現在の年金制度は「長生きリスク」にどこまで対応できる?

配信日: 2021.04.28 更新日: 2021.09.03

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現在の年金制度は「長生きリスク」にどこまで対応できる?
日本には公的年金の制度が存在するものの、それでも多くの方が老後に対する不安に頭を悩ませています。皆さんも「老後は年金だけで生活できるだろうか」と考えたことがあるでしょう。そこで今回は、長生きすることのリスクに年金だけでどれだけ対応できるのか考えてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

長生きすることはリスクの1つである

「長生きすることはリスクの1つである」といわれることがあります。実際それは間違いではなく、高齢化が進む現代日本では長生きによるリスクから目をそらすわけにはいきません。
 
働き盛りの現役世代であっても、生きている限り突発的にケガを負ったり、病気にかかる可能性がゼロではないことを考えると、老化が進むことによる健康面での医療費の支出、定年から亡くなるまでの期間の生活費といった長生きによるリスクが、いかに大きなものか理解できるでしょう。
 

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公的年金は優秀な保険商品

日本の公的年金は保険商品として考えると優秀な商品であり、先に述べた長生きリスクにおいて十分な働きを示す制度だといえます。
 
なぜなら、日本の公的年金はただ単に老齢年金による老後の生活費保障という点だけでなく、老齢年金の受給年齢前であってもケガや病気で働けなくなった際に受け取れる障害年金や死亡時における遺族年金など、手厚い保障が20歳以降、一生涯続く制度であるからです。
 
また、年金制度を運営しているのは国であり、民間の保険会社ではありません。加入者からの保険料だけでなく国からの資金、税金も合わせて運営されています。
 
保険料の免除や猶予といった支払いができない際の対処法も用意されており、きちんと手続きをすれば保険料を納めなくとも年金を受給できるなど、民間のよくある保険商品と比べて破格の待遇となっています。
 

公的年金で長生きリスクにどの程度対応できる?

現在の年金制度であれば長生きによって生じるリスクである、老い、病気、ケガ、死亡の全てに対応することができるようになっています。しかしながら、範囲は広くともその給付内容までは十分とは言い切れません。例えば、最も多くの方が恩恵を受ける老齢年金を例に考えてみましょう。
 
国民年金に加入している方は老齢基礎年金を、厚生年金加入していたことのある方は老齢厚生年金をそれぞれ加入期間に応じて受け取ります。
 
老齢基礎年金は保険料を満額納めていても夫婦2人分で月額約13万円、平均的な収入で40年働いた夫の老齢厚生年金に夫婦2人分の老齢基礎年金を含めると約22万円になります(令和2年度)。
 
公益財団法人 生命保険文化センターの「令和元年度 生活保障に関する調査《速報版》」によると、 夫婦2人が老後に最低限の生活を営むのに必要なお金は1ヶ月当たりおよそ22.1万円となるため、公的年金のみで十分かといわれれば特に国民年金においては不安が残ります。
 
年金は長生きリスクの全てに対応できるが、必ずしも十分ではないため、不足している部分は自助努力で資産形成や貯蓄などを行っておく必要があります。
 

年金は全ての長生きリスクに対応できる優れた制度

平均寿命が長い日本において、長生きにより生じるリスクである老い、病気、ケガ、死亡の全てをカバーできる公的年金制度は優れた保険商品といえます。
 
ただ、保障範囲こそ広いものの、保障内容が十分であるかといえばそうではありません。年金制度については優れた保険に入っていると意識して、その給付内容を理解しておいてください。その上で、不足する部分を自助努力でカバーしていくことで、長生きリスクに対しての不安を減らす備えをしていくことができるでしょう。
 
参考
日本年金機構 令和2年4月分からの年金額等について
公益財団法人 生命保険文化センター 令和元年度 生活保障に関する調査《速報版》
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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