更新日: 2021.12.15 その他老後
70歳まで働く? 今の40~50代会社員にはどんなことが降りかかってくるのか
現在、40~50代の会社員のみなさんにはどんなことが起きるのでしょうか? 筆者の主観的な推測も加えて考えてみます。
みなさんは「定年が延びて70歳まで働けるようになるなら安心だー」と思いますか? まず、現在の実態を見てみましょう。
執筆者:藤木俊明(ふじき としあき)
副業評論家
明治大学リバティアカデミー講師
ビジネスコンテンツ制作の有限会社ガーデンシティ・プランニングを28年間経営。その実績から明治大学リバティアカデミーでライティングの講師をつとめています。7年前から「ローリスク独立」の執筆活動をはじめ、副業・起業関連の記事を夕刊フジ、東洋経済などに寄稿しています。副業解禁時代を迎え、「収入の多角化」こそほんとうの働き方改革だと考えています。
現在でも二段階の給与ダウン
現在でも、「65歳まで継続雇用される制度」を導入している大企業は多いです。しかし、そこに至るまで、ほとんど「二段階の給料ダウン」があります。
(1)役職定年(50代のどこか) → 何割か給与カット
(2)定年(ほとんど60歳)で継続雇用 → 何割か給与カット
つまり、60歳を過ぎると、一番多くもらっていたときに比べ、給与が3割や4割になってしまう可能性が高いのです。
しかし暇になるわけではありません。筆者が実際に継続雇用された60代の方にヒアリングすると、「給与が下がったのに、やる仕事はほとんど変わらなくてつらい」という声が聞こえてきます。
順調に出世して、役員などになれた一部の人(もちろん役員になっても1年でクビと言うこともあります)は別にして、多くの人が安い給料で前と同じ仕事の成果を求められるようです。
しかも、もとの部下に仕えることもあります。仲の良い部下だったらまだしも、ソリの合わない部下が上司になって、こき使われることを考えると、会社に残れたとしてもあまり幸せではないかもしれませんね。
会社側は「全体的に給与を抑えたい」と考える
今度は会社経営の立場から見てみます。70歳まで雇用するとします(法改正では「雇用」でなく「就業機会の提供」と微妙にぼかしています)。会社側はさらに多くの人件費を支払っていかなくてはなりません。筆者が経営者だったらこう考えます。
「70歳まで給与を払い続けると人件費がパンクしてしまう。全体的に給与を下げるしかない」
(1)役職定年(50代のどこか) → 何割か給与カット → さらにカットの金額を増やす
(2)定年(ほとんど60歳)で継続雇用 → 何割か給与カット → さらにカットの金額を増やす
(3)全体的に昇給は抑え、給与を低くしていく
これはあくまでも筆者の予測ですが、多くの経営者は、二段階の給与カットだけでなく、「総体的に給与を低く抑える」という考えに至るでしょう。40代~50代の人にとってはたまりません。
しかし給与カットだけでなく、筆者が経営者であり、会社の業績も先行き不安であるなら、本音ではこう考えます。
「70歳まで就業機会を与えるどころではない。そこまで会社に居座ってもらわないよう、50代までに外に出て欲しい」
近ごろ、業績は悪くないのに、45歳あたりで早期退職を呼びかける企業が増えています。経営者がこう考えているとしたら、ツジツマが合うのではないでしょうか。
現在65歳よりの年金はどうなるのか?
そして、もうひとつ考えておきたいのが、なぜ政府は70歳まで就業機会を与えるようにと法律を改正したかということです。これはほぼ間違いなく「将来的に年金支給を70歳以上にする」という筋書きがあるのではないかと思えます。
現在の少子高齢化がさらに進んでいくことは間違いなく、2022年(来年)にはいよいよ「団塊の世代」(出生数で約800万人)が75歳以上の後期高齢者になります。※2
医療費、介護費が跳ね上がることは間違いありません。それを支えていくのは40~50代の人たちを中心とした現役世代です。しかし、それを支えた見返りは乏しいものになりそうです。
ある大企業人事関係者からは「70歳どころではない。年金支給は75歳まで繰り下がるのでは」という予測を聞きました。その予想が当たれば、現在、65歳からの支給が10年近く遅くなることになります。
いやおうなく70歳まで働くか、働かなくていい十分な財産を残しておくしかありません。
まとめ
そもそも昭和時代では定年は「55歳」でした。それがどんどん繰り下がっています。現在は努力目標とはいえ、「70歳まで雇用するなどして働く機会を与えること」がふつうになるときはそんなに遠くないと思われます。しかし、それはいばらの道である気がします。
悲観的なことばかり書きましたが、自分の身は自分で守るようにというメッセージだと考えましょう。自己のスキルを高めて価値を上げるか、会社以外に仕事を持つか、貯金をしていくか、一人ひとりに「生きていくための戦略」が求められることは間違いないでしょう。
出典
※1高年齢者雇用安定法改正の概要(厚生労働省)
※2団塊の世代の高齢化(内閣府)
執筆者:藤木俊明
副業評論家