退職金が「1200万円」あります。住宅ローン残債があるなら、一括返済したほうが良いでしょうか? どのようなデメリットがありますか?
配信日: 2023.11.18
本記事では退職金を使って一括返済をするメリット・デメリットについてみていきます。一括返済に向いている人の特徴についても解説するのでぜひ参考にしてください。
執筆者:辻本剛士(つじもと つよし)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士、証券外務員2種
活動拠点は神戸。FP個別相談や、プロスポーツ選手の資産形成サポートも行っております。プロスポーツ選手に保険、資産運用、支出の見直しなど包括的なアドバイスや、帳簿などの面倒な記帳業務を代行し、本業に集中できる環境作りをサポートします。
退職金を使って住宅ローンを一括返済するメリット
退職金を住宅ローンの一括返済に充てる場合のメリットは主に次の2つです。
●毎月の返済がなくなる
●利息負担が軽減される
次項で詳しくみていきましょう。
毎月の返済がなくなる
退職金を使って住宅ローンを一括返済することで、月々の返済がなくなり、家計状況が改善されるでしょう。
定年退職して年金生活になった場合、現役時代よりも大幅に収入が減ることが想定されます。老後における夫婦2人分の標準的な年金額は約22万5000円です。仮に現役時代の月収が50万円の人であれば半分以下に減ることになります。次の条件で住宅ローンを組んだ場合の毎月の返済をみてみましょう。
●年齢:45歳
●住宅ローン:5000万円
●返済期間:35年
●返済方法:元利均等
●金利:1%
この条件で住宅ローンを組んだ場合の毎月の返済額は約14万円です。毎月の年金受給額が22万円5000円として、そこから14万円を差し引かれると、残り8万5000円でやりくりする必要があります。
もし、繰り上げ返済をして住宅ローンを完済すれば、毎月の返済負担14万円がすべて手元に残ることになり、アルバイト等をしなくても老後生活を送りやすくなるでしょう。
利息負担が軽減される
退職金を使って住宅ローンの一括返済をすれば、将来支払う予定だった利息を軽減できます。
特に、固定金利で住宅ローンを組んでいる人は、変動金利よりも利息負担が大きくなりやすいため、一括返済による利息軽減効果が高くなります。変動金利においても利息負担の軽減効果が得られるほか、今後の金利上昇リスクを考慮した場合、一括返済しておくことで精神的な安心にもつながるでしょう。
退職金を使って住宅ローンを一括返済するデメリット
ここからは一括返済するデメリットについてみていきます。
手元の現金が減ってしまう
退職金を使って住宅ローンを一括返済した場合、手元の現金が大幅に減ってしまう可能性があります。急きょまとまったお金が必要になってしまうと、適切に対応できないかもしれません。
例えば、退職金が1200万円あり、住宅ローンの残債が1000万円だとします。退職金1000万円を一括返済に充てることで毎月の家計が改善されますが、退職金の残りが200万円まで減ってしまっては不測の事態に対応できない可能性があるのです。
特に、介護費用や車の買い換え、自宅の修繕が必要になった際などは残り200万円だとすぐに資金が枯渇するかもしれません。
団信の適用が終了する
住宅ローンを一括返済することで、団体信用生命保険(団信)の適用が終了してしまいます。団信とは、住宅ローンの契約者に万一のことが起きた際、住宅ローンの残債がゼロになる保険です。万一の際に住宅ローンの返済がなくなることから、生命保険の代わりとされています。
住宅ローンの一括返済を行うと、それと同時に団信も終了するため、実質的に生命保険の保障が減ってしまったことになります。状況によっては新たに生命保険に加入する必要がでてくるでしょう。
一括返済に向いている人
退職金を一括返済に充てても余剰資金が残る人は、一括返済を検討してみてもよいでしょう。一括返済しても余剰資金があれば不測の事態にも対応できますし、利息軽減のメリットも得られます。
毎月のローン返済がなくなれば家計状況も改善でき、その分を貯蓄や運用、趣味の支出などに回すことが可能になり、安定した老後生活を実現しやすくなるでしょう。
その反対に退職金を一括返済に充てると資金繰りが厳しくなる人は、一括返済をせずに現金を確保しておくか、一括ではなく一部繰り上げ返済をするなどで対応してみてもよいかもしれません。
一括返済するか判断に迷う場合はFPに相談を
退職金で住宅ローンの一括返済を行うことで、毎月の返済負担がなくなり家計状況の改善ができたり、将来の利息負担を軽減できたりします。しかし、その一方で手元資金がなくなり、不測の事態に対応できなくなるリスクが高まるデメリットもあります。
もし、一括返済するか迷っている人は、お金の専門家であるファイナンシャルプランナー(FP)に相談してみるのも選択肢の1つでしょう。
出典
日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について
執筆者:辻本剛士
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士、証券外務員2種