更新日: 2021.03.17 住宅ローン
新型コロナの影響で住宅ローンなどの返済が難しい…検討したい債務整理の方法って?
これらの方の生活再建や事業の再建・継続を支援するため、新型ウイルス感染症による債務整理にも「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン(自然災害ガイドライン)」に特則が設けられ、2020年12月1日から運用が開始されました。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
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「自然災害ガイドライン」の特則を利用することのメリット
コロナ禍に関して「自然災害ガイドラインの特則」を利用することにより、破産等の法的倒産手続きによらず、裁判所が一定関与するものの基本的には債権者(金融機関等)との協議によって、債務者は自助努力によって生活再建や事業の再建・継続を図ることができます。つまり、一定の要件の下で債務免除(一部または全部)を受けることができます。
「自然災害ガイドライン」の特則の利用について、債権者は、債務者が特則を利用できない人であることが明白な場合を除いて。手続きの着手の同意書を与えなければなりません。
また、裁判所の主宰する倒産手続きと異なり、以下の特徴があります。
(1)個人信用情報機関に登録(いわゆるブラックリスト化)されることがありません。新たな借入がしにくくなる心配はありません。
(2)官報に載ることもありません。
(3)保証人に対する保証債務の請求も原則なされません。
(4)手続きに関しては、弁護士等の「登録支援専門家」による支援を無料で受けることができます。
(5)自己破産手続きでは、手元に残しておける現預金は99万円までですが、特則を利用した場合は、99万円を超える現預金を手元に残すことが可能です。具体的には、債務者の生活状況などの個別事情により決まります。
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特則を利用する場合の留意点
利用者は、新型コロナウイルス感染症の影響者に限定されます。新型コロナウイルス感染症が指定感染症と定められた2020年2月1日以前に、延滞等で期限の利益を喪失したことがないことが基本要件です。なお、期限の利益喪失事由が発生していても債権者の同意が得られれば特則を利用することが可能です。
また、本特則制定日である2020年10月31日以降の発生債務には適用されませんので留意してください。
手続きの流れ
手続きの流れは以下のとおりです。
(1)最も多額のローンを借りている金融機関等への申し出(口頭)によって開始されます。その際、金融機関等に、整理対象となる借入先、借入残高、年収、資産など現況を明らかにする必要があります。手元に資料を準備しておきましょう。
(2)金融機関等から手続き着手の同意が得られたら、地元弁護士会などを通じて、ガイドライン運営機関に対して、「登録支援専門家」による支援を依頼します(費用は無料)。
(3)その専門家に財産目録などを作ってもらい、金融機関等に債務整理の申し出をします。申し出後は、原則、債務の返済や督促は一時停止となります。
(4)その専門家の支援を受けながら、金融機関等の協議を通じて、債務整理の内容を盛り込んだ「調停条項案」を作成し、金融機関等へ提出します。
(5)債務整理の対象となる借入先全員の同意を得られれば、簡易裁判所に特定調停を申し立てます(申し立て費用は債務者の負担)。
(6)特定調停手続きにより調停条項が確定すれば、債務整理成立です。
特定調停とは
特定調停は、債務の返済ができなくなるおそれのある債務者の経済的再生を図るため、簡易裁判所を介して、金銭債務に関わる利害関係の調整を行う手続きです。
債権者と債務者間で合意が成立し、これを調書に記載したときは、その記載は確定判決と同一の効力をもちます。したがって、債務者は、これに従って弁済すればよく、それ以上の取り立てを受けることはありません。
この手続きでは、当事者本人が出頭するのが原則となっていますが、法律知識が十分でなくとも、申立書などのひな型を使って自分で申し立てを行い、手続きを進めていくことができます。
申し立ての費用も、例えば、個人が申し立てる場合は業者1社につき500円程度と安価です。裁判所に来る回数も2回程度と、非常に利用しやすい手続きであるといえます。調停は、非公開ですので外部に知られることもありません。
執筆者:新美昌也
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