ひとり親家庭の障害年金と児童扶養手当の調整が見直しに。どう変わるの?
配信日: 2020.11.13
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
児童扶養手当と障害基礎年金
児童扶養手当は、(1)18歳到達年度の末日までにある児童、あるいは(2)20歳未満で一定の障害のある児童、を養育している場合に支給される福祉的な手当です。
こういった児童を監護している母、監護し生計を同じくする父、または養育(子と同居し、監護し、生計を維持していること)している父母以外の養育者が、児童扶養手当を受給することになります。実際に支給される児童扶養手当の額は、【図表1】のとおり、子の数や所得によって変わることになっています。
一方、障害基礎年金は病気やケガにより、障害が残った場合に支給される国民年金制度の年金で、障害等級(1級・2級)に応じて支給されることになっています。2020年度の年金額は、2級は年間78万1700円、1級は年間97万7125円です【図表1】。
そして、障害基礎年金を受給する人に生計を維持する子(18歳到達年度の末日までにある子、または20歳未満で一定の障害のある子)がいれば、子の数に応じて加算がされることになっています。子が2人目までは1人あたり年間22万4900円が加算され、3人目以降は1人あたり年間7万5000円が加算されます【図表1】。
ひとり親家庭の児童扶養手当
しかし現行制度上、ひとり親の家庭では、児童扶養手当の対象となる児童がいたとしても、親(父または母)が障害基礎年金を受給し、その年金額が児童扶養手当の額を上回る場合は、児童扶養手当は支給されないことになっています。
例えば、加算対象の子が1人いて、2級の障害基礎年金を受けると、年金額の合計は年額で100万6600円(78万1700円+22万4900円)、月額換算で8万3883円(100万6600円÷12)ですが、この額が児童扶養手当の月額4万3160円(児童1人で全部支給の場合)より多くなり、結果、児童扶養手当は受給できません。
子の加算との差額分を受給できるよう改正
親に障害があり就労も難しい中、このままでは、ひとり親家庭は経済的にも厳しくもなります。
そのため、ひとり親家庭についての支給停止制度は改正により2021年3月分から見直され、児童扶養手当が一部受給できます。
現行制度上は、「障害基礎年金+子の加算」を合算した額と児童扶養手当の額を元に児童扶養手当が調整されていましたが、改正後は、子の加算部分のみの年金額と児童扶養手当の額を元に調整されることになり、子の加算額と児童扶養手当の額との差額分が児童扶養手当として支給されることになります【図表2】。
その結果、障害基礎年金と子の加算部分、差額支給となる児童扶養手当を併せて受給することになります。
先ほどの例のように、子1人であれば、子の加算の月額1万8741円(22万4900円÷12)と比較して、児童扶養手当4万3160円のほうが多い額ですが、4万3160円から1万8741円を差し引き、2万4420円(10円未満を四捨五入して計算)が児童扶養手当として支給されます。
該当する人は多くないかもしれませんが、今回の改正はひとり親家庭の支援のための改正といえます。児童扶養手当の受給手続きの詳細については、お住まいの市区町村にご確認ください。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー