2018.07.05 老後

10年も経たない近い将来、認知症患者が700万人に!何かと介護が大変な認知症は離婚の原因になってしまうのか?

現在、全国で約550万人の認知症の人がいます。団塊の世代が75歳以上になる2025年には、認知症の人は700万人になると推計されています。
 
これは65歳以上の5人に1人が認知症になる計算になります。
 
認知症の人が増えるとさまざまな問題が生じるでしょう。例えば妻が認知症になり、夫が長年の介護で体力的にも精神的にも限界になり、妻を特別養護老人ホームに入所させることになったとしましょう。
 
見舞いに行っても、妻は見舞いに来ているのが夫であることがわからない状態だとします。
 
はたして、このような状況で、夫は妻の介護をし続けなければいけないのでしょうか。夫は離婚をして再婚することは許されないのでしょうか。
 
今後、このような事例が増えるかもしれません。過去の裁判例を参考にして考えてみたいと思います。
 

認知症を理由として離婚できるか

一般に離婚の方法としては、協議離婚、調停離婚、裁判離婚があります。一般的には協議離婚がほとんどですが、認知症の程度によっては、離婚協議は難しいでしょう。
 
そうすると、調停・裁判で離婚することになります。仮に認知症を理由として離婚訴訟を起こす場合、認知症が民法の離婚原因にあたる必要があります。
 
具体的には、
1.不貞行為(浮気・不倫など)
2.悪意の遺棄(生活費を渡さない、家に帰ってこないなど)
3.3年以上の生死不明
4.回復の見込みのない強度の精神病
5.そのほか婚姻を継続しがたい重大な事由
 
以上のどれかにあたることが必要です。
 

これまでの裁判所の判断はどうだったか

これまで、認知症は「回復の見込みのない強度の精神障害」にあたるとはされてきませんでした。しかし、「婚姻を継続したがい重大な事由」があるとして、離婚を認めたケースがあります。
 
事案の概要は次のとおりです。
 
妻がアルツハイマー病とパーキンソン病と診断され、夫が世話をしながら自宅療養をしていましたが、寝たきりになり(会話もほぼ不可能になる)ました。自宅介護が難しくなり、妻を特別養護老人ホームに入所させました。
 
認知症の程度は重度で回復の見込みがないと診断され、夫の判別もできなくなりました。
 
このような状況で、42歳の夫から59歳の妻への離婚訴訟が起こされました。
 
判決では、病気の性質等に照らせば、強度の精神障害(民法770条1項4号)に該当するか否か疑問が残るとして、同号に基づく離婚請求については認容しませんでしたが、婚姻関係の破たんを認め、民法770条1項5号の「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたるとして離婚が認められました(長野地判平成2年9月17日)。
 
ただし、弱者である妻を離婚によって見捨てるようなことが認められるはずがありません。
 
この事例では「夫が離婚後も妻への若干の経済的援助および面会 などを予定していること、妻の両親はすでに他界し、親族の異父兄とはほとんど交流がないこと、妻は現在老人ホームに入所しているところ、離婚後の老人ホーム費用は全額公費負担になる予定であること」などが考慮されました。
 
つまり、離婚後、妻の生活がある程度成り立つように夫が援助するなどの事情があれば、離婚が認められる場合があるといえます。
 
妻が認知症になり夫の判別ができなくなったとしても、そういうときこそ妻を支えるのが夫婦である、という考えもあるでしょう。しかし、夫の判別ができなくなるほど認知症が重症化した場合にまで、42歳の男性に再婚をあきらめさせるというのも気の毒な気もします。
 
このようなケースでは、離婚後の認知症配偶者の生活保障をするなどの誠意を示す事情があれば、離婚を認めてもいいのではないでしょうか。
 
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。

新美 昌也

Text:新美 昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。
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