自宅の改修は早めに着手を。先送りするとリスクが増大?
配信日: 2021.02.18
しかし住宅の改修を怠ると、後で改修するには、さらに多額の費用が発生します。
改修コストは人手不足で上昇が続く
戸建てでもマンションでも、改修にかかるコストは、値上がり傾向が続いています。その最大の理由は、改修を行う業者の人手不足です。自宅の売却を目的としたリフォームやリノベーションのニーズが高まる一方で、これらの改修を行う業者の人手不足は深刻で、小規模な修繕ほど、十分に人の手当てができない状態が続いています。
業者が見つからないため改修を放置すると、売却ができないどころか、自分たちが住み続けることも難しいほど劣化が進み、「負動産」化してしまう危険があります。戸建て住宅に住む高齢者の場合、修繕経費を積み立てておく習慣がないため、工事の見積額があまりに高いと、どうしても躊躇してしまいます。そのまま放置し続けると、問題の解決を遅らせるだけで、逆に改修費も高くなります。
マンション住まいの場合は修繕積立金の仕組みがあり、大規模改修の際にこの積立金を利用することになっています。しかし依頼した業者の見積額が高く、思ったとおりの改修をするには予算不足の事態も起こります。管理組合としても、毎月の修繕積立額を増やす必要に迫られています。収入が限られている高齢者には、修繕積立費の値上げは痛手です。
住宅の劣化で改修コストが増大
住まいの劣化が進むことで、さまざまな問題が起こります。最大の問題は、放置すれば放置するほど、改修に多額の費用が発生することです。
例えば屋根の劣化は、住んでいる人には結構わかりにくいと思います。雨漏りでも発生する事態になれば、損傷に気が付くと思いますが、その時点での修繕では遅いかもしれません。屋根を支える梁の損傷、塗装の劣化などを定期的に点検し、その都度修繕をしておくことが大切です。
最近では、大型台風や集中豪雨の被害が日本全国どこでも起こっており、こうした事態に直面したときに、日ごろの修繕を怠っていると屋根の強度が弱いために、近隣の住宅に比べて大きな被害を受け、非常に多額の修繕費がかかってしまいます。
もう1つの問題点は、売却を考えた際に、住宅の価値が大きく下落することです。現在の家に生涯住み続けると考えている人ならまだしも、いずれは売却して別の住まいへの転居を考えるならば、小まめな修繕は不可欠です。内装、外壁など定期的な点検をすることにより、住宅の価値を維持したいものです。マンションの場合も、手入れを怠っていると、売却時のリノベーションに多額のコストがかかってしまいます。
少子高齢化が進行する現在では、実際に自宅の売却を考えたとしても、すぐに買い手が見つからないことや、希望の価格では売却できない事態は十分に考えられます。特にコロナ禍の現在では、不動産市場も大きく冷え込みつつあり注意が必要です。
早めの修繕と適切な業者選び
住宅の価値を維持するためには、小まめな修繕が必要なことは間違いありません。特に、水回り、内装、外壁、屋根など、個別に修繕の時期を織り込み大事にいたる前に準備します。例えば、何年ごとにどの場所を修理するかを決めておくと安心です。
業者の選定も大切です。人手不足が進む中で、技術力の高い有能な職人さんも減少傾向にあり、業者選びは非常に大切です。常に懇意にして信頼関係のある業者があればいいのですが、高齢を理由に廃業してしまうケースも最近は増えています。
いくつかの業者から見積もりを取ることは大前提ですが、金額に目を奪われるのではなく、口コミやネット上の書き込みなど可能な限り情報を集め、業者のレベルを見極める努力が大切です。
また自然災害が発生すると、近隣地域で多くの住宅から改修依頼が入り、業者が見つからないという事態に直面します。業者を選ぶ余裕もなく、どこでもいいから、とにかく「早く来てほしい」という事態になります。このようなときに業者を選別することは、かなり難しいかもしれません。とりあえず受けてくれる業者に応急措置だけでも頼み、後で本格的修繕に取り掛かるようにしましょう。
心構えとしては、屋根や外壁などの点検を定期的に行い、欠損箇所の修繕を済ませ、多少の風雨には耐えられる強度にしておくことです。
バリアフリー化が不可欠な高齢者の住まい
現在の自宅に長く住むためには、バリアフリー化は不可欠です。50歳を過ぎた頃から検討してもよいかもしれません。具体的には、台所や浴室といった水回りの改良、冷暖房設備の新設・変更、廊下や階段などへの手すりの設置、室内段差の解消など、住宅全体におよび、かなりの改修が必要です。
特に築年数が高い住宅ほど、バリアフリー化への対応ができていないケースも多く、各所の点検を丁寧に行い、工事を確実に進める必要があります。将来、自分自身が高齢となり体力が落ち、要介護状態になった時点までも想定しましょう。
バリアフリー化などの本格的なリフォームとなると、経費も多額になります。規模にもよりますが、少なくとも100万円、多ければ300万円を超える金額になります。希望どおりに進めると、全額現金で支払うことが難しいケースも出てくるかもしれません。
そのため行政からの支援策もあります。国の支援としては、改修後の住宅が一定限度の性能を保持していれば、工事費用の一部を補助する(金額の上限あり)仕組みや、リフォームを対象とした所得減税、さらにローンを組んだ際のローン減税などがあります。
また地方自治体単位でも、特に耐震対策や省エネ対策を実施したリフォームに対しては、補助金を出している自治体もあります。自宅のバリアフリー化の規模を検討しながら、利用可能な公的支援策は積極的に活用しましょう。
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。