更新日: 2023.12.29 その他老後
実家の両親は「貯金500万円」ですが、持ち家があるから安心だと言っています。「老後は2000万円必要」とも聞きますが、本当に大丈夫でしょうか?
本記事では、貯金500万円で持ち家のある夫妻を例にとり考えてみましょう。
執筆者:老田宗夫(おいだ むねお)
キャリアコンサルタント
老後に見込まれる収入を把握しよう
金融庁の報告書にある2000万円という金額は、公的年金などの収入より生活費などの支出が5万円程多くなるという調査結果からはじきだされています。つまり、老後資金を考える場合は家計の収支バランスを把握することが大切です。
年金はいくら支給されるのか
国民年金や厚生年金保険の受給見込み額は、毎年誕生月に送付されるねんきん定期便か、「ねんきんネット」というWebサイト上で調べられます。
2023年度の老齢厚生年金の満額は、平均的な収入(賞与を含む月額換算で平均標準報酬が43万9000円)で40年間就業した場合に月額22万4482円が夫婦で受け取れます。受給見込み額について詳しく知りたい人は、ねんきんダイヤルなどの相談窓口に問い合わせてみるとよいでしょう。
今後予想される支出を計算してみよう
総務省統計局が実施した「家計調査報告(家計収支編)」の2022年平均結果の概要を見ると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の消費支出は23万6696円で、これに非消費支出を加えた額から実収入を引くと、毎月2万2270円の赤字となっています。
しかし、この統計の消費支出には住居費が1万5578円含まれています。持ち家でローンの返済が済んでおり、月々の住居費がかからないと考えれば、年金支給額である22万4482円内に生活費を抑えることは十分可能になってきます。
医療費・介護費
保健医療費(1万5681円)は、持病があるかないかなど、個人差により増える可能性が高いです。さらに入院しなければならない大病を患ったり、介護を必要とするようになってしまったりした場合は、月々の収入ではまかないきれず、貯金を切り崩すことになります。
医療保険に加入しているのであれば、1度契約している内容の詳細を調べ、どの程度の給付金が得られるのかを把握しておきましょう。
持ち家の修繕費
持ち家がマンションであれば、毎月修繕費の積立を行っているはずですが、戸建ての場合は修繕費に関する月々の支出は発生しません。一方で修繕が必要な事態となった場合、大きな金額が必要になります。
アットホーム株式会社が2023年に実施した調査によると、一戸建て(築年数平均38年)の修繕費の平均総額は約615万円です。修繕したことがある場所の1位は「外壁」で、1回目の修繕時の費用平均は約101万円でした。
また、お風呂やトイレなどの水回りは1回目の修繕時の築年数平均が約22年で、合計費用は約300万円程度かかるため、これらの修繕費を都度確保しておく必要があります。
持ち家はいくらで売却できそうなのか
持ち家は財産です。大きなお金が必要となる有事には、売却して収入を得ることができます。いざという時のために、1度資産価値について調べておきましょう。現在はWebサイトなどでも手軽に不動産の資産価値を調べることができます。可能であれば不動産屋に問い合わせをして、資産価値と合わせてその地区の住宅を買いたい人がどの程度存在しているのかについても、調査しておくとよいでしょう。
有事のシミュレーションは早めに
持ち家が戸建てであれば、500万円ある貯金は家の修繕費でほぼ消えてしまうと考えた方がよさそうです。従って、支給される予定の公的年金の範囲内に、月々の生活費を収めることが大前提となります。
貯蓄だけで老後資金の準備が難しい場合は、支出の見直しや資産運用、持ち家の売却なども検討してみましょう。介護が必要になった場合や大病を患った場合など、有事の際にどのようにお金を工面するか、シミュレーションを行うことが大切です。
出典
日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要
アットホーム株式会社 2023年『一戸建て修繕』の実態調査
執筆者:老田宗夫
キャリアコンサルタント