更新日: 2024.03.26 セカンドライフ
60歳の夫が、退職金で「トヨタの86」を買いたいと言っています。貯金が「3000万円」あり、年金も2人で「月20万円」なのですが、本当に信じても大丈夫でしょうか? 老後の蓄えが減るのが不安です…
本記事では、60歳で車好きの夫が「退職金で夢だったトヨタの86を買いたい。老後は退職金を含めた貯金3000万円と毎月20万円もらえる年金でやり繰りすれば問題ない」と言ってきたら信じても問題ないのか解説します。
今回は60歳で定年退職してその後年金以外の収入はなく、年金は繰上げ受給せず通常通り65歳から受け取るものとします。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
トヨタの86を買うのに必要な金額は350万円以上?
今回は、トヨタ「GR86」の新車を現金一括で購入すると仮定します。86には複数の価格・グレードが存在し、現時点で価格は300万円から350万円程度となっています。
例えば、AT車である「SZ 6速オートマチック(6 Super ECT)」の本体価格は325万1000円で、オプションをつけずにウェブ見積もりをすると税金や諸費用込みで合計350万円程度かかります。
車は本体を購入すればそれで終わるわけではなく、安全に乗るためには維持費がかかります。ソニー損保の「2023年全国カーライフ実態調査」によると、1ヶ月あたりの車の維持費の全体平均額は1万3500円となっています。ただし、これらには自動車税やローン返済、高速道路通行料などは含まれていません。
また、それぞれの相場は車種やグレード、住む地域などによって大きく異なることがあります。例えば、駐車場代は3000円程度で借りられる場所もあれば3万円程度出さなければならないこともあります。仮に、毎月の駐車場代が3万円かかる場合は、車の維持費だけで5万円近くかかるかもしれません。
老後生活は夫婦2人で毎月30万円以上かかる?
60歳時点で退職金を含めた貯金は3000万円ありますが、年金は65歳から受け取り始めるため「5年間は無収入」で生活しなければなりません。
老後の生活費はいくらかかるのかについては、総務省統計局が家計調査報告(家計収支編)で公表しており、2023年の「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の実支出は28万2497円です。つまり毎月30万円近くの支出が発生することが分かります。
これは通常の生活で必要な金額であり、例えば急に大きな病気やけがをして長期間の通院や入院が必要となるなど、不測の事態が発生すると支出規模はさらに膨らむ可能性があります。これらを総合的に考慮すると、場合によっては平均30万円以上の支出が発生するかもしれません。
毎月30万円かかる場合、家計への影響はどうなる?
60歳時点で「SZ 6速オートマチック(6 Super ECT)」の新車を一括購入して、車の維持費は月額3万円かかり続けるとします。そのうえで、夫婦2人で毎月30万円の生活費がかかる場合、今後の家計はどうなる可能性があるのか考えてみます。
初年度は車だけで本体と維持費込みで約386万円です。年金やその他の収入もないため通常の生活費も360万円の赤字です。不足分は貯金から補填すると、初年度のみで残額は2254万円まで減少します。65歳まで全額貯金を切り崩す場合は、年金をもらい始める頃には670万円まで減ってしまう計算です。
65歳から夫婦合わせて毎月20万円の年金を受け取り始めても、赤字額は少なくなるもののゼロになるわけではありません。生活費と車の維持費で年間156万円の赤字となり、もともと3000万円あった貯金は70歳を迎える前に底をついてしまいます。
年金収入に依存しないことが重要
現在は80歳を過ぎて100歳まで長生きする人が少なくありません。厚生労働省が公表しているデータでも、2022年の平均寿命は男性が約81歳、女性は約87歳となっています。もし85歳まで生きる場合、70歳で資金がなくなると残り15年間の生活費をどうするのかを考えなければなりません。
今まで仕事を頑張ったご褒美に退職金で車などを購入すること自体は決して悪いことではありませんが、家計へ影響を与えるのは事実なので、老後もできる限り働いて年金収入に依存しない形をとることが重要といえるでしょう。
まとめ
本記事では、「貯金3000万円」あれば、自分へのご褒美に車を買っても問題ないのか解説しました。たとえ貯金が数千万円あっても「老後は安泰」とは限りません。想像以上のスピードで資金がなくなる可能性もあるとの前提で対策することをおすすめします。
出典
トヨタ自動車株式会社 GR86 価格・グレード
ソニー損害保険株式会社 2023年全国カーライフ実態調査
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要
厚生労働省 令和4年簡易生命表の概況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー