更新日: 2024.10.24 介護
妹がいますが仲が悪いです。一人暮らしの母が認知症になり、母の資産管理について話し合っても妹ともめてしまいます。母の資産はどう管理すべきですか?
執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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火種が大きな問題にならないよう外部に委託
兄弟姉妹の間で、親のお金の管理に関わるもめごとはささいなことから大きな火種になることがあります。仮に良好な関係であっても、誰かが代表で管理するとなると、任せているほうは疑心暗鬼になったり、管理している人は「自分だけが……」という気持ちが湧いてきたりと、どちらになってももめる原因を作ってしまいがちです。
手数料はかかりますが、兄弟姉妹間の良好な関係維持と、手間を考えて、外部に委託するのが望ましいと思われます。
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親の住まいの社会福祉協議会に相談
おすすめは、親の住所地の社会福祉協議会に相談することです。社会福祉権利擁護事業(あんしん事業と呼ばれている場合もあります)として「お金の管理」をしてくれます。
地域によって異なりますが、通帳や印鑑の管理、あらかじめ決めた一定額の生活費の払い戻し、医療費や公共料金の支払い代行などのサービスを提供しています。
料金も各地域によって決まっていますが、支払い代行であれば1時間あたり1000円~1500円、通帳などの書類預かりでは1ヶ月あたり1000円などと設定されています(港区社会福祉協議会、世田谷区社会福祉協議会のホームページより抜粋)。
認知症が進行したら成年後見制度の利用に移行
自分で契約等の手続きや財産管理ができなくなり、あんしん事業の範囲を超えた支援が必要になった場合は、成年後見制度への移行を検討しましょう。家庭裁判所が選任した成年後見人等が、家庭裁判所の監督のもと、財産を管理します。
●預貯金の通帳、そのほかの財産管理
●有価証券などの管理
●預貯金口座の開設・預入・払戻・解約
●公共料金・介護保険料・国民健康保険料・生活・療養に必要な支払い
●税金の申告
●不動産の管理・処分・契約など
表1のとおり、料金はあんしん事業に比べて割高にはなりますが、より幅広く専門家が管理してくれるので、もめごとが起こる余地はなくなります。
【表1】
まとめ:費用がかかっても当事者間で誰かが行うことは避ける
筆者のご相談者の中で、一人息子という方もいらっしゃいました。母親の夫は何年も前に他界していて彼以外に相続人はいないのは明らかで、争う余地もありませんでした。
しかし、母親が一人で住んでいる住宅の改修の費用を母親の口座から引き出すタイミングと施設入所するタイミングが重なり、引き出した金額と利用目的の不一致を指摘されました。彼は、「母親の財産は将来的には全額自分が相続する」ことが明らかでしたが、結局成年後見人制度を利用しました。
兄弟姉妹がいない場合でも、「これくらいは当然だ」と素人感覚で解釈すると、後々面倒なことになります。まして兄弟姉妹がいる場合はなおさらです。認知症高齢者数が増えるにつれて、こうした問題は深刻になっていますので、迷わず外部機関に相談することをおすすめします。
出典
港区社会福祉協議会 福祉サービス利用援助事業(地域福祉権利擁護事業)
世田谷区社会福祉協議会ホームページ
東京家庭裁判所 成年後見人等の報酬額のめやす
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者