更新日: 2022.05.31 セカンドライフ

老後は年金だけで暮らせる? 資金が足りない場合の対処法

老後は年金だけで暮らせる? 資金が足りない場合の対処法
老後の暮らしに不安を抱いている人は多くても、具体的に自分の年金額や老後の生活費について認識していない人もいるのではないでしょうか。ほとんどの人が漠然とした不安を抱いているのが現状です。
 
そこで、この記事では国の年金制度だけでどれくらいの給付が見込めるのか、資金が足りない場合にはどのように対処したらいいのかを解説します。漠然とした不安を抱いている人は、この記事を参考に具体的な対策を立てましょう。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

高橋庸夫

執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

年金だけでいくらもらえる?

国の年金制度では、老齢年金とよばれている年金が原則65歳から給付されます。年金の被保険者は勤務形態などによって以下の3つに分けられます。

・第1号被保険者:20歳以上60歳未満の自営業者・農業者・漁業者などとその家族、学生および無職の人(第2号・第3号被保険者を除く)
 
・第2号被保険者:厚生年金保険や共済組合等に加入している会社員や公務員など(65歳以上の老齢年金受給資格者を除く)
 
・第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収が130万円未満の人)

また、被保険者の種類によって給付される年金も以下のように分けられます。

・老齢基礎年金:第1~3号被保険者
・老齢厚生年金:第2号保険者

それでは、上記を踏まえたうえで2つの老齢年金受給額を解説します。
 

老齢厚生年金の場合

老齢厚生年金はいわゆる給与所得者(公務員を含む)が受け取る老齢年金です。また、老齢厚生年金の受給要件は老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていることが条件となっているため、老齢基礎年金も受給できます。したがって、老齢厚生年金を受給する人の年金額は老齢基礎年金だけの受給者よりも多くなります。
 
ただし、受給できる金額は所得や勤続年数によって違うため、一律に年金額を判断することはできません。平均的な収入〔平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円〕での年金額は以下の通りですが、年金シミュレーションで自分の年金額も見積もっておきましょう。
 

【平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円で40年間就業した場合】

夫婦2人分の老齢基礎年金(満額)を含む年金額:21万9593円/月(令和4年度)

 

老齢基礎年金の場合

老齢基礎年金は、無職の人や学生も含む20~60歳未満が対象です。保険料が一律のため、年金額も年金保険料の支払い回数が同じであれば一緒です。
 
国民年金保険料は令和4年度で月1万6590円です。年金額は令和4年度で月6万4816円ですが、これは40年間保険料を支払った場合(満額)の支給額です。30年しか支払っていない場合は4分の3、20年の場合は2分の1というように減額されるので注意しましょう。
 

資金が足りない場合の対処法(年金受給前)

年金シミュレーションなどで自分の年金を確認して不十分だと感じたら、年金受給前にできる対処法を検討してみましょう。
 
対処法としては、国の年金制度以外の年金に加入する方法があります。勤務する会社が企業年金制度を備えている場合は、その会社にある企業年金制度に加入するのもひとつの方法です。もちろん会社に勤務していなくても加入できる年金制度もあるので、自分に合っている対処法を選びましょう。
 

確定給付企業年金制度(DB)

確定給付企業年金制度は、給付金が確定している企業年金制度のことで、DBともよばれています。実施主体の違いによって次の2種類に分かれます。
 
・規約型確定給付企業年金:厚生年金適用事業所の事業主が実施主体となって、労使が合意した年金規約に基づいて運営する。実際の資金の管理・運用は企業と提携した信託会社・生命保険会社が行う
 
・基金型確定給付企業年金:企業とは別の法人、企業年金基金を設立して資金の管理・運用、給付を行う
 

確定拠出年金制度(DC)

DBは勤務している企業が運営していなければ加入ができませんが、確定拠出年金制度は個人型であれば、勤務先に関係なく加入が可能でDCともよばれています。ただし、個人型確定拠出年金は、原則として老齢年金受給前の国民年金加入者はすべて加入できますが、一部対象とならない人もいるので加入前に確認が必要です。
 
DCでは掛金(拠出金)が確定していますが、拠出金を自分で運用するタイプなので給付金が確定しない特徴があります。
 
DCは企業型と個人型の2種類です。
 
・企業型確定拠出年金:拠出金は企業が負担するタイプで、掛金には上限がある。個人拠出との併用も可能で、マッチング拠出との併用も可能な場合もある
 
・iDeCo(個人型確定拠出年金):国民年金基金連合会に申請することで、20~65歳まで加入が可能。拠出金は個人負担(上限あり)
 

厚生年金基金制度

厚生年金基金制度がすでにある企業であれば、企業の実情に合わせた上乗せ給付が可能ですが、新規設立はすでにできなくなっているためあまり一般的な方法ではありません。
 

国民年金基金制度

国民年金の第1号被保険者が対象となる任意の加入制度が国民年金基金制度です。「地域型国民年金基金(全国国民年金基金)」と「職能型国民年金基金」があります。
 
・全国国民年金基金:第1号被保険者であれば誰でも加入できる。
 
・職能型国民年金基金:事業や職種別に3つに分けられていて、その事業に従事している第1号被保険者であれば加入できる。
 

資金が足りない場合の対処法(年金受給後)

年金受給が間近、あるいはすでに65歳以上で年金を受給している場合は、DB・DCなどは利用できません。そのため、それ以外の方法で老後の資金を確保する必要があります。
 
十分な預貯金などがあれば問題ありませんが、そうした資産がない場合は、できるかぎり65歳以降も会社に勤務する、生活費を見直すなど、自分に合った方法で資金を確保しましょう。
 

働き続けることでメリットも多い

年金受給後も働き続けることで老後の生活費に余裕が生まれます。もちろん自営業でもかまいませんが、会社に勤めるとメリットがより大きくなります。なぜなら、2022年4月から法改正によって「在職定時改定制度」が導入されたからです。
 
65歳以降に会社に勤務しても厚生年金保険料が給与から差し引かれます。しかし、その保険料が厚生年金の受給額に反映されるのは退職後で、資格喪失時(退職時・70歳到達時)にのみ年金額が改定されていました。
 
現在は退職を待たずに毎年給付額に反映するので、退職するか70歳になるまで給付金の増額というメリットがあります。もちろん、それ以降も増額された給付が続きます。
 

ランニングコストの節約

会社の経営では毎月かかる固定費(ランニングコスト)を減らすことが、健全な経営には欠かせない要素です。この考え方は家計にも応用できるので、毎月かかる固定費を見直すことで少しでも老後の生活を楽にしましょう。
 
特に見直しが必要な固定費には以下の3つがあります。

保険料:生命保険料を一度も見直していない場合は、見直しによって保険料の削減が見込まれる

家賃:所得が低い場合は公営住宅に入居できる可能性が高いので引っ越しを検討

通信費:携帯料金のプラン見直しや固定電話を解約することを検討

 
そのほか上記以外にも無駄な出費がないか、一度見直してみるのもよいかもしれません。
 

自分に合った対策を早めに検討

老後の生活資金はなるべく早い段階で検討するほど適切に対処できます。なぜなら、新たに年金に加入する場合でも、掛金の支払期間が長いほど受給額が多くなるからです。
 
まずは、自分の年金支給額を具体的に知っておくことが重要です。年金の支給後ではできることが限られてしまうので、DCへの加入や退職後の勤務については早めに検討することをおすすめします。
 

出典

日本年金機構 令和4年4月分からの年金額等について
日本年金機構 国民年金の加入と保険料のご案内
厚生労働省 私的年金制度の概要(企業年金、個人年金)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集