更新日: 2022.05.27 その他老後
医療費を抑えるだけでなく体への負担減も。“はしご受診”はやめよう
医療費をいかに安くするかを考えると、「はしご(梯子)受診」を極力回避することも重要になってきます。
執筆者:北山茂治(きたやま しげはる)
高度年金・将来設計コンサルタント
1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、健康マスターエキスパート
大学卒業後、大手生命保険会社に入社し、全国各地を転々としてきました。2000年に1級ファイナンシャルプランニング技能士資格取得後は、FP知識を活用した営業手法を教育指導してきました。そして勤続40年を区切りに、「北山FP社会保険労務士事務所」を開業しました。
人生100年時代に、「気力・体力・財力3拍子揃った、元気シニアをたくさん輩出する」
そのお手伝いをすることが私のライフワークです。
ライフプランセミナーをはじめ年金・医療・介護そして相続に関するセミナー講師をしてきました。
そして元気シニア輩出のためにはその基盤となる企業が元気であることが何より大切だと考え、従業員がはつらつと働ける会社を作っていくために、労働関係の相談、就業規則や賃金退職金制度の構築、助成金の申請など、企業がますます繁栄するお手伝いをさせていただいています。
はしご受診とは
はしご受診とは、「医者の診断の納得がいかない」「この医者とは相性がよくない」「念のため、他の病院でも診てもらおう」「この医者が処方した薬が効かない」などの理由で、同一症状で病院や診療所を転々とまわることを、はしご受診といいます。
はしご受診を繰り返すと、検査・処置・注射・薬などを最初からやり直すこととなり、医療費がかさむだけでなく、体にも重い負担がかかることもあります。
はしご受診の問題点
例えば、はしご受診を3回繰り返した場合の一例を見てみましょう。
まず、同じ医療機関で3回受診した場合は、1回目は初診料2880円と検査料等、2回目は再診料730円、3回目は再診料730円の合計4340円と検査料となります。
3つの医療機関をはしご受診した場合は、1回目は2880円と検査料、2回目も2880円と検査料、3回目も2880円と検査料の合計は8640円と検査料も3回分です。かかる医療費は約2倍となり、検査料は3倍となります(※病床数や受診者の年齢等によって異なることもあります)。
医療費ばかりではありません、受ける検査がCT検査やMRI検査などの場合、体への負担も相当なものになります。さらに、処方される薬が重複したり数が多くなったりする可能性もあり、その場合薬代が高額になるばかりでなく、多くの薬の飲み合わせで副作用を起こすことも考えられます。
また、医療機関を変えるたびに、初診を繰り返すことになりますので、治療が遅れて病気が進行したり、治療期間が長くなったりすることもあります。
はしご受診をしないためには
受診した医師の診断や治療方針に不安がある場合は、可能であればその受診した医師に自分の不安を伝えてみてください。
まずはできるだけ「かかりつけ医」を持つことを検討してみてください。日頃からかかりつけ医に行くことで自分の持病やその対応方法などを知ることができますし、急に体調が悪くなっても、対応方法を聞いているので自宅でも対応できるかもしれません。
さらに、かかりつけ医を持つことは次のようなメリットがあります。
●かかりつけ医が町の小規模な医院の場合、大きな病院に比べて待ち時間が短く、じっくり診察してくれます。
●別の病院での入院や検査が必要な場合には、適切な病院を紹介してもらうことができるケースがあります。紹介状を書いてもらうと大病院での特別料金がかからなかったり、これまでの経緯を医師同士が連携してくれるなどの対応がはかられることがあります。
●日常の健康管理のアドバイスをしてくれます。
はしご受診とセカンドオピニオンの違い
「セカンドオピニオン」と「はしご受診」は違います。セカンドオピニオンとは、重い病気にかかった時、どうしたらよいのか悩むこともあります。そんな時、患者が納得するため、そして最善の治療を受けるために、かかりつけ医以外の医師に意見を求めることです。目的は、かかりつけ医とともに治療を選択することにあります。
セカンドオピニオンを利用したい場合は、かかりつけ医にそのことを伝えて、紹介状と検査結果等提供してもらい、別の医療機関を受診します。セカンドオピニオンは、納得して治療を受けるための患者側の権利です。かかりつけ医に申し訳ないと思わずに、はっきりセカンドオピニオンを受けたいと伝えましょう。
セカンドオピニオンの紹介状は5000円かかりますが、健康保険が適応されると通常は1500円となります。セカンドオピニオンの場合は、同じ検査が繰り返されたり、薬が重複しなかったりするため、体の負担も少なく、納得できる治療となります。
ここでもやはり、信頼できるかかりつけ医を見つけることが、もっとも大切なことになるのではないでしょうか。
出典
全国健康保険協会 ホームページ
執筆者:北山茂治
高度年金・将来設計コンサルタント