最も短いのは沖縄県の43.3日で、総数より70.6日も短く、高知県より302.8日も短くなっています。次に短い岐阜県が60日を超えていることから、沖縄県の短さが際立っています。
 

高血圧性疾患は沖縄県の入院日数が埼玉県の23倍

次は高血圧性疾患と心疾患(高血圧性のものを除く)の平均在院日数です。
 

資料:厚生労働省「平成29年患者調査」
 
高血圧性疾患による平均在院日数の総数(全国平均)は33.7日ですが、都道府県別に見ると物凄い差があります。平均在院日数が最も長いのは沖縄県の240.6日で、総数より206.9日も長くなっています。次に長いのが島根県(171.8日)、その次が岩手県(108.4日)で、ともに100日を超えています。
 
最も短いのは埼玉県で10.3日しかありません。総数より23.4日も短く、沖縄県と比べたら僅か23分の1です。同じ病気で入院したとは思えない差があります。次に短いのが岐阜県と愛媛県の13.2日で、総数より20.5日短いです。高血圧性疾患は東京都が17.4日、大阪府が43.3日等、都道府県による差が非常に大きいのが特徴と言えます。
 
心疾患(高血圧性のものを除く)の平均在院日数は19.3日で、悪性新生物と同様に比較的短くなっています。都道府県別に見ていくと、高知県が41.5日で最も長く、香川県が11.6日で最も短くなっています。この2県で29.9日の差がありますが、高血圧性疾患に比べたら差はかなり小さく感じてしまいます。
 

脳血管疾患による入院は長崎県が最も長い

次は脳血管疾患と肺炎の平均在院日数です。
 

資料:厚生労働省「平成29年患者調査」
 
脳血管疾患による入院の平均在院日数の総数は78.2日で、今回取り上げた中では3番目に日数が長い傷病です。都道府県別で最も日数が長いのは長崎県の124.3日で、総数より46.1日も長くなっています。次に長いのは佐賀県(123.8日)、その次が山口県(108.9日)で、何れも100日を超えています。
 
平均在院日数が最も短いのは岐阜県の36.5日で、総数の半分弱、長崎県の3割程度となっています。次に短いのが奈良県(50.6日)、その次が宮城県(56.7日)なので、岐阜県の短さが際立っています。
 
肺炎による入院の平均在院日数は27.3日で、全傷病の平均程度となっています。都道府県別で最も長いのは山口県の45.7日で、次が長崎県(42.4日)、その次が茨城県(40.1日)となっています。
 
平均在院日数が最も短いのは沖縄県の15.5日で、次が山梨県(17.2日)、その次が島根県(17.8日)となっています。長崎県・佐賀県・山口県は両方の傷病で長い方に入っており、山梨県と宮城県は両方で短い方に入っています。脳と肺ですが何か関連性があるのでしょうか。
 

骨折による入院は2ヶ月で鳥取県が最も長い

最後に肝疾患と骨折の平均在院日数です。
 

資料:厚生労働省「平成29年患者調査」
 
肝疾患による平均在院日数の総数(全国平均)は22.9日で全傷病の平均程度となっています。都道府県別で最も長いのは秋田県の59.7日で、次が山梨県(45.2日)、その次が熊本県(35.8日)で、この3県でも差があります。
 
平均在院日数が最も短いのは宮城県の12.6日で、次に短いのが群馬県と奈良県の14.1日となっています。秋田県と宮城県は同じ東北地方の県ですが、47.1日も差があります。
 
骨折による平均在院日数の総数は37.2日で、悪性新生物の2倍程度となっています。都道府県別で最も長いのは鳥取県の60.6日で、次が香川県(52.2日)、その次が山口県(50.9日)、最も短いのは岐阜県(29.5日)、次が北海道と愛知県(30.3日)となっています。骨折でも都道府県によって1ヶ月も差があります。
 
今回10の傷病ごとの平均在院日数を確認しましたが、どの傷病でも都道府県による差が意外と大きく、傷病ごとに平均在院日数が長い都道府県は異なることもわかりました。
 
なぜこれほどまでに違いがあるかは定かではありませんが、患者にとっては、同じ結果になるとしたら日数は短いに越したことはありません。同じ結果にならないとしたら入院日数の長短に関係なく良い結果を期待します。
 
もし病気やケガで入院した時は、納得して治療を受けられるよう都道府県や傷病ごとの特徴を理解しておき、その時に備えて安心できるほどの貯金や保険を確保しておきましょう。
 
執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
 

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