2018.12.18 老後

『高齢者雇用継続給付を受けると年金が2段階でカットされる』これって本当?嘘?

執筆者 : 井内義典

年金の支給開始年齢は引き上げられつつあり、65歳までは継続雇用される時代となっています。60歳以降も継続雇用されると、雇用保険制度から高年齢雇用継続給付が支給されることがあります。
 
しかし、その高年齢雇用継続給付と年金が受け取れるようになると、年金の支給が調整されることがあります。
 

定年後、再雇用勤務する人のための高年齢雇用継続給付

勤務してきた会社の規程により60歳で定年を迎えても、同じ会社で再雇用され、60歳以降も勤務する人も多いかと思います。しかし、再雇用されてからの賃金は定年前と比べて大幅に下がることもあるでしょう。
 
そこで、定年まで5年以上継続して雇用保険に加入し、60歳以降の賃金(給与)が60歳時点の賃金より75%未満になる場合は、雇用保険制度から高年齢雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金)が支給されることになり、低下した賃金の一部が補填されることになります。
 
高年齢雇用継続給付は60歳から65歳までの最大5年その支給対象になります。
 
もし、60歳時点の賃金の75%以上の賃金を受ける場合や、60歳以降の賃金が359,899円(平成30年8月から翌年7月までの額)以上である場合は、支給されないことになります。
 

高年齢雇用継続給付を受けると、年金が一部カット

60歳以降の賃金が60歳時点の賃金の何%になったかによって、高年齢雇用継続給付の支給額も変わってきます。もし、61%以下であれば、60歳以降の各月について、賃金の15%分が支給されることになります(【図表1】「高年齢雇用継続給付の支給率」を参照)。
 
しかし、継続雇用され、厚生年金被保険者となっている人が特別支給の老齢厚生年金(60歳台前半の老齢厚生年金)を受給できるようになって、引き続き高年齢雇用継続給付を受けると、当該年金の一部が支給されないことになっています。
 
高年齢雇用継続給付として賃金の何%分を受給するかによって年金の支給停止額も変わり、賃金(給与)の15%の高年齢雇用継続給付を受けた場合では、年金は標準報酬月額(給与)の6%がカットされることになります(「年金の支給停止率」は【図表1】参照)。
 

 

在職老齢年金制度による調整も加わる

特別支給の老齢厚生年金については、高年齢雇用継続給付を受けることによる支給停止だけではありません。
 
在職中で厚生年金被保険者であれば、まず、在職老齢年金制度による支給停止がされることになっていますので、そこからさらに高年齢雇用継続給付を受けることによる支給停止がされると、年金のカットが2段階となります。
 
【図表2】のように、年金の月額が10万円で、給与(賃金・標準報酬月額)が、60歳時点(41万円)の61%以下である22万円だとします(賞与はなし)。この場合、まず、在職老齢年金制度により支給停止されるのは2万円となります。
 
ここからさらに高年齢雇用継続給付として、22万円の15%である33,000円を受け取ると、22万円の6%である13,200円の年金が支給停止となります。合計33,200円カットされ、結果、受け取れる年金としては月額66,800円となります。
 
この66,800円に33,000円の高年齢雇用継続給付、給与22万円を足すと、1か月の収入の合計額として319,800円となるでしょう(ただし、税金や社会保険料、雇用保険料が引かれる前の金額となります。)。
 

 
このように、特別支給の老齢厚生年金に2段階で支給調整が入る場合もありますので、当該年金を受け取れる人は、60歳から65歳までの収入の見通しを立てるにあたって注意が必要となるでしょう。
 
Text:井内 義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
 

井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

1982年生まれ。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役。

資格学校勤務時代には教材編集等の制作業務や学習相談業務に従事し、個人開業の社会保険労務士・FPとしては公的年金に関する研修講師を務め、また、公的年金の相談業務も経験してきている。

これらの経験を活かして、専門誌で年金に関する執筆を行っている。2018年に、年金やライフプランに関する相談・提案、教育研修、制作、調査研究の各事業を行うための株式会社よこはまライフプランニングを設立、横浜を中心に首都圏で活動中。日本年金学会会員、日本FP学会準会員。