更新日: 2020.05.25 子育て
収入減で私立高校の教育費負担増。対処方法は「老後資金の取り崩し」or「奨学金の利用」どっちが良い?
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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教育資金と老後資金はトレードオフの関係
文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」によると、高等学校(全日制)の学習費総額(学校教育費および学校外活動費)は、年額、公立では45万7380円ですが、私立では96万9911円となっています。3年間では、公立で137万2072円、私立では290万4230円です。
給料等が減少した場合、特に私立高校では教育費の負担が重くのしかかります。収入減に対する対応策としては、老後資金のために準備している個人年金保険や財形貯蓄を解約することが考えられますがお勧めしません。
教育資金と老後資金はトレードオフの関係にあり、教育資金にお金をかけすぎると老後資金に影響が出てしまうからです。したがって、教育資金の不足分を「老後資金の取り崩し」で補うのは避けたいところです。
私立高校の教育費支援策
授業料の支援策としては高等学校等就学支援金があります。2020年4月から年収約590万円未満世帯(両親・高校生・中学生の4人家族)は、最大39万6000円(返済不要の授業料支援)が受けられます。590万円~910万円未満世帯では公立高校と同じ11万8800円の授業料支援が受けられます。
私立高等学校の授業料支援策には国の高等学校等就学支援金の他、自治体独自の授業料軽減措置がありますので調べてみると良いでしょう。
例えば、東京都の場合、910万円未満の世帯まで最大46万1000円(就学支援金と授業料軽減助成金の支給総額)の助成が受けられます。また、所得要件を超過した多子世帯に対しては5万9400円の助成が受けられます。
なお、保護者の失職、倒産などの家計急変により収入が激減し、低所得となった世帯に対し、収入の変動が就学支援金の支給額に反映されるまでの間、就学支援金と同等の支援を行う制度もあります。
教科書費・教材費など、授業料以外の教育費支援の仕組みには、高校生等奨学給付金があります。こちらは所得制限が厳しく、約270万円未満の世帯が利用できます。支給額は約3万円~14万円です。
高校の奨学金をご存じですか?
高校の奨学金はすべて無利子です。この点、大学等の奨学金とは違います。例えば、東京都育英資金では、国公立高校に通う場合、月額1万8000円、私立高校に通う場合は月額3万5000円の無利子奨学金を借りることができます。
私立高校に通う場合、世帯年収(所得)の目安は給与・年金収入のみの世帯では約1150万円(ただし、1人の収入が840万円以下)とハードルは高くありません。学業成績は問われません。返還期間は11年~15年。大学等に進学した時は、本人からの申し出により返還を猶予(先延ばし)できます。
高校の奨学金は意外と知られていません。お住まいの自治体の奨学金制度を調べてみましょう。
新型コロナウイルス感染症の影響により家計急変された方の入学料等の減免
新型コロナウイルス感染症の影響で、休業、離職、会社の倒産、売上の減少等により収入が著しく減少(家計急変)し、入学料、授業料等の支払いが困難になった方に対して、減免措置などが行われています。
また、高等学校等就学支援金の申請書類の提出の遅れについても柔軟に対応しています。
お金の相談はしづらいかもしれませんが、さまざまな教育費支援制度がありますので、学校や教育委員会、自治体などに相談すると良いでしょう。公的年金が厳しくなっていますので、安易に老後資金を取り崩さずに、教育費の支援制度をうまく活用することをお勧めします。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー