更新日: 2023.08.15 その他暮らし
会社を辞めて独立したら、個人事業 or 法人事業はどちらがお得?
組織に縛られるのが嫌であったり、起業して一獲千金を狙ったり、定年後の生きがいを追求したりするなど、さまざまな目的で脱サラをして起業する方がいらっしゃると思います。
今回は、そういった脱サラをした人が、事業を始めるにあたって個人事業主として独立したら良いのか、法人として事業を開始したら良いのかについて考えてみたいと思います。
執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
利益が増えるまでは、個人事業主で青色申告が無難
事業を開始したばかりで、利益が計画通りに出るまでは個人事業主として開業し、青色申告をするのがオーソドックスなやり方です。
なぜならば、後ほど詳しく述べますが、利益が小さい場合は、法人所得税の税率と比べて個人事業主が支払う所得税の税率は低く、青色申告制度を活用した方が税制面で有利だからです。申告制度には、白色申告と青色申告の2つがありますが、税制面で有利な青色申告制度について見てみましょう。
■青色申告の承認申請手続き
青色申告制度を活用するには、青色申告の承認を受けようとする年の3月15日までに、「青色申告の承認申請書」を所轄の税務署長に提出する必要があります。
ただし、その年の1月16日以降に新規開業をした場合には、その業務を開始した日から2ヶ月以内に青色申告の承認申請書を提出すれば、その年から青色申告制度を活用することができます。
■青色申告の主な特典
1、家族の給与を必要経費にすることが可能
青色申告者と生計を一にしている配偶者やその他の親族のうち15歳以上ので、専らその事業に従事している者に対して給与を支払うことを所轄税務署長に届け出た場合には、その親族が働いた給与として相当と認められる金額は、その事業主の必要経費とすることができます。
つまり、必要な要件を満たせば、事業を手伝っている家族の給与を必要経費にできるメリットがあるのです。
2、純損失の繰越控除および繰越還付が可能
その年の所得金額において、損益通算をしてもなお相殺できない損失が生じた場合には、翌年以降3年間繰り越すことができます。あるいは、繰越控除に代えて繰戻還付の適用を受けることができます。
3、特別控除が受けられる
確定申告時に、正規の簿記の原則に従った帳簿書類に基づき作成した貸借対照表や損益計算書などの明細書を添付するなど、一定の要件を満たした場合には、65万円の特別控除を受けることができます。
また、一定の要件を満たさない場合でも、10万円の特別控除を受けることができます。ただし、いずれの場合でも赤字の場合は、適用はありません。
利益が伸びてきたら法人化も視野に
■個人事業と法人事業の税率の違い
個人事業の場合は、超過累進課税が適用され、所得が増えれば増えるほど税率が上がり、5%から最大で45%の所得税がかかります。一方で、法人化すれば、法人税は原則23.2%で一定になります。
したがって、所得が低い場合は、個人事業主の方が税制面で得になりますが、所得が増えて税率が高くなると、法人化した方が特になります。
なお、法人税率は、中小法人の所得で年800万円以下の部分は15%または19%、800万円を超える部分は23.2%、中小法人以外の場合は、23.2%です。年間の所得が500万円を超えたら法人化を検討しても良いと言われています。
■法人化のメリットとデメリット
所得が増えたら法人化すると税制面でメリットが出てきますが、その他にも、株式会社・合同会社なら有限責任(会社の債務は、出資者には及ばない)であるとか、信用力が上がるなど法人化によるメリットがあります。
一方、社会保険料の負担や、会計、事務手続きが増えるなどのデメリットもあります。また、法人を設立するのに20万円強の費用もかかりますので、法人化にあたっては、税理士等の専門家に相談する方が無難でしょう。
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー