年金繰り下げで決断する前に注意すべきこと その3 繰り下げ待機中に本人が死亡したら?

配信日: 2021.04.18

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年金繰り下げで決断する前に注意すべきこと その3 繰り下げ待機中に本人が死亡したら?
この記事では、繰り下げ待機中に本人が死亡した場合、年金はどうなるのかについて説明したいと思います。
 
繰り下げの金銭的評価はいくつまで生きたら、繰り下げない場合と比較して同じ金額になるのかということですが、それとは裏腹に年金を繰り下げれば、年金を受け取る前に本人が亡くなるリスクが大きくなります。
 
では、その場合、それまでに支払った年金が全て無駄になるのでしょうか? その不安に応えるために、年金のメカニズムを整理してみたいと思います。
浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。

現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。

ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。

FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。

2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。

現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。

早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。

サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow

70歳未満の繰り下げ待機中に本人が死亡したら?

65歳から70歳まで年金を繰り下げて、待機中に本人が亡くなったら、まず、本人は年金を全く受け取れません。
次の問題は、遺族はどうなるかということです。
 
本人が70歳未満で待機中であり、本人が亡くなった後に遺族が請求すれば、65歳から亡くなった日までの年金が未支給年金として、遺族に支払われます。70歳直前に本人が亡くなれば、遺族は5年近い期間の未支給年金を受け取れます。ただし、年金の金額は割り増しベースのものでなく、繰り下げなしの通常の支給額ベースで計算されます。
 
また遺族は未支給年金に加えて、遺族年金を受け取ることができます。遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。
 
遺族基礎年金は、死亡した者によって生計を維持されていた、(1)子のある配偶者 (2)子に支払われます
 
子とは、18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
または
20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子に限ります。
 
70歳近い人に18歳から20歳以下の子がある例はそう多くないので、遺族基礎年金は今回の検討から除外することにします。
 
遺族厚生年金は、死亡者が厚生年金の被保険者である場合、老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上あった場合など、遺族厚生年金の支給要件を満たしていた場合に死亡者の配偶者などの遺族は、死亡者の老齢厚生年金の3/4が支給されます。
  
ただし、割り増しベースではなく通常の支給額ベースを基に計算されます。
    

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70歳以上になって、繰り下げ年金をもらった直後に死亡したら?

それでは、繰り下げ請求をして、70歳以上になって年金を1回でも2回でももらった後に死亡した場合はどうなるでしょうか?
  
まず、本人は1回でも2回でも、繰り下げにより割り増しとなった年金をもらえます。
 
遺族はどうなるでしょうか?この場合は、待機中に死亡した場合にもらえた未支給年金は一切もらえません。
 
ただし、70歳以上で本人が死亡した時点で支給要件を満たしている場合、遺族厚生年金を受け取ることができます。ただし、金額は通常の支給額ベースで計算したものとなります。
 

どっちが有利か?

人の生き死ににかかわる事象について損得をいうのは、若干憚(はばから)れますが、一言でいうと、本人+遺族が受け取る年金額で考えた場合、待機期間中に亡くなった場合の方が5年弱の待機期間中の未支給年金を受け取れるだけ、有利ということになります。
 
とはいっても、こればかりは自分でコントロールできるものではないので、どうすることもできません。
 

もう1つの問題 75歳まで繰り下げた場合

2020年5月に法案が成立したので、2022年10月からは75歳までの繰り下げが可能になります。この場合、65歳から75歳未満の間の待機期間中に死亡しても、待機期間全期間相当の未支給年金が受け取れるのでしょうか? それはいまだ定かではありません。
 
年金には5年時効の原則があり、本人が74歳で死亡しても、9年分の未支給年金ではなく4年分の未支給年金しか受け取れない可能性があるとのことです。
 
年金事務所に確認したところ、75歳までの繰り下げについては、施行細則がまだ決まっていないため、今年から来年にかけて決めていくとのことでした。 9年分受け取れるのか、4年分しか受け取れないのか、どうなるか分からないようです。これも繰り下げ受給に関するリスクということができます。
 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

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