更新日: 2023.01.30 その他老後

50代主婦・パートです。「熟年離婚」を検討中ですが、離婚後の生活はやはり苦しいでしょうか…? 今後の対策を教えてください

執筆者 : 吉田洋二郎

50代主婦・パートです。「熟年離婚」を検討中ですが、離婚後の生活はやはり苦しいでしょうか…? 今後の対策を教えてください
熟年離婚を検討している方の中には「離婚後、自分の年金だけで生活していけるのだろうか……」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか?
 
本記事では50代後半の夫婦、離婚を検討しているのは扶養の範囲内でパートを10年している妻という設定で、妻の老後の生活についてシミュレーションしていきます。熟年離婚を検討しており、その後の生活に不安があるという方は、参考にしてみてください。

50代後半夫婦の平均的な年金

「パートナーと離別を考えている。でも老後のお金で苦労したくない」という人は、老後の年金がどれくらい受給できるのか、その概算をしっかり押さえておく必要があります。50代後半の夫(会社員)と妻(扶養内パート)の平均的な年金額について詳しく見ていきましょう。
 

夫(会社員)の年金受給額

第2号被保険者である会社員は、国民年金に加えて厚生年金を受給することができます。厚生労働省が発表する「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金の平均受給額は、国民年金が5万6479円、厚生年金(国民年金を含む)が14万5665円となっています。つまり会社員の夫が受け取ることができるのは、14万5665円となります。
 

妻(扶養内パート)の年金受給額

会社員として働いている夫に扶養されており、パートとして勤務している妻の場合、厚生年金は受給できません。厚生年金を受給できるかはその働き方の状況によります。今回のケースでは扶養内パートとして10年勤めてはいるものの、月額賃金が8万8000円を超えていないため、厚生年金の受給対象ではないケースとします。この場合、妻の年金受給額は国民年金のみですので、5万6479円となります。
 

3号分割制度を利用する

上記の金額だと正直老後の生活は厳しいと思われる方も多いのではないでしょうか?
 
ここで、離婚時に請求できる3号分割制度を紹介します。3号分割制度とは、婚姻期間中の相手方の厚生年金記録を2分の1ずつ、当事者間で分割することができる制度です。平成20年5月1日以降に離婚し、下記の条件を満たせば3号分割制度が利用可能です。

●婚姻期間中に平成20年4月1日以後の国民年金の第3号被保険者期間中の厚生年金記録があること
●請求期限(原則、離婚翌日から2年以内)を経過していないこと

「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、年金受給額が5万6479円だったところ、3号分割によって平均年金月額6000円が受け取れますので、自分の国民年金と合わせて6万2479円になります。
 
3号分割の請求は、原則離婚後に行うことができますので、必要書類を揃えて、近くの年金事務所に提出すれば適用されます。
 

60代女性一人暮らしの生活費

ここで、妻が離婚後、単身で暮らした場合の1ヶ月の生活費を確認しておきましょう。総務省統計局の調査では、60歳以上65歳未満の一人暮らしの女性の1ヶ月の支出は14万4970円となっています。これら支出の主なものとしては、食料費に3万6743円、住居費に1万3677円、保険医療費に9020円、交通・通信費に1万4616円、教養娯楽費に1万4436円などになります。
 
特に医療費に関しては、個人差が大きくなるところと言えるでしょう。年齢を重ねれば突発的なけがや病気により、より医療費がかかってくることも予想されます。
 

離婚後の60代女性の生活

ここまで述べてきたように、今回想定したケースでは、妻は国民年金の受給のみとなります。離婚後2年以内に申請し、3号分割制度を利用すると平均月額が6000円上乗せされはしますが、自分の国民年金と合わせても6万2479円です。
 
一方、60歳以上65歳未満の女性の支出は14万円を超えてきますので、離婚後、妻が老後、年金のみで暮らすことは現実的に考えて難しいと言わざるを得ないでしょう。
 

今からできる対策

ここまで解説してきたことを踏まえた上で、老後に向けた対策として以下を検討してみてはいかがでしょうか?
 
・正社員になれないか、パートからの転職を検討
 
年金の受給額を増やすために、厚生年金に加入できる正社員を目指す道もあります。収入を増やし、家族の家計とは別で老後のために貯蓄しておくのです。日本政府が2013年に施行した「高年齢者雇用安定法」により、年齢を重ねても長く働けるような環境が整いつつあります。年金をもらいつつ働くことで、老後にかかる生活費の不足分を補うようにしましょう。
 
・扶養をはずれ、パートの労働時間を増やす
 
現在のパートの労働時間を増やし、扶養を外れ収入を増やす選択肢もあります。パートでも週の所定労働時間や月額賃金などの必要要件を満たせば、厚生年金を受給可能です。現在の職場を変えることなく収入を増やし、老後のために貯蓄するのです。
 
・年金の繰下げ受給
 
65歳になっても直ぐに年金を受け取らず、66歳以降75歳までの間で繰り下げることで、増額した年金を受け取ることが可能です。繰り下げた期間によって年金額が増額され、その増額率は一生変わりませんので、パートの収入や貯蓄などである程度生活費を補填(ほてん)できるようであれば、年金の繰下げ受給を検討しましょう。
 

まとめ

離婚した場合の妻の経済面について、具体的にシミュレーションしてきました。熟年離婚を検討されている方は今一度現在の状況を見つめ直し、今後の働き方含め、老後の準備を始めましょう。
 

出典

厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和3年度)
日本年金機構 離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)
厚生労働省 高年齢者雇用安定法の改正~「継続雇用制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みの廃止~
厚生労働省 配偶者の扶養の範囲内でお勤めのみなさま(チラシ)
 
執筆者:吉田洋二郎
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