子どものためには、奨学金よりも教育ローンを借りたほうがいいですか?

配信日: 2018.06.23 更新日: 2019.08.29

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子どものためには、奨学金よりも教育ローンを借りたほうがいいですか?
高校生や保護者を対象とした「進学マネー相談会」では、奨学金についてよく質問を受けます。
 
今までの14年間で受けた奨学金についての質問の中で特に多いのが、奨学金が子どもの借金であることから、教育ローンを借りたほうが良いですか、というものです。
 
どのように考えたらよいのか解説します。
 
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

奨学金と教育ローンの違い

返済義務のある貸与型奨学金はさまざまな種類がありますが、ここでは最も利用されている日本学生支援機構の奨学金を取り上げます。
 
教育ローンに関しては、銀行等民間の教育ローンに比べ有利な点が多い、日本政策金融公庫の国の教育ローンについて取り上げます。両者の主な違いを見てみましょう。
 
国の教育ローンは保護者が利用者です。いつでも利用が可能で、お金が必要な時期の2~3カ月前に申し込むことができます。
 
1年分まとめてお金を借りることができ、借入限度額は子ども1人あたり350万円(6カ月以上の留学資金450万円)です。これは保護者の口座に振り込まれます。
 
返済は、融資日の翌月または翌々月の返済希望日から開始します。子どもの在学期間中は利息のみ返済して卒業後に元金と利息の返済を開始する元金据置もできます。
 
金利は固定金利(保証料別)のみで低利です(平成30年6月1.76%)。
 
返済期間は15年以内となっています。
 
一人親家庭、交通遺児家庭、世帯年収200万円以内の人、世帯年収500万円以内(子ども3人以上の世帯)の人などには、金利の低減や返済期間の延長、保証料の低減といった優遇制度があるのが特長です。
 
一方、日本学生支援機構の奨学金の利用者は学生本人です。決められた募集時期(基本的に春)にしか申し込むことができません。入学後に毎月定額が学生本人の口座に振り込まれます。
 
利用可能額は、無利子の第一種奨学金では、進学先と通学形態により決まり、例えば、私立大学自宅通学生の場合、月額2~4万円または5.4万円(5.4万円は一定の家計基準以下しか選択できません)、有利子の第二種奨学金は月額2~12万円(1万円単位)からの選択となります。両者の併用も可能です。
 
また、第一種奨学金や第二種奨学金の利用を前提として、入学月にたった1回だけ振り込まれる有利子の入学時特別増額貸与奨学金(10~50万円、10万円単位)もあります。
 
ただし、低所得世帯しか利用できません。また国の教育ローンが利用できる場合には、入学時特別増額貸与奨学金は利用できません。有利子の奨学金でも在学中は無利息です。
 
返還は貸与終了後(卒業など)7カ月目から開始します。3月に卒業すれば10月から返還が始まります。
 
返還期間は、貸与月額と貸与月数によって9~20年に自動的に決まります。早く返還したい場合は「繰り上げ返還」ができます。
 
利率は貸与終了時に決まります。そのため上限利率3%が定められています。利率の算定方式は「利率固定方式」と概ね5年ごとに利率を見直す「利率見直し方式」があります。
 
平成30年3月の利率は、「利率固定方式」0.27%、「利率見直し方式」0.01%となっています。
 

入学前の教育資金が不足した場合

入学前の教育資金の不足分には、奨学金を借りるという選択肢はありません。なぜなら、奨学金が振り込まれるのは入学後だからです。
 
入学時特別増額貸与奨学金を入学金等に利用できると勘違いしている保護者もいますが、この奨学金も振り込まれるのは入学後ですので、入学金等には利用できません。
 
ただし、卒業年次に予約し、予約採用候補者になった生徒は、この奨学金を担保に労働金庫(ろうきん)で「入学時必要資金融資」を予約時の金額(10~50万円)の範囲内でつなぎ融資を受けることが可能です。
 
なお、第1回目の予約の結果が通知されるのは10月下旬ですので、「入学時必要資金融資」が利用できるのもこれ以降になります。
 

入学後の教育資金が不足した場合

入学後の教育資金の不足分を借りる場合の選択肢としては、奨学金と教育ローンがあります。お金を借りるときのチェックポイントは、借入額、金利の種類、金利水準、返済期間のバランスです。
 
借入額が大きい場合、たとえ金利が低くても返済期間が短いと、毎月の返済額が大きくなり返済ができないかもしれません。
 
奨学金も教育ローンも比較的長期の返済が可能ですので、同じ金額を借りるのであれば、まずは金利を比較してみましょう。
 
2018年3月の金利で比較すると、国の教育ローンの金利は固定金利1.76%(保証料別)、日本学生支援機構の第二種奨学金は「利率固定方式」(保証料別)0.27%。「利率見直し方式」(保証料別)0.01%と、奨学金のほうが圧倒的に低くお得です。しかも在学中は利息が発生しません。
 
保護者にとっては奨学金が子どもの借金であることから、教育ローンの利用を考えている人もいますが、奨学金の返還は保護者が行っても問題はありません。
 
したがって、奨学金が利用できるのであれば、奨学金を借りたほうが教育ローンを借りるよりもお得です。
 
入学前の教育費の不足分は、奨学金が利用できないので教育ローンを利用せざるを得ませんが、入学後の教育費の不足は奨学金で賄うようにしましょう。利用者が違うので教育ローンと奨学金の併用も可能です。
 
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。


 

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