住宅ローン控除期間終了後(10年後)も一括返済・繰り上げ返済しないほうがいいワケ
配信日: 2019.07.08 更新日: 2022.02.21
執筆者:國村功志(くにむら こうじ)
CFP(R)、証券外務員一種
大手証券会社で株式・債券・投資信託などの金融商品営業に携った後、ファイナンシャルプランナーの養成団体やFP事務所を経験。現在は資産形成専門FPとしてセミナーや個別相談のほか、マネー系記事の執筆も行う。個人でも投資信託やFXでの資産運用を行い、実践に即したわかりやすいアドバイスを心がけている。
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目次
住宅ローン控除期間は住宅ローンの支払い以上に得することもある
住宅ローン控除はローン残高の1%分の金額を所得税・住民税から差し引ける制度です。年末に3000万円のローン残高があれば、年間で最大30万円が税金から控除されます(2019年6月現在)。
支払った税金以上の控除はできませんが、最長10年間まで毎年利用でき、最大控除額は10年間で400万円です。
住宅ローン控除で残高の1%分が戻ってくると考えるなら、住宅ローン金利の水準によっては支払う金利よりも控除で戻ってくる金額のほうが多くなることもあります。
仮に住宅ローン金利が0.7%なら、戻ってくる金額よりも支払う金額のほうが0.3%少ないため、住宅ローン控除期間に限ってはローンを組んでいるにも関わらず得をすることになるのです。
実際には支払う税金以上の控除はできないため、住宅ローン控除の枠をすべて使い切れないこともあります。その場合は単純に1%と住宅ローン金利の差がお得になるわけではないですが、税金が軽減されることに変わりはありません。
住宅ローン控除期間終了後は繰り上げ返済するのが一般的
住宅ローン控除期間が終わると税金の控除ができなくなるため、住宅ローンの利息はまるまる支払っていくことになります。そのため、一括返済もしくは無理のない範囲で繰り上げ返済をして、利息を浮かせていくというのが一般的でしょう。
3000万円の住宅ローンを金利0.7%、35年で借り入れしたケースを考えてみます。住宅ローン控除期間が終了する10年後に、300万円を繰り上げ返済すると利息はいくら軽減できるでしょうか。
利息の軽減額は返済方法にもよりますが、返済金額分のローン期間が短縮される方法(期間短縮型)では、およそ53万円の利息が浮きます。
これだけの金額が節約できるのですから、住宅ローン控除期間が終わったあとは繰り上げ返済したほうがお得と言えます。しかし、その300万円を繰り上げ返済に使わず、運用に回したほうが得する可能性もあります。
繰り上げ返済の資金を運用に回すほうが得する可能性もある
先ほどの例では、約53万円の利息を支払わなくてよくなりました。では、300万円を繰り上げ返済に使わず、住宅ローン控除期間の終了時から残りの返済終了時までの25年間運用に回すとどうなるでしょうか。
運用利回りは確定したものではありませんが、25年間で得られるリターンの利回りが1年あたり平均3%だとするとトータルで635万円ほどに増えます。利回りが年平均1%だとしても、およそ385万円です。
こうした運用のことまで考えると、必ずしも住宅ローンを繰り上げ返済するのが得とは言い切れません。繰り上げ返済するはずだったお金を運用に回したほうが老後資金など他のことに使える幅も広がります。
繰り上げ返済の資金を長期投資に回すことも検討したい
資産運用するほうがお金の増える可能性があるとは言うものの、そんなに増えるのかだろうかと疑問に思う人もいるでしょう。投資は値動きがあって確実とは言い切れませんが、長期投資するほど運用収益が安定していくのも事実です。
投資信託協会によると、例えば日本株式に5年間投資した結果と20年間投資した結果を比べると、年平均の収益率はどちらも11%程度です。しかし時期によっては、5年間の投資だと悪くてマイナス7.3%の平均収益率だったのに対し、20年間の投資では最低でもプラス4.4%の平均収益率でした。
どんなものに投資するかによってリターンは変わりますが、長期投資で数%の利回りを得ることは十分可能でしょう。繰り上げ返済を検討しているなら、その資金を資産運用に回すことも選択肢の1つとして考えてみてはいかがでしょうか。
出典:すまい給付金「住宅ローン減税制度の概要」
知るぽると「繰り上げ返済シミュレーション」
アセットマネジメントOne「資産運用かんたんシミュレーション」
一般社団法人投資信託協会「第3回 長期投資のメリットとは」
執筆者:國村功志(くにむら こうじ)
CFP(R)、証券外務員一種
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