更新日: 2020.10.01 セカンドライフ

「おひとりさま」の家計とは? 老後対策はどうすればよい?

執筆者 : 岩永真理

「おひとりさま」の家計とは? 老後対策はどうすればよい?
暮らし方や働き方が多様化する中で、「おひとりさま」と呼ばれる独身の男女が増えています。1人で楽しく過ごしている間は不安がなくても、将来そのまま1人で過ごすにはどんな備えが必要なのか、老後の準備はお金以外にも何かあるのか気になるところです。
 
一般的な「おひとりさま」がいくらくらい貯蓄をしていて、今後どんな展開が予想されるのか、そしてどう対策を打つべきかを考えてみましょう。
岩永真理

執筆者:岩永真理(いわなが まり)

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/

「おひとりさま」の貯蓄額

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和元年)」によると、単身世帯が将来に備えているお金の平均金額は1095万円です。
 
ただし、中央値(調査対象を少ない順に並べたときに真ん中に位置する金額)は300 万円です。平均金額と中央値が大きく離れているため、たくさん持っている人と持っていない人の差が大きいことがわかります。
 
年代別に見ると、調査対象年齢の20代から年代が上がるに従い、将来に備えているお金の金額も増えていき、60代(平均金額1930万円、中央値845万円)がピークになります。その後はリタイアして年金生活になると、収入は年金のみになることが多いので、貯蓄を取り崩して生活するケースが増えると考えられます。
 

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現役時代の収支はいくら?

総務省「家計調査報告(家計収支編)2019(令和元)年 平均結果の概要」によると、単身世帯(平均年齢59.0歳)の消費支出は、1カ月平均16万3781円です。
 
ただし、この中に含まれる住居費は1カ月2万円程度なので、実家などに住んでいることなどが考えられます。住宅を購入して住宅ローンを支払っていたり、賃貸住宅に住んでいたりすれば、1カ月2万円以上の支出が見込まれるでしょう。
 
一方、単身世帯の勤労者世帯(平均年齢43.7歳)の税金などを引いた可処分所得は、1カ月平均28万1436円です。
 
平均から単純に計算すると、現役時代の1カ月の収支は、収入28万1436円-支出16万3781円=11万7655円の黒字になる計算です。
 
1年にすると、理論的には140万円程度の貯蓄ができる見込みです。臨時出費などを想定して、1年で100万円程度の貯蓄はできる可能性があると考えられます。ただし、前述のように住居費に関しては、各自実態に即して計算すべき点には注意が必要です。
 
収入は年齢により増減がありますが、仮に22歳で就職して60歳までの38年間働くとして、例えば収入が安定する25歳から60歳までの35年間に、毎年一律100万円の貯蓄をすると、合計貯蓄額は3500万円になります。
 
前述の金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和元年)」による、60代の将来に備えているお金の平均額1930万円、中央値845万円を考えると、実際にコツコツ貯蓄をしていくことは容易ではないかもしれません。
 

老後の収支は?

では、リタイア後の収支はどうなるのでしょうか。生活費は必須ですが、それに加えて医療介護費用やその他の費用が必要となる場合があるでしょう。

<生活費>

総務省「家計調査報告(家計収支編)2019(令和元)年平均結果の概要」によれば、高齢(60歳以上)単身無職世帯の1カ月の家計収支は、消費支出が平均13万9739円(うち住居費1万2916円)、可処分所得は平均11万2649円ですので、毎月2万7090円(11万2649円-13万9739円)が赤字になっています。住居費が持ち家などでない場合は、さらに家賃などの支出が見込まれます。
 
上記平均値で90歳まで生きると仮定すると、60歳から90歳までの30年間で、975万2400円(月額赤字2万7090円×12月×30年)の貯蓄を取り崩していくことになります。
 
もし、現役時代から60歳までに3500万円の準備ができていれば、60歳以降で不足する975万2400円を貯蓄から切り崩して老後の生活をしても、2524万7600円が手元に残る計算になります。60歳時の準備資金が平均値の1930万円あれば、954万7600円が手元に残ります。

<医療介護費用>

医療介護費用については個人差が大きいため、皆が必ずこの費用が必要とはいえませんので、あくまでも参考値です。医療介護費の目安は、高額介護合算療養費合算制度です。医療保険と介護保険の両方を利用した場合に、自己負担の合算限度額を超えた場合は、超えた分がそれぞれの保険から支給される制度です。
 
例えば、70歳以上で現役並み所得I(標準報酬月額28万円~50万円)の人の場合、高額介護合算療養費の1年間の自己負担限度額は現行では67万円です。70歳から90歳まで介護医療費用の上限額の67万円がかかると仮定し、20年間負担すると、67万円×20年間=1340万円になります。
 
■60歳時の貯蓄が3500万円の人
生活費を除いた2524万円の中から、1340万円を融通することができそうです。
 
■60歳時の貯蓄が平均値(1930万円)の人
生活費を除いた954万円の残高では、1340万円に満たないため、医療介護費用が足りなくなる可能性があります。

<その他>

上記平均の収支計算例では、現役時代から実家などの持ち家に住んでいることが前提でした。ですので、実家の老朽化に伴いリフォームなどの費用が必要になると考えられます。
リフォームなどで利用できる費用は、生活費と医療介護費用を引いた残りの金額ということになります。
 
■60歳時の貯蓄が3500万円の人
3500万円-生活費975万2400円-医療介護費用1340万円=1184万7600円となり、1184万7600円がリフォームに使えるお金になります。
 
■60歳時の貯蓄額が平均値(1930万円)の人
生活費として取り崩す金額975万2400円と、医療介護費用1340万円の合計が2315万円程度となり、貯蓄額の1930万円を上回るため、医療介護費用が途中で不足する可能性があります。70歳以上でも健康を維持し、医療介護費用がかからなければ、その分を実家リフォーム代に充当できます。
 

お金以外に必要なことの対策は?

使うお金を準備できたとしても、高齢時に自分で自分のお金を実際に使える健康状態にあるかどうかです。病気やけがをしてしまうと、自分の口座からお金を引き出すことも振り込むこともできなくなってしまうかもしれません。
 
信頼できる人と信託契約を結んで管理してもらう手続きをする、早めに財産を処分して民間の有料老人ホームへ入る、などの対策が必要かもしれません。どちらも金銭的な負担を別途伴いますので、確認しておくとよいでしょう。
 

まとめ

自分に万一のことがあったときには、貯蓄を使いきる前に亡くなることもあり得ないわけではありません。そうした際にも、誰に財産を託すのか遺言などを残す必要もあるかもしれません。
 
「おひとりさま」で大切なのは、自分でできなくなったときにやってもらうための「お金」はもちろんですが、いざという時に頼れる「人脈」も大切でしょう。
 
兄弟姉妹、親戚、友人、知人などとも良好な関係を保っておくとよいかもしれません。また、国や地域のサービスでどんなことができるのか、自分が必要なサービスはどんなことなのか等の「情報」を早めに収集しておくと安心です。
 
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士