更新日: 2023.11.10 定年・退職

退職金は「2000万円」そのまま受け取れない!? 手取りはいくらになるの? 勤続年数ごとに目安を解説

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部 / 監修 : 高橋庸夫

退職金は「2000万円」そのまま受け取れない!? 手取りはいくらになるの? 勤続年数ごとに目安を解説
退職金がいくらか知らされていた場合、実際に手にした金額を見ると驚くかもしれません。思っていたよりも多くの税金が引かれて、事前に知らされていた金額より少なくなるケースもあるからです。
 
そうなる仕組みを知っていると、額面と差があっても焦らずに済みます。また、事前に手取り額をある程度計算できれば、具体的な用途を早い段階で検討しやすくなるでしょう。
 
そこで本記事では、退職金が2000万円の人を想定し、手取りの求め方や具体的な金額を紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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高橋庸夫

監修:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

手取りを計算する流れ

まず、退職金の支払を受けるときまでに「退職所得の受給に関する申告書」を退職金支払者に提出すれば、適正な退職所得の額と所得税額が計算され源泉徴収が行われ、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと、退職金の収入金額から一律20.42%の所得税及び復興特別所得税が源泉徴収され、確定申告で精算することになることを知っておきましょう。
 
退職金の手取りを求めるには複数の計算が必要です。その流れを2段階に分けてチェックしておきましょう。
 
【1】退職所得の算出
退職金が支払われるとき、所得税や住民税が差し引かれます。それらの税額の計算に用いられるのは退職所得です。退職金から退職所得控除額を引き、それを半分にした金額が退職所得になります。
 
また、勤続年数によって退職所得控除額の求め方が異なり、「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合としていない場合では課税方法が異なる点に注意が必要です。
 
【2】手取りの算出
算出した退職所得に所得税率をかけて、そこから控除額を引くと所得税額を求められます。2037年までは、所得税の2.1%にあたる復興特別所得税も納めなければなりません。住民税は退職所得に所得割の税率10%をかけて計算します。これらの税額を退職金から差し引いた残額が手取りです。
 

勤続年数が20年以下のケース

勤続年数が20年以下なら、退職所得控除は「40万円×勤続年数」で求められます(80万円に満たない場合には80万円)。15年間働いて退職すると仮定した場合、退職所得控除は600万円です。そして、「(退職金2000万円-退職所得控除600万円)÷2=700万円」が退職所得になります。
 
所得税は「退職所得700万円×所得税率23%-控除額63万6000円=97万4000円」で、それに2.1%をかけた2万454円が復興特別所得税です。所得税率は一定ではなく、退職所得の金額によって超過累進税率が適用されます。また、住民税は「退職所得700万円×所得割の税率10%=70万円」です。
 
以上を踏まえると、トータルの課税額は「所得税97万4000円+復興特別所得税2万454円+住民税70万円=169万4454円」と分かります。したがって、手取りは「退職金2000万円-課税額169万4454円=1830万5546円」です。
 

勤続年数が20年超のケース

基本的に、勤続年数が長いほど、課税所得金額が減って手取りは多くなりやすいです。ここでは40年と30年の例を挙げて説明します。
 
・40年
勤続年数が20年を超えている場合、退職所得控除は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」で算出します。40年間働いたと仮定すると、退職所得控除は2200万円となり、退職金を上回るので退職所得は0円です。所得税や住民税がかからず、2000万円をそのまま受け取れます。
 
・30年
勤続年数が30年なら、退職所得控除は「800万円+70万円×(30年-20年)=1500万円」です。この場合の退職所得は「(退職金2000万円-退職所得控除1500万円)÷2=250万円」で求められます。所得税は「退職所得250万円×所得税率10%-控除額9万7500円=15万2500円」で、復興特別所得税はその2.1%の3202円です。
 
また、住民税は「退職所得250万円×所得割の税率10%=25万円」となっています。よって、トータルの課税額は「所得税15万2500円+復興特別所得税3202円+住民税25万円=40万5702円」です。したがって「退職金2000万円-課税額40万5702円=1959万4298円」が手取りになります。
 

手順を覚えて自分でチェックしてみよう!

退職金を一時金として一括で受領した場合、同じ金額の退職金でも、勤続年数によって実際の手取りは変わってきます。
 
税金を予想以上に引かれる人もいれば、額面どおりの金額を受け取れる人もいます。いずれにせよ、定められたルールにのっとって計算されるので、手順を知っていれば自分でも算出が可能です。手取りが正確かどうかチェックするためにも、この機会に手順を覚えておくと良いでしょう。
 

出典

国税庁 退職金と税
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
国税庁 No.2260 所得税の税率
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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