更新日: 2020.12.01 その他暮らし
もし「うつ病」になったら、休業手当はいくらもらえる?
近年、うつ病など気分障害の患者数は増加しており、100万人を超えていると報告されています。うつ病で休業することになった場合の関心事は、その間の収入ではないでしょうか。今回は、うつ病で会社を休んだときの休業手当について解説してみたいと思います。
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー
立命館大学卒業後、13年間大手小売業の販売業務に従事した後、保険会社に転職。1 年間保険会社に勤務後、保険代理店に6 年間勤務。
その後、コンサルティング料だけで活動している独立系ファイナンシャルプランナーと出会い「本当の意味で顧客本位の仕事ができ、大きな価値が提供できる仕事はこれだ」と思い、独立する。
現在は、日本FP協会佐賀支部の副支部長として、消費者向けのイベントや個別相談などで活動している。また、佐賀県金融広報アドバイザーとして消費者トラブルや金融教育など啓発活動にも従事している。
うつ病で休業すると給料はもらえるの?
会社によって休業中の給料の支払いは異なりますが、法律上、会社側に給料の支払い義務はありません。よって、ほとんどの会社で給料の支払いはないでしょう。ただ、休業中の給料の扱いは会社が任意で定めていますので、まずは勤務先の就業規則を確認することが肝要です。
では、ほとんどの会社員の方が、休業中は無給になってしまうのでしょうか?このときに強い味方になってくれるのが健康保険です。健康保険に加入している会社員の方は休業中、「傷病手当金」を受け取ることができます。
「傷病手当金」の支給要件とは?
傷病手当金は、通勤中・仕事中以外で病気・ケガをしたときにもらえる手当です。傷病手当金の支給要件は、以下の4つを全て満たすことです。
(1)病気・ケガのために療養中であること
(2)療養中のために仕事に就けないこと
(3)原則として給料をもらえないこと
(4)続けて4日以上休んでいること
なお、休業した日から連続した3日間は待機期間となり、4日目から支給対象となります。
傷病手当金はいくらもらえるの?
それでは、肝心の傷病手当金はいくらもらえるのでしょうか。
休業1日につき、支給開始日以前の継続した12ヶ月間の「標準報酬月額」の平均値を30で割った額の3分の2相当額です(標準報酬月額は、ねんきん定期便で確認することができます)。
例えば、標準報酬月額の平均値が30万円で、81日間休業した場合、傷病手当金は以下のとおりです。
(30万円÷30)×3分の2≒6700円(休業1日分の支給額)
6700円×(81日-3日待機期間)=52万2600円(休業中に支給される額)
なお、支給開始日以前の期間が12ヶ月に満たない場合、例外的に支給開始日までの継続した各月の標準報酬月額の平均値と、全被保険者の標準報酬月額の平均値のいずれか低い方を基に計算されます。
職場復帰を焦らないで
一般的に、うつ病の治療には時間がかかるといわれています。症状が回復したからといって、焦って職場復帰をすると再発する可能性もあります。
傷病手当金は支給要件を満たす限り、最長1年6ヶ月間もらい続けることができます。ただし、1年6ヶ月の間に職場に復帰した期間があり、その後同じ病気で休業した場合は、その復帰期間も1年6ヶ月に算入されます。よって、支給開始後1年6ヶ月を超えた場合は、仕事に就けない場合でも傷病手当金の支給は打ち切りとなります。
まとめ
今回、うつ病で会社を休んだ場合の休業手当について解説してきました。万が一に備えて、ぜひ以下の点を事前に確認しておきましょう。
・ うつ病など、病気で会社を休んだ場合の会社の就業規定を確認しておくこと
・ 健康保険に加入している会社員の方は傷病手当金が支給されること
・ ねんきん定期便を利用して自分の標準報酬月額を確認し、計算してみること
・ 傷病手当金は最長1年6ヶ月間受け取れること
・ 支給開始日から1年6ヶ月の間に職場復帰し、その後同じ病気で休業した場合、復帰期間も1年6ヶ月に算入されること
健康保険に加入している会社員の方は、休業中も傷病手当金が家計を支えてくれることは間違いないでしょう。休業手当の制度趣旨をよく理解しておくことが大切です。
出典・参考
厚生労働省 精神疾患のデータ
全国健康保険協会 傷病手当金について
執筆者:廣重啓二郎
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー