非正規雇用の人の老後はどうなる?
配信日: 2021.06.19
それに対して「じゃあ具体的にどうなるの?」と疑問に思ったことはありませんか?
仮にそう問いかけたとしても、漠然と危機感をあおられて終わるということがほとんどではないでしょうか。
そこで、今回は非正規雇用の方の老後がどうなるか見ていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
単純にもらえる年金額が少ない
詳細については省略しますが、非正規雇用労働者であっても正社員と共通の法定の要件を満たすことで、厚生年金に加入することができます。しかし、厚生年金に加入すれば老後が安心というわけではありません。
厚生年金の金額は現役時代に支払った保険料に比例します。厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」における非正規雇用労働者の平均賃金は、月額21万4800円(年齢48.8 歳、勤続年数8.7年)となっています。対して正規雇用労働者の平均賃金は月額32万4200円(年齢42.2歳、勤続年数12.5年)と、その差は大きくなります。
この結果、どういうことが起こるかというと、せっかく正社員と同じように厚生年金に加入したとしても、給与が低いが故に納める厚生年金保険料の金額も少なくなり、それによって受け取れる年金が圧倒的に少なくなるという現象が起こるのです。
老後資産の形成が十分にできない
先に述べたとおり、一般的な正社員と非正規雇用労働者とでは賃金に1.5倍以上の差があります。収入が低いと日々の生活における支出で圧迫され、貯金や資産形成に回せるお金が少なくなります。
公的年金だけでは老後資金が不足するということで、国はiDeCoやNISAといった諸制度を創設している反面、賃金の低い非正規雇用ではそのような制度を最大限利用することができず、老後資金の準備が十分にできないという可能性が高くなります。
65歳以降も働き続けなければならない可能性がある
非正規雇用労働者に対しては、いまだ退職金が払われないことがほとんどです。最近では非正規雇用だけではなく、正社員ですらも退職金の支給額が減ったり、そもそも退職金制度自体が存在しない企業も多いです。
老後資金に充てられる退職金がないということは、その分、生涯の収入が少なくなるということです。
非正規雇用で働き続けると年金額が少なかったり、資産形成が十分にいかないことから、65歳以降も働き続けなければならないことも想定されます。
非正規雇用は老後に向けてどう対策すればいい?
望んでいるか否かに関係なく、非正規雇用で働く以上は老後に向けた対策が特に重要です。具体的には次のようなことを実践してみてください。
収入口を増やす努力をする
非正規雇用労働者は残業が少なめであったり、働く日時について多少の融通が利くこともあります。仮にそうでなくとも、休日や業務後の時間を利用するなどして収入を増やす努力をしてみましょう。
ただ単にアルバイトを掛け持ちするといった増やし方ではなく、例えば得意分野を生かし、屋号を取ってフリーランスとして活動してみるといったように、事業性の高い方法を選択してください。そうすることで収入が増えるだけでなく、将来のキャリアにもつながるからです。
最近では動画サイトやSNSへ趣味や特技について投稿すると、急に人気に火が付くということも珍しくありません。もし現在、得意なことがないという場合は興味のある分野を勉強して資格を取得し、それを生かして仕事を探したり、営業していくというのも有効ではないでしょうか。
節約をする
収入を増やすのは容易ではありません。しかし、消費を減らすことは比較的容易です。外食を減らして自炊をする。コンビニではなくスーパーやドラッグストアを利用する。携帯を格安SIMへ移行するといった方法で、無理なく余分な支出を減らしていきます。
そうして浮いたお金を自己投資に利用して収入口を増やしたり、iDeCoやつみたてNISAなど比較的安全性の高い方法での資産運用に回して老後への備えをしていくのです。
非正規雇用労働者こそ老後について考えておくべき
何も考えず非正規雇用労働者として働いていても、明るい将来が待っているという方はごく少数です。老後は誰しも平等にやってくるものなので、少しでも楽しくすてきな老後を迎えた方が良いと思いませんか?
非正規雇用であっても老後のために準備できることは多くあり、その過程で努力が実れば、大きく成功することも可能でしょう。非正規雇用労働者として働いており、老後について不安があるのなら、まずは将来に向けて何か行動を始めてみてください。
出典
厚生労働省 令和2年賃金構造基本統計調査 結果の概況
総務省統計局 労働力調査(詳細集計)2020年(令和2年)平均
執筆者:柘植輝
行政書士