定年退職で力発揮する雇用保険の「高年齢求職者給付金」と「求職者給付」
配信日: 2019.08.02 更新日: 2020.04.07
今回は定年退職を迎えるにあたり、力を発揮する雇用保険の「高年齢求職者給付金」と「求職者給付」について説明させていただきます。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。
高年齢求職者給付金とは?
64歳までの雇用保険の一般被保険者が失業や退職などで離職した場合、一般に「基本手当」や「失業手当」と呼ばれる求職者給付の対象となります。
しかし、年齢が65歳以上などの高年齢被保険者が離職した場合は、雇用保険から受け取ることができる給付金の種類が異なります。つまり、65歳未満に離職した場合は求職者給付などの対象となり、65歳以上になって離職した場合は高年齢求職者給付金の対象となります。
2つの制度の大きな違いは給付金に現れます。求職者給付の場合は基本手当日額( 離職前6ヶ月分の賃金総額を180で除したもの)の45%~80%(60~64歳の場合)が所定給付日数分を28日経過ごとに給付されます。
定年退職の場合の所定給付日数は、雇用保険に加入していた期間で決まります。1年以上10年未満では90日、10年以上20年未満では120日、20年以上では150日となります。
高年齢求職者給付金の場合は被保険者期間が1年未満では給付日額×30日分、1年以上では給付日額×50日分を一時金として受け取ることができます。
また、どちらの給付金も「求職者」への給付金であるため、求職活動が必要となります。高年齢求職者給付金は離職の日の翌日から1年を経過するまでの間にハローワークで求職の申し込みをした場合に、給付を受けることができます。
高年齢求職者給付金と求職者給付 ~給付額はいくら違うのか?~
少し複雑になってきましたので、1ヶ月の平均給与額が35万円で算定基礎期間が20年以上の場合、それぞれの給付額はどのくらい違うのかを試算してみたいと思います。
<65歳到達前に離職し求職者給付を受ける場合>
基本手当日額:35万円×6ヶ月÷180×45%=5250円
給付総額:5250円×150日=78万7500円
<65歳到達後に離職し高年齢求職者給付金を受ける場合>
基本手当日額:35万円×6ヶ月÷180=1万1667円
給付総額:1万1667円×50日=58万3350円
給付総額だけを見ると求職者給付の方が有利となりますが、給付の方法が一時金か否かで異なります。この他に注意が必要なのが、雇用保険の被保険者の期間(算定基礎期間)の考え方です。
雇用保険の算定基礎期間は、離職から1年が経過するか基本手当などの給付を受けた場合にリセットされてしまうため、短い期間に複数の給付金を受けようとする場合はご留意ください。
まとめ
平均寿命の延伸とともに、定年退職後も体が動く限り働き続けたいというニーズが高まっています。高年齢求職者給付金と求職者給付はどちらも求職時には心強い制度ですが、雇用保険の被保険者の年齢が65歳に到達しているか否かで利用できる給付金制度が異なります。
65歳到達前に利用できる求職者給付は、給付総額は多いですが28日経過ごとにハローワークに行き、失業認定申告書等を提出し失業の認定を受けるといった手続き上の手間もあります。
高年齢求職者給付金は金額こそ少なくなってしまいますが、離職後翌日から1年以内に求職の申請を行うことによって全額が一時金で給付されます。それぞれの給付金の対象となる要件と給付金の性質を留意し、趣意に沿った制度を選択することが大切です。
ただし、本制度は、あくまでも求職者への給付金となります。
実際には行っていない求職活動を失業認定申告書へ記載したり、就労の意思や就労できる環境や身体状態でないのに給付を受けたり、受給終了直後に年金受給を受けたりしようと考えている場合などは不正受給の典型となりますのでご注意ください。
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表