更新日: 2020.10.27 その他暮らし
減らない特殊詐欺、その巧妙な手口とは?被害額はどれくらい?
警察庁の調べによると、令和元年の被害総額は315億8000万円に上り、依然高い水準にあります。近年ではその手口も巧妙化や凶悪化しています。さまざまな彼らの手口を知り、いざという時に詐欺だとすぐに気づく態勢を整えておく必要があります。
執筆者:岩永真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/
特殊詐欺の現状(令和元年)
警察庁の広報資料(令和元年)によると、特殊詐欺の被害は大都市圏に集中しており、認知件数全体に占める割合は5都府県が67.0%になります。
その内訳は、東京(3815件) 22.6%を筆頭に、神奈川(2793件)、大阪(1809件)、埼玉(1459件)、千葉(1409件)と続きます。1日当たりの被害額は、約8650万円にもなります。1件当たりの被害額は、196万7000円です。被害者になってしまうと、200万円近くがだまし取られてしまうのが現状です。
特殊詐欺10種類とその手口は?
令和2年1月1日から、警察庁では特殊詐欺の手口を下記10種類に分類しています。令和元年の被害件数の多い順に紹介します。
1.オレオレ詐欺(6725件・39.9%、被害額117億6000万円)
親族等を名乗る。
「大変な借金を作ってしまった」「交通事故を起こして示談金がすぐに必要」
などと言って、現金をだまし取る。
2.架空請求詐欺(3533件・21.0%、被害額98億6000万円)
「有料サイトの未払いの料金があります。すぐに払わなければ裁判になります」
などとメールやハガキ(封書)で知らせ、金銭等をだまし取る。
3.キャッシュカード詐欺盗(窃盗)(3777件・22.4%、被害額59億1000万円)
警察官、銀行協会や大手百貨店等の職員を名乗る。
「キャッシュカードが不正に利用されている」
などと言って自宅を訪問し、すきを見てキャッシュカード等を受け取りすり替えて盗み取る。
キャッシュカード詐欺盗は近年出てきた手口で、前年比ではプラス2429件、金額はプラス40億2000万円で要注意です。銀行のキャッシュカードだけでなく、クレジットカードも含まれます。
4.還付金等詐欺(2375件・14.1%、被害額30億1000万円)
市区町村役場や税務署の職員等を名乗る。
「医療費、税金、保険料等の還付金があるので手続きしてください」
などと言って、被害者をATMに誘導して操作させ、被害者の口座から犯人の口座に送金させる。
5.融資保証金詐欺
実際は融資しませんが、簡単に融資が受けられると信じ込ませて、融資を申し込んだ人に「保証金が必要です」などと言って金銭等をだまし取る。
6.預貯金詐欺
警察官、銀行協会職員等を名乗る。
「あなたの口座が犯罪に利用されています。キャッシュカードの交換手続きが必要です」
と市区町村役場の職員等を名乗る。
「医療費などの過払い金があります。手続きにはカードが必要です」
などと言って、暗証番号を聞き出しキャッシュカード等をだまし取る。
7.金融商品詐欺
価値がまったくない未公開株や高価な物品等についてうその情報を伝えて、購入すればもうかると信じ込ませ、その購入代金として金銭等をだまし取る。
8.ギャンブル詐欺
「パチンコ打ち子募集」等と雑誌に掲載、あるいはメールを送りつけ、会員登録等を申し込んだ人に、登録料や情報料を支払わせて金銭等をだまし取る。
9.交際あっせん詐欺
「女性紹介」等と雑誌に掲載、あるいはメールを送りつけ、女性の紹介を申し込んだ人に、会員登録料金や保証金が必要と言って金銭等をだまし取る。
10.その他
上記パターンに該当しない特殊詐欺。
時節柄、国勢調査と偽って、家族構成を聞かれる場合もありますので「書面で回答した(する)」と言って電話での回答は控えると無難です。
被害者の特徴は?
前述警視庁の広報資料によると、高齢者(65歳以上)の被害件数は1万4100件で、特殊詐欺全体件数に占める割合(高齢者率)は83.7%と高くなっています。中でも65歳以上の高齢女性の被害件数は全体の65.3%、オレオレ詐欺では84.4%を占めています。
女性のほうが長生きなので、ひとり暮らしの高齢女性が多いことも関係があるかもしれません。
しかし、同時に詐欺グループは、高齢者の女性をターゲットにしやすい可能性もありますので、注意が必要です。
まとめ
特殊詐欺も年々変化しているため、絶えず現在の傾向を把握して、その手口(前例)を知っておくことで、このような立場に置かれた際には、すぐに特殊詐欺だと気づくことができるでしょう。高齢者の家族がいる場合には、こうした特殊詐欺の10種類の手口を、ぜひ伝えてあげてください。
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士