更新日: 2021.04.05 キャッシュレス

消費税増税の今、事業主が考えるべき・するべきこと

消費税増税の今、事業主が考えるべき・するべきこと
消費税が10%となりました。この増税に伴い、スモールビジネスの事業主は何をすべきか、今後どのようにすれば良いかを考えていきたいと思います。
 

黒澤佳子

執筆者:黒澤佳子(くろさわよしこ)

CFP(R)認定者、中小企業診断士

アットハーモニーマネジメントオフィス代表
栃木県出身。横浜国立大学卒業後、銀行、IT企業、監査法人を経て独立。個別相談、セミナー講師、本やコラムの執筆等を行う。
自身の子育て経験を踏まえて、明日の子どもたちが希望を持って暮らせる社会の実現を願い、金融経済教育に取り組んでいる。
また女性の起業,事業承継を中心に経営サポートを行い、大学では経営学や消費生活論の講義を担当している。

https://www.atharmony-office.jp/

増税時の切り替えは意外に簡単だった?!

まずは、中小企業・小規模事業者向けに、軽減税率に対応するレジの導入等の補助金制度があります。通常の補助金と違い、レジの設置・支払い後の事後申請で、12月16日が申請期限です。
 
軽減税率が関係ない業種では、レジの税率変更対応のみで済み、メーカー側から切り替え作業手順が配布されたりして、事業主が自分で対応できる仕様になっているものも多かったようです。
 
店舗にかかせない電卓もそうです。これは、消費税導入時や3%から5%への増税時など過去の教訓が生かされており、ユーザー側で税率の設定ができる仕様になった製品が多くなっています。
 
しかし、すでに商品への値付けを旧消費税率でしてしまっている場合は、要注意です。「1万800円(税込)」を「1万1000円(税込)」と変更しなければなりません。これは、消費者に対して、商品の販売、役務の提供などを行う場合は、店頭における表示、チラシなどの広告媒体を問わず、総額表示が義務付けられているからです。
 
ただし、総額表示が義務付けられるのは、あらかじめ取引価格を表示している場合であり、価格表示がされていない場合にまで価格表示を強制するものではありません。
 
また、2019年10月1日増税時にすべての値付けが変更されていないとダメというわけではありませんが、令和3年3月31日までに対応を完了させる必要があります(国税庁タックスアンサー「No.6902「総額表示」の義務付け」より)。
 

増税に伴う駆け込み需要の反動は? 資金繰りへの影響が怖い

増税前は、「消費税が上がる前に買っておこう!」という駆け込み需要が見込まれていました。
 
しかし、前回の増税から5年ほどでの増税だったので、以前駆け込み需要があった高価な製品は、まだ買い替え時期が来ていないことが多かったこと、また、ポイント還元や増税後のセールなどが実施されたこともあり、急いで増税前に買わなくても・・・といった風潮があって、前回の増税時ほどの駆け込み需要はなかったように思います。
 
では、増税後はというと、軽減税率が適用される8%の製品・サービスは生活必需品(ニーズ)であり、今後も需要に大きな変動はないでしょう。10%の製品・サービスはおおむね贅沢品・奢侈品であり、増税の心理的負担により、人によっては買い控えが起こっているようです。
 
したがって、増税前にさほど大きなプラスの波が来なかったことを考えると、今後、増税後のマイナスの波のほうが大きくなっていく可能性があり、今年度の売上高が減少するかもしれません。
 
しかし、消費税は課税売上高に対して課税か免税かが判断されるので、たとえ赤字でも一定の売上高があれば、消費税は課税されます。消費税の納付時になって、手元現金が不足するといったことがよく見られますので、資金繰りには注意が必要です。
 

キャッシュレス決済は救世主となるか?!

今回の増税の目玉となる政府のキャンペーンに、キャッシュレス決済を利用した消費税ポイント還元制度があります。飲食店を含む小売・サービス等の個別店舗は5%、フランチャイズは2%が消費者に還元されます。消費者にとって、増税の痛手をできる限り軽減するには、このポイント還元が魅力的です。
 
しかし、事業者にとっては、キャッシュレス決済を導入していなければ、今後集客に苦戦する可能性がでてきます。現在さまざまなキャッシュレス決済の手段があり、それぞれ手数料やポイント還元率、付随機能が異なります。決済時に読み取り機器などが必要かどうかで、導入時の初期費用も変わってきます。
 
現在は各社初期費用ゼロなどのキャンペーンを行っていますので、これを機に負担少なく導入できると良いのですが、キャンペーン終了後のことをよく考えて選ぶようにしてください。
 

軽減税率が悩ましい! そのためにかかる労力とコストは事業者が負担?!

主に「お酒や外食を除く飲食料品の売却・購入」に適用される軽減税率ですが、連日報道されているように、テイクアウトや食品と物品が一体となった商品の扱いなどについて、対応が複雑になるのは否めません。その対応にかかる負担は、コストを含めて事業者側が負う形です。
 
消費者にとっては、できるだけ低価格で購入したいので、軽減税率導入は政府が消費税増税のバーターとして機能させたかったのかもしれません。しかし、そのために事業者側にかかる労力とコストは、計り知れないものがあるのではないか? という疑念も生まれます。
 
さらに、仕入税額控除を適用する際に、適格請求書などの書類保存が義務付けられるインボイス制度も導入されます。諸外国と比較すると、10%で収まると思えない日本の消費税。今後さらなる増税も視野に入れて、この過渡期を無事に乗り越えたいものです。
 
執筆者:黒澤佳子
CFP(R)認定者、中小企業診断士


 

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