年金繰り下げを決断する前に注意すべきこと その4 特別支給の老齢厚生年金は繰り下げできない
配信日: 2021.04.27
年齢が若くなるにつれ、支給開始年齢が繰り下がっていき、男性なら1961年(昭和36年)4月1日、女性なら1966年(昭和41年)4月1日までに生まれた人しか受け取れません。それより若い人は特別支給の老齢厚生年金は受け取れず、全員65歳から支給される本来の老齢厚生年金に統一されることになります。
この記事では、特別支給の老齢厚生年金について説明したいと思います。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
目次
特別支給の老齢厚生年金とは?
1986年の年金制度の法改正により、老齢厚生年金の支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられました。2021年4月現在、徐々に支給開始が65歳に引き上げられている途上にあります。1986年以前は60歳から、それ以降は65歳からもらえるのが本来の老齢厚生年金です。
ただし、ある時期を区切って年金の支給開始年齢を一挙に60歳から65歳に引き上げてしまうと不公平感と混乱が生じるので、60歳から65歳へ徐々に引き上げていくための経過措置として設けられたのが、「特別支給の老齢厚生年金」の制度です。
「特別支給の老齢厚生年金」は、被保険者の生年月日と性別により支給開始年齢が異なり、60歳から1歳刻みで64歳まで、被保険者の年齢が若くなるに従って支給開始年齢が引き上げられます。すなわち、若くなればなるほど年金全体の支給開始年齢が少しずつ65歳に近くなっていくということになります。
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特別支給の老齢厚生年金は女性の方がより若い人まで受け取れる
「特別支給の老齢厚生年金」の生年月日と支給開始年齢の関係を図示したものが以下の図表1です。
「特別支給の老齢厚生年金」は「定額部分」と「報酬比例部分」に分かれていますが、両方とも老齢厚生年金の支給開始年齢を段階的に60歳から65歳までに引き上げるための方策です。ここでは説明の簡略化のため、「報酬比例部分」に焦点を当てて解説したいと思います。
図表1を見ると、生年月日の早い人(年齢の高い人)ほど支給開始年齢が早く、長い期間、報酬比例部分がもらえることが分かります。また、男女で支給開始年齢に差があり、報酬比例部分を受け取れる年齢は女性の方が男性より5歳若くなっています。
男性の場合、2021年4月1日時点で63歳になる人(注1)は支給開始年齢に達するので、それから2年間、報酬比例部分が受け取れます。それに対し、女性の場合は2021年4月1日時点で61歳になる人(注2)が支給開始年齢に達するので、それから4年間、報酬比例部分を受け取れます。
(注1) 1957年(昭和32年)4月2日から1958年(昭和33年)4月1日生まれの人
(注2) 1959年(昭和34年)4月2日から1960年(昭和35年)4月1日生まれの人
男性なら1961年(昭和36年)4月1日、女性なら1966年(昭和41年)4月1日までに生まれた人しか受け取れません。すなわち、女性は男性より5歳若い人まで「特別支給の老齢厚生年金」を受け取ることができます。
図表1
出典:日本年金機構 「老齢年金ガイド 令和3年度版」(P6から抜粋)
特別支給の老齢厚生年金は繰り下げできない
現在話題になっている年金繰り下げですが、特別支給の老齢年金は繰り下げ受給はできません。
サラリーマンとして在職老齢年金をもらう場合、支給停止になる給与金額はいくら?
60歳から65歳というとサラリーマンとして現役で働いていて、給与所得がある人も多いと思います。その場合、年金月額と総報酬月額相当額(給与と賞与の年間合計額を12で割ったもの)の合計額が28万円を超えると、特別支給の老齢厚生年金も一部または全部が支給停止、すなわち、減額になります。
ただし、2020年5月に成立した年金制度改正法案において、2022年4月からは年金月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円以下であれば支給停止は適用されないことになりました。
年金月額が10万円であれば、月額で37万円(年収換算444万円)まで稼いでも支給停止は免れることになります。
出典
日本年金機構 老齢年金ガイド 令和3年度版
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー