「健康状態」から考える老後資金
配信日: 2019.04.06 更新日: 2020.04.07
老後資金をネットで検索すると「3000万円」「1億円」などの金額が表示されることから、その金額を見て、さらに不安・心配になってしまうなんてことも。その結果、老後資金を考えるときには、金額や準備などに注目しがちです。
老後資金を考えるうえで金額や準備などは大切です。ですが今回は、老後資金をちょっと違った観点である「健康状態」から考えてみたいと思います。
執筆者:中田真(なかだ まこと)
CFP(R)認定者、終活アドバイザー
中田FP事務所 代表
NPO法人ら・し・さ 正会員
株式会社ユーキャン ファイナンシャルプランナー(FP)講座 講師
給与明細は「手取り額しか見ない」普通のサラリーマンだったが、お金の知識のなさに漠然とした不安を感じたことから、CFP(R)資格を取得。
現在、終活・介護・高齢期の生活資金の準備や使い方のテーマを中心に、個別相談、セミナー講師、執筆などで活動中。
https://nakada-fp.com/
自分でコントロールするのが難しい「健康状態」
老後資金が不安・心配だと思う主な理由の1つに「老後の生活費」が挙げられます。
たとえば、年金は本当にもらえるのか、年金だけで生活できるのか、老後を迎えるまでに老後資金はどのくらい準備できるのか、住宅ローンが残っているけど大丈夫なのか……など、老後資金に対する不安・心配は尽きません。
ただし、生活費については、ある程度、事前に計画を立てられますし、必要に応じて家計の見直しをすることで、生活費を改善できる可能性はあります。
要するに、生活費はある程度、自分でコントロールできるということです。
では、健康状態はどうでしょうか?
健康状態を自分でコントロールするのは難しいですし、高齢になればなるほど、自分でコントロールすることが困難になっていきます。そして、健康状態によって決まる医療費や介護費などは、高齢期の生活費への影響がとても大きいのです。
確かに、医療費や介護費などは、公的な健康保険や介護保険で、ある程度カバーできます。また、健康保険には、医療費の自己負担分に対して一定の上限を設ける高額療養費制度、介護保険には、同じ月に一定の上限を超えたときに申請をすると「高額介護サービス費」として払い戻される制度があります。
ただし、高齢になればなるほど、治療・介護の期間長期化や回数増加の傾向がありますので、健康状態が保てないと、結果的に高齢期の医療費や介護費の負担は大きくなってしまいます。
今後は、公的な健康保険や介護保険の自己負担割合(特に高齢者の自己負担割合)が大きくなることも予想されますので、老後資金を考えるうえで健康状態を保つことは、ますます重要になるのではないでしょうか。
予防意識が大切
老齢による身体の衰えは自然現象であり、老化に起因する病気も多いのが現状です。その一方で、高齢になっても元気で自立した生活を送るには、現役時代から健康や病気への予防意識を高めることが重要であり、それが健康状態を保つことにつながります。
健康状態を保つことができれば、高齢期の医療費や介護費の負担を減らせたり、老後資金の不足に対しても「働いて賃金を得る」という選択をすることができるなど、老後資金を減らす速度を遅くできる可能性があります。
現役時代から老後資金について考える(予防する)ことも重要ですが、健康や病気への予防意識の高さが、結果的に老後資金に対する不安・心配を軽減してくれるかもしれません。
執筆者:中田真(なかだ まこと)
CFP(R)認定者、終活アドバイザー