奨学金の返還に困ったときの2つの救済制度とは?
配信日: 2021.02.14
ただし、経済的理由、病気、災害などによって返還が厳しい状況になることや、昨今では新型コロナウイルス感染症の影響を受けて収入が大幅に減少してしまい、返還が重荷となってしまうケースもあるのではないでしょうか。
ここでは、多くの学生が利用する独立行政法人日本学生支援機構(以下、JASSO)の奨学金制度を中心に、返還が困難となった場合の救済制度について確認したいと思います。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
奨学金の受給割合
JASSOの「平成30年度学生生活調査」によると、JASSOの奨学金に限らず何かしらの奨学金を受給している学生の割合は、大学(昼間部)で47.5%、短期大学(昼間部)で55.2%、大学院修士課程で48.0%、大学院博士課程で53.5%となっています。つまり、おおむね半数の学生が奨学金制度を利用していることになります。
そして、奨学金の返還は、貸与が終了した月の翌月から起算して7ヶ月目から始まります。返還は長期にわたりますので、その間に経済状況の変化や失業、病気や災害など、当初には想定もしていなかった事態が起こり得ます。現在では、新型コロナウイルス感染症の影響で雇い止めや休業、あるいは内定取り消しなど、さまざまな事態が生じています。
奨学金の返還を延滞すると
JASSOに何の相談や願い出のないまま延滞を続けると、ブラックリスト(個人信用情報機関)に登録される場合もあり、将来にわたって影響を受けることがあります。また、一定の延滞金が発生することもあります。
そのため、実際に延滞となる前に、返済困難が予想される段階で早めにJASSOに相談することが最も重要です。JASSOには、あらかじめ以下の2つの救済制度があります。
減額返還制度
減額返還制度は、当初の月々の返還金額を最長で15年間(180ヶ月)、2分の1あるいは3分の1に減額できる制度です。制度利用のための収入などの基準額は、給与所得者で収入325万円以下、給与所得以外の所得を含む場合は所得225万円以下となります。
当初の返還月額の半分以下と大幅に減額するため、減額返還適用期間に応じて返還期間は延長されることになりますが、毎月の負担が大幅に軽減されるため、無理なく返還を続けることができます。
また、減額返還制度は1回の申請が最長12ヶ月のため、制度利用を継続する場合には毎年申請手続きが必要となります。その他、所得連動返還方式を利用している方や延滞している方は利用できません。
返還期限猶予制度
返還期限猶予制度は通算で10年間(120ヶ月)、奨学金の返還が猶予される制度です。当然ながら、返還猶予期間中には返還する必要はありませんが、実際の元金や利子が免除されるわけではありません。
経済困難による制度利用のための収入基準は、給与所得者で収入300万円以下、給与所得以外の所得を含む場合は所得200万円以下となります(傷病が理由の収入基準は、給与所得者で収入200万円以下、給与所得以外の所得を含む場合は所得130万円以下)。
また、前述の減額返還制度を利用している場合でも返還期限の猶予制度を利用できます。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響により猶予を受ける場合、既に10年間にわたる猶予を受けている場合でも、12ヶ月間は緊急的に猶予を受けることができます。
まとめ
どのような厳しい状況であれ、借りたお金は返還する義務があります。それが社会人としての責任です。それを怠ると将来的に自分自身がデメリットを受けることになります。
ただし、今回ご紹介したとおり、JASSOにはさまざまな救済策が用意されています。最も重要なのは、自分1人で悩まず、また決して放置することなく、早めに相談することです。各制度の詳細については、JASSOのホームページでご確認ください。
出典 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO) 返還が難しいとき
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー