個人事業主や小規模事業者の方向けの退職金制度「小規模企業共済」って?
配信日: 2020.12.10
執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)
田久保誠行政書士事務所代表
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員
行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。
小規模企業共済制度とは、その特徴は
小規模企業共済制度は、小規模企業の個人事業主、共同経営者または会社等の役員が個人事業主の廃業、個人事業主の廃業に伴う共同経営者の退任、疾病・負傷による共同経営者の退任、会社等の解散、会社等の役員の疾病・負傷・老齢による退任をした場合等、第一線を退いたときの生活の安定または事業の再建等を図る資金を、あらかじめ準備しておくための共済制度です。
- ★1. 共済金は個人事業主の廃業、会社等の解散、会社等の役員の疾病・負傷・65歳以上による退任等の場合に受け取れます。
- ★2. 掛金月額は、1000円~7万円の範囲(500円単位)で自由に金額を選択できます。また、加入後いつでも金額の変更が可能です。また、支払い方法は月払い・半年払い・年払いがあります。
- ★3. 一定の資格を有する方は、納付した掛金の範囲内で、担保・保証人は不要での貸付制度を利用できます。
- ★4.共済金の受給権は差押禁止ですので安心です。
- ★5.契約者本人が亡くなると親族が共済金を受け取ることになります(みなし相続財産)。
加入資格は
「小規模企業共済」の名のとおり、小規模事業者の個人事業主または会社の役員の方が主な資格対象者です。
ただし、配偶者等の事業専従者、直接営利を目的としない法人の役員等、アパート経営等の事業を兼業している給与所得者、学業を本業とする全日制高校生等には加入資格はありません。
加入のメリットは
繰り返しますが、共済金は経営者にとっての退職金と同じものです。税法上も受取方法が「一括受取り」の場合は退職所得扱いになり、掛けた年数に応じて控除額が増えます。
同じく「分割受取り」の場合は、公的年金等の雑所得扱いなります。また「一括受取りと分割受取りの併用」も選択できます。掛金も全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となります(事業上の損金または必要経費には算入できません)。
また、所得がなく掛金の納付が著しく困難なときや、災害に遭遇し、または入院しているため掛金の納付が著しく困難なときは、掛金の納付を一定期間(半年または1年)停止できます。
貸付制度は、事故や病気で入院したり、災害等で被害を受けたりしたとき、事業の多角化や事業承継、廃業準備などのときも借入れできます。さらに、新型コロナウイルス感染症のように急激に経済環境が悪化し、資金繰りが困難になったときも融資を申し込むことが可能です。
解約に関しても6カ月を過ぎれば可能です(ただし、契約期間によっては手取り額が掛金合計額を下回る場合もあります)。メリットではありませんが、契約者本人が亡くなると親族が共済金を受け取る場合の第一順位者は配偶者となっていますが、その場合の配偶者には内縁関係者も含まれるという点があります。
節税だけではなく、将来への備えと考えましょう
節税だけですと、ふるさと納税やiDeCo、NISAなどもありますが、人生100年時代において、3大支出の1つである老後資金は避けて通れません。
個人事業主や会社経営者の方が生涯現役を掲げても、歳を取るにつれ無理ができなくなったり、けがや病気で仕事ができなくなったりするリスクは考えておかなければなりません。そのようなとき、ご自身で退職金を積み立てているだけでも、お金に対する不安は解消するのではないでしょうか。
(参考)中小機構「小規模企業共済制度のしおり」
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表