更新日: 2021.01.29 子育て
大学合格したものの「お金が足りない」どうすれば大学に通える?
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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私立大の初年度納付金は約147万円。国立大の約1.8倍
大学に進学するには、受験料から学費、生活費などさまざまなお金が多額に必要になります。その中でも最もお金がかかるものの1つに学費があります。
国立大学の初年度納付金(入学金・授業料)の標準額は、入学金28万2000円、授業料53万5800円の合計81万7800円(昼間部)となっています。私立大学と異なり、学部によって学費が異なることがないのが特徴です。
なお、国立大学の場合、入学金・授業料は標準額の20%増を上限に各大学が設定することが可能で、最近では、東京工業大や東京芸術大、千葉大、一橋大、東京医科歯科大などが値上げをしています。
公立大学の場合は国立大学に準ずるケースが多く、入学金等が地元出身者に優遇されるのが特徴です。
文部科学省「令和元年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)」によると、私立大学の初年度納付金(入学金・授業料・施設設備費・実験実習料・その他)は全国平均146.7万円となっています。
私立大学は学部で学費が大きく異なり、文科系では約125万7000円、理科系では約167万3000円となっています。
合格時に支払うのは入学金だけではない
大学の学費は、前期(4月頃)、後期(9月頃)というように2回に分けて納付するのが一般的です。ただし、私立大学の場合、初年度納付金の前期分は多くは合格時に支払います。つまり、入学手続き時には入学金だけではなく「入学金+前期分学費」を支払います。私大文科系では80万円程度、理科系では100万円程度が必要になります。
注意すべきは、納付時期が合格発表後1~2週間以内と短期間である点です。大学に合格したとときに、入学手続き納付金として入学金だけ納めればよい、と思い込んでいる保護者は少なくありません。直前になって慌てないように、早めに入学手続き時納付金の金額と納付期限を確認しておくことが大切です。
複数の大学を受験する場合、第2志望校の入学手続きの納付期限が第1志望校の合格発表よりも早いとき、第1志望校に進学するケースでは、進学しなかった第2志望校への納付金も必要になりますので気をつけてください。
一般選抜の場合、入学を辞退するとき、多くは所定の手続きをすることにより、支払った納付金のうち、入学金を除く授業料などは返還されますので手続きを忘れずに行いましょう。
お金に困ったら奨学金の利用を
進学費用が不足した場合には、まず、最も利用されている日本学生支援貴機構の奨学金の利用を考えましょう。貸与型(要返還)と給付型(返還不要)があります。貸与型には、無利子の第一種奨学金と有利子の第二種奨学金があります。有利子といっても利率は超低利です(令和2年3月の利率固定方式は、0.070%、利率見直し方式は0.002%)。
なお、借りるには家計の収入や本人の成績などの条件を満たすことが必要です。
借入可能額は第一種奨学金では、進学先、居住形態などにより、月額6万4000円~2万円、第二種奨学金では、原則2万円~12万円(1万円きざみ)となっています。
給付型は住民税非課税世帯およびそれに準じる世帯が対象で、住民税非課税世帯の学生には満額、それに準じる世帯の学生には、満額の3分の2または3分の1が支給されます。
具体的には、月額7万5800円(私大等自宅外通学の場合)~1万2800円(私大等自宅通学の場合)もらえます。給付型奨学金の条件を満たした方は、大学等の入学金および授業料の減免も受けられます(高等教育の修学支援新制度)。
ただし、新制度が使えるのは、文部科学省の確認申請・審査を受けたに対象機関に進学する場合に限られますので注意が必要です。対象校は大学・短大:全体の98%、専門学校:73.2%(令和2年11月時点)となっています。
なお、貸与型奨学金は学生が借りて、基本的に卒業後に返還していくものですので、リスクを十分理解した上で利用しましょう。
奨学金の欠点
日本学生支援機構の奨学金は入学後に一定額が毎月振り込まれます。入学前には利用できない点が重要です。入学前に必要な進学費用の不足分は教育ローンで賄います。教育ローンには、日本政策金融公庫の「国の教育ローン」と銀行など民間の金融機関が扱うローンがあります。
ここでは、「国の教育ローン」の概要を説明します。民間に比べ有利な点が多いからです。例えば、固定金利は1.68%(執筆時点)で低利ですし、返済期間は15年以内と多くの民間のローンよりは長期です。
ひとり親家庭などには金利などの優遇措置があるのも特徴です。ただし、世帯年収の上限がありますので、共働きのご家庭は利用できないケースもあります。
奨学金は一度にまとまったお金を借りることはできませんが、「国の教育ローン」では学生1人当たり350万円(留学資金等は450万円)まで借りることができます。
また、奨学金は入学後に振り込まれるため、入学手続き時納付金などには充てられませんが、教育ローンであれば対処できます。ただし、申し込みから融資まで最短で20日かかります。融資決定後のキャンセルもできます。受験前に早めに申し込むようにしましょう。
まとめ
大学合格後、保護者から「お金が足りない」と言われないように、学費について、「いくら」「いつ」必要か保護者に早めに伝えておく必要があります。高校3年(卒業年次)の春に、高校で日本学生支援機構の奨学金を予約しているので、お金が足りないときは奨学金を借りればよいと気軽に考えている保護者もいます。
しかし、奨学金は入学前には利用できません。高校3年になったら、進学マネープランを確認し、入学直前の大学資金が足りない場合は、早めに教育ローンなどの利用を検討しましょう。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。