更新日: 2020.12.09 子育て
令和2年度から拡充されたひとり親家庭のための貸付制度「母子父子寡婦福祉資金」とは?
ひとり親家庭が利用できる福祉資金貸付金に、母子父子寡婦福祉資金があります。令和2年4月1日より、この福祉資金の中の大学等の修学資金等が拡充されましたのでご案内します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
母子父子寡婦福祉資金とは?
母子父子寡婦福祉資金は、母子父子家庭や寡婦の方に対し、経済的自立の援助および生活意欲の向上と、扶養している子の福祉を増進させることを目的とした貸付金です。
(1)事業開始資金、(2)事業継続資金、(3)修学資金、(4)技能習得資金、(5)修業資金、(6)就職支度資金、(7)医療介護資金、(8)生活資金、(9)住宅資金、(10)転宅資金、(11)就学支度資金、(12)結婚資金、の12種類があります。このうち、利用件数・金額とも約9割が児童の修学資金関係となっています。
利子は資金の種類、連帯保証人の有無によって異なりますが、無利子または年利1%です。
具体的には、修学資金、修業資金、就職支度資金(児童に関わるものに限る)、就学支度資金に関しては無利子、それ以外の資金は、連帯保証人を立てる場合は無利子、連帯保証人を立てない場合は有利子(1%)の貸付です。
償還は一定の据置期間経過後3~20年で行います。
担当窓口は市区町村(役所)の福祉課などです。
就学支度資金・修学資金の拡充
ひとり親家庭の子どもが大学等に修学しやすい環境を整えるため、大学等に就学する子どもの修学資金の対象経費に、修学期間中の生活費等が加えられました。対象経費の拡充等に伴い貸付限度額も引き上げられました(令和2年4月1日以降適用)。
また、違約金の利率が年5%から年3%に引き下げられました。なお、事業開始資金、事業継続資金の貸付限度額もそれぞれ、293万円( 母子・父子福祉団体に対しては441万円)、147万円に引き上げられました。
■大学等に修学するための修学資金の対象経費の拡充
- ★(1)授業料
- ★(2)授業料以外の学校納付金(施設整備費、実習費等)
- ★(3)修学費(交通費、教科書代、参考図書代、実収材料費等)
- ★(1)授業料
- ★(2)授業料以外の学校納付金(施設整備費、実習費等)
- ★(3)修学費(交通費、教科書代、参考図書代、実収材料費等)
- ★(4)課外活動費(部活動費、サークル活動費、その他正課教育以外の経費等)
- ★(5)自宅外通学においてかかる経費(食費、住居費、光熱水費等)
- ★(6)保健衛生費(診療代、薬代等)
- ★(7)その他学生生活を送る上で必要と認められる経費
■大学、高等専門学校および専修学校専門課程の貸付限度額の拡充
【修学資金】
《改正前》
自宅生8万1000円
自宅外生9万6000円
専修学校一般課程4万8000円
《改正後》
自宅生10万8500円
自宅外生14万6000円
専修学校一般課程4万9500円
*一般課程とは、修業年限2年未の専門課程と一般課程をいいます。
【就学支度資金】
《改正前》
国公立の大学等 38万円
《改正後》
国公立の大学等 42万円
修学支援新制度を受けた場合の償還義務化
令和2年4月1日より、高等教育の修学支援新制度が施行されました。新制度では、住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯の学生を対象に、大学・専門学校等の入学金および授業料の減免や給付型奨学金の支給が行われます。
この減免や支給を受けた場合には、貸付を受けた額のうち、新制度による授業料等の減免額や給付型奨学金の給付額に相当する額について、それぞれの給付を受けた日から6カ月以内に返還をする必要があります。
進路が決まったら早めに相談を
貸付の手続きには、役所の福祉担当窓口に数回行きますし、面接にも時間を要します。申請に必要な書類も少なくありません。また、申し込みから融資まで通常1カ月以上かかります。大学等の入学手続き時納付金の納付期限は合格発表後1~2週間以内という学校も多いので、合格後に申し込んだのでは間に合いません。
就学支度資金(受験料、入学金、制服代など)の借入れを希望する場合は、進路が決まったら早めに相談や手続きをしましょう。
なお、就学支度資金や修学資金は無利子といっても借金です。必要以上に借りることはせず、返済の見通しを考えた上で適正額を借りるように心がけましょう。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。