「おひとりさま」の老後のお金、不安を減らすためにどう備える?
配信日: 2020.01.09
執筆者:蟹山淳子(かにやま・じゅんこ)
CFP(R)認定者
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。
「おひとりさま」の老後の生活に必要なお金
総務省『家計調査報告(家計収支編)2018年』によると、60歳以上で無職の一人暮らし世帯の収支は可処分所得が月額11万933円、それに対して消費支出が月額14万9603円ということです。
毎月3万8670円、1年では46万4040円の赤字ですから、貯蓄しておきたいということになります。例えば、老後を65歳から95歳の30年と想定すると約1400万円の貯蓄が必要です。
ただし、この金額はあくまで平均値で、年金をいくらもらえるのか、生活にいくらかかるのかは人それぞれ異なります。自分の場合はどのくらいの貯蓄が目標なのか、試算をしてみましょう。そのためには、収入と支出がそれぞれどのくらいかを把握しなければなりません。
まず、老後の収入は年金だけという人も多いでしょう。年金の見込額は「ねんきんネット」で試算できます。50歳以降の人なら年金定期便に「このまま60歳まで働き続けたらこのくらい」という見込額が表示されています。また、老後の生活費は現在の生活費から「老後はこのくらいあれば生活できるかも」の金額を考えましょう。
まずは、現在の年間支出を把握することから始めなくてはなりません。できれば、家計簿アプリなどを使ってリアルな支出額を把握したいのですが、昨年1年間の収入(税・社会保険料を除く)と貯蓄の増加額を比べて差額を1年間の支出額と考えることもできます。
そこから老後の生活費の予想額を設定しましょう。でも、どうしても面倒なら、自分で考えた「このくらいかな」の予想額でも構いません。
老後の住まいをどうするか
老後に必要なお金を予想するのに住まいの問題が関わってきます。持ち家か賃貸かで費用は大きく変わります。老後にどこで暮らすか決めていないという人も多いと思いますが、その場合も複数のプランを想定して住まいにかかる費用を考えてみましょう。
賃貸の場合は家賃を生活費に組み込んでおかねばなりません。もちろん、お金の不安を感じてきたら家賃が安い物件に移り住むこともできます。
持ち家なら家賃はかかりませんが、固定資産税やリフォーム費用、マンションなら管理費や修繕積立金も生活費に含めておきましょう。老後も住宅ローン返済が続く人はそれも考えておかなければなりません。ただ、持ち家ならいざというときに売却する、賃貸にするなどして資金を得られるメリットもあります。
介護費用はどのくらい必要?
将来、自分に介護が必要になるかどうかは分かりません。しかし「おひとりさま」だからこそ、介護になった場合にどのくらいのお金がかかるのかも気になるところです。
介護費用はまったく必要のない人もいますし、かかる場合もかなりばらつきがあります。いくらあれば安心という金額は出しにくいのですが、一応平均額を押さえておきましょう。
生命保険文化センターが介護経験のある人に行った調査によれば、介護費用は家のリフォームや介護ベッドの購入など一時的な費用が平均69万円、月々の費用が7.8万円ということです。介護期間は平均54.5ヶ月(4年7ヶ月)ですから、総額では495万円ということになります。
老後に必要なお金を計算してみると
例えば、年金が毎月12万円、生活費が18万円なら年に72万円、30年で2160万円の赤字です。持ち家で65歳時に住宅ローン返済がまだ300万円残っていて、介護費用として500万円を用意しておきたいと考えれば、老後のために準備しておきたい金額の合計は2960万円です。
計算してみると思ったより多くの資金が必要で、不安が大きくなってしまう人もいるかもしれません。しかし、しっかり対策を考えれば不安は減るはずです。
1つ目の対策は収入を増やすこと。まず、定年後も再雇用や転職などで働き続けることができれば、老後の収支は改善します。
2つ目は支出を減らすことです。例えば、現在は外食が多い人もリタイアしたら自炊する生活に変えれば食費も減りますし、交際費や趣味の費用も見直したいところです。
上記の例で、今考えているより3年長く、月10万円で働けば360万円の収入増なので、老後のために準備したい金額は2600万円です。さらに生活費を月2万円減らせば必要な金額は720万円減って、1880万円。退職金を受け取ることを計算に入れれば、貯蓄で準備しておきたい金額はもっと減ります。
ちなみに
老後に必要なお金を準備することは大切ですが、年金などの収入や貯蓄に生活のサイズを合わせるよう検討するのも1つです。基本的に生活費は年金だけで賄うことにして、貯蓄を趣味や交際費などに充てるようにすれば、長生きしても生活費が底をつく心配は減ります。
また、お金の準備だけでなく介護と無縁で過ごしていけるような生活スタイルを心掛けたり、老後もお付き合いを続けていける人的ネットワークを築いたりしていくことも、老後の準備として併せて考えていきたいものです。
執筆者:蟹山淳子
CFP(R)認定者