障害年金ヒント集(6) 初診日の悩みをスルーする同時請求
配信日: 2021.04.14
しかし、取り組み方をちょっと変えると、うまくハードルを越えられる場合もあります。悩んでいる人たちへの受給のためのヒント集です。第6回は「初診日の悩みをスルーする同時請求」です。
執筆者:和田隆(わだ たかし)
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。
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重要な初診日の確定
障害年金を受給できるかどうかの重要な要素である初診日。その初診日が今ひとつはっきりせず、年金事務所や社会保険労務士などの専門家にたずねても、人によってアドバイスの内容が異なるときは、困ってしまうことでしょう。
しかし、もしも「厚生年金保険に加入していたこのときか、国民年金だったこのとき」と初診日の候補が2つに絞られているのなら、思い切って、それぞれを初診日とした2つの裁定請求を同時に行う方法があります。「同時請求」と呼ばれます。
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初診日の確定は、なかなか難しい作業
障害年金の請求手続きでは、初診日を確定させることがスタートラインです。初診日によって、保険料の納付要件をはじめ、障害認定日、受給する年金の種類、その年金額などが決まるからです。ところが、実際には、初診日を確定させることはなかなか大変です。
傷病の症状が次々に変わる場合は、前の症状と後の症状の因果関係の判断が主治医と認定医によって変わることがありますし、治療を数年間受けなくても、普通に社会生活ができたときに適用できる社会的治癒の考え方を取り入れると、初診日が大きく変わってきます。
さらに、線維筋痛症や慢性疲労症候群などの難病のように、確定診断のあった日を初診日にするという日本年金機構の最近の取り扱いを考慮すると、ますます難しくなります。
正式に認められた「同時請求」
そこで、同時請求となるのです。
同時請求は、かつては年金事務所によって受け付けられたり、拒否されたりしました。しかし、同時請求の正当性を主張する声が徐々に大きくなったこともあって、同機構が2016年4月に作成した職員向けの「国民年金・厚生年金保険障害給付(障害厚生)受付・点検事務の手引き」で、同時請求を正式に認めました。
この手引きには「年金請求書の受付・点検」の欄に「同時請求」という項目が設けられ、「障害厚生年金と同時請求している年金がある場合には、請求書名の下に『〇〇年金同時請求』と朱書してください。同時請求している年金が障害基礎年金の場合は、審査終了後、決定(入力)前に機構本部障害年金業務部障害年金第2グループまでご連絡ください」と書かれています。
「同時請求」の長所はいろいろ
同時請求の長所は、次のとおりです。
【1】どちらか認定されたほうの障害年金を受給しながら、もう一方の裁定請求での不支給決定や下位等級決定について不服申し立てができます。裁定請求では、審査の途中で日本年金機構から初診日を変更するように提案される場合がありますが、単独の裁定請求だった場合は、この提案を受け入れてしまうと、後から不服申し立てができません。
【2】不支給決定の後、再度、別の初診日で再請求をすることも可能ですが、その請求が認められても、支給開始時期が数カ月遅くなり、それだけ年金の受給額が少なくなります。また、もしも再請求までに65歳に達してしまうと、事後重症請求ができなくなります。これらを防止する効果もあります。
短所もあるが……
一方、同時請求には短所があります。受診状況等証明書や診断書などの添付書類を各2点入手しなければならず、経費と手間がかかることです。病歴・就労状況等申立書も2点作成する必要があります。同時請求は、2つの請求を別々の請求とみなされるからです。
ただし、こうした書類も、パソコンなどで作成すれば共通部分を利用できるので、比較的に少しの手間で作成できると思われます。
短所もある同時請求ですが、初診日の確定作業には、多くの苦労が伴います。それをスルーすることができる効果は、かなり大きいといえるのではないでしょうか。
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士