最終更新日: 2021.04.14 公開日: 2021.04.17
年金

障害年金ヒント集(8) 障害認定日が前倒しになる「特例」

執筆者 : 和田隆

年金の相談を受けていると、「障害年金をもらいたい。でも、ハードルが高くて…」と悩んでいらっしゃる人がたくさんいることが分かります。確かに、障害年金を受給するには、いくつものハードルがあります。しかし、取り組み方をちょっと変えると、うまくハードルを越えられる場合もあります。
 
悩んでいる人たちへの受給のためのヒント集です。第8回は「障害認定日の特例」です。
 
和田隆

執筆者:

執筆者:和田隆(わだ たかし)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。

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「すぐわかる! 障害年金のもらい方」
「ルールブックで快適職場」

和田隆

執筆者:

執筆者:和田隆(わだ たかし)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。

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「特例」に該当しないか検討してみよう

障害年金を請求できるのは、初診日から1年6ヶ月後の障害認定日を過ぎてからというのが一般的です。しかし、障害認定日がいわば前倒しになって、1年6ヶ月後を待たなくても請求できる場合があります。これを「障害認定日の特例」といいます。
 
障害年金が受給できるなら、1ヶ月でも早く受給するに越したことはありません。障害年金の請求を考えている方は、この特例に該当しないか検討してみましょう。
 

「障害認定基準」によると…

厚生労働省が定めている「障害認定基準」(2021年3月現在。以下同様)によると、障害認定日は「障害の程度の認定を行うべき日をいい、請求する傷病の初診日から起算して1年6月を経過した日または1年6月以内にその傷病が治った場合においては、その治った日(その症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を含む。)をいう」とされています。
 
文中の「傷病が治った場合」については、「器質的欠損もしくは変形または機能障害を残している場合は、医学的に傷病が治ったとき、または、その症状が安定し、長期にわたってその疾病の固定性が認められ、医療効果が期待し得ない状態に至った場合をいう」とされています。
 
この「傷病が治った場合」が特例にあたるわけです。障害が固定したことを「治った」と表現することには違和感があり、適切な用語とは思えませんが、ともかく、障害認定基準ではこのように定義されています。
 

「特例」を集めてみた

「傷病が治った場合」というのが具体的にどんな場合なのかは、障害認定基準の各章に記載されています。集めてみました。
 
・喉頭全摘出……手術を施した日
 
・人工骨頭、人工関節……挿入置換した日
 
・上下肢の指などの欠損……切断または離断した日(障害手当金は創面が治癒した日)
 
・脳血管障害……初診日から6月経過した日以後に、医学的観点から、それ以上の機能回復がほとんど望めないと認められるとき
 
・神経系統の障害で、現在の医学では、根本的治療方法がない疾病であり、今後の回復は期待できず、初診日から6月経過した日以後において気管切開下での人工呼吸器(レスピレーター)使用、胃ろう等の恒久的な措置が行われており、日常の用を弁ずることができない状態であると認められるとき
 
・在宅酸素療法(常時使用の場合)……療法を開始した日
 
・心臓移植、人工心臓、CRT(心臓再同期医療機器)、CRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)……手術後(ただし、手術後の経過により再認定がありうる)
 
・心臓ペースメーカー、ICD(植え込み型除細動器)、人工弁……装着した日
 
・人工透析……人工透析療法を初めて受けた日から起算して3月を経過した日
 
・人工肛門造設、尿路変更術……造設した日、変更術を行った日から起算して6月を経過した日
 
・新膀胱造設……造設した日
 
・遷延性植物状態……障害の状態に至った日から起算して3月を経過した日以後に、医学的観点から、機能回復がほとんど望めないと認められるとき
 

医師によって判断が異なりやすいものも

いろいろ、ありますね。手の指が切断された日や、人工弁が装着された日など、障害認定日を判定しやすいものもありますが、脳血管障害での症状固定のように判定がそれぞれの医師によって異なりやすいものもあります。リハビリをしている場合などは、そのリハビリの目的が機能回復なのか、それとも現状維持なのかにもよります。
 
医師によって異なりやすいものの場合は、例えば、主治医の症状固定の判定に従って診断書を提出しても、日本年金機構の認定医がこれを認めず、障害年金が不支給になる場合もあります。難しいところですが、障害年金の請求者としては、主治医の判定をよりどころに、請求をしてみるしかありません。
 

症状固定に関しての注意点は…

症状固定に関しては、いくつか注意点があります。次のとおりです。
 

・症状固定と認められるのは、障害認定基準に記載されている上記のものに限られるわけではありません。また、障害認定基準は、随時、改定されていますので、障害年金の請求にあたっては、日本年金機構のホームページなどで最新のものをご覧ください。
 
・人工透析などのように、一定期間の経過が条件になっている場合でも初診日から1年6ヶ月が経過する日のほうが先に来たときは、この日を障害認定日として請求することが可能です。
 
・20歳前障害の場合は、20歳になる前に症状固定があっても、障害認定日は20歳になる日(20歳の誕生日の前日)です。
 
・精神疾患の場合は、症状固定は認められていません。微妙なのは、精神疾患の1つとされる高次脳機能障害の場合です。高次脳機能障害は「症状性を含む器質性精神障害」とされ、症状固定を前提とする障害手当金の対象ですが、障害年金の請求では、症状固定が認められるのは、とても難しいのが実情です。
 
・主治医と認定医がともに症状固定と判定した結果、障害年金を受給していたのに、症状がさらに悪化する場合もあります。症状固定の判定が結果的に間違いだったわけですが、この場合は、額改定請求ができます。厚生年金保険で障害手当金を受給したものの、症状がさらに悪化した場合も、改めて障害年金を請求することが可能です。

 
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士