更新日: 2021.04.30 その他年金

「所在不明高齢者に係る届出義務化」とは? 知っておきたい年金問題。

執筆者 : 中村将士

「所在不明高齢者に係る届出義務化」とは? 知っておきたい年金問題。
年金問題の1つに、所在不明高齢者に係る不正受給問題が挙げられます。すでに死亡している、あるいは所在が不明にもかかわらず年金を不正に受給していた問題です。
 
この問題を解決するために、平成26年4月から年金機能強化法の改正により「所在不明高齢者に係る届出義務化」が実施されています。
中村将士

執筆者:中村将士(なかむら まさし)

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

所在不明高齢者に係る不正受給問題の原因は本人確認方法

国民年金法第29条には、「老齢基礎年金の受給権は、受給権者が死亡したときは、消滅する」とあります。このため、日本年金機構は何らかの形で受給権者の生存を確認する必要があります。
 
年金の不正受給問題が浮かび上がるまでは、日本年金機構は住基ネットに登録された受給権者についての本人確認情報の提供を受け、必要な確認を行っていました。
 
住基ネットで確認できない受給権者がいる場合には、「現況届」を提出してもらうことによって生存を確認していました。現況届には、必要事項の記入と署名が必要とされていました。
 
現況届への必要事項の記入と署名は、当然のことながら、受給権者本人が行う必要があります。本人が死亡した場合、現況届が提出されないのが普通です(本来、本人が死亡した場合は「受給権者死亡届(報告書)」を提出しなければいけません)。
 
提出されなければ日本年金機構は受給権者の生存を確認できず、年金の支給を一時差し止めることができます(国民年金法第73条)。しかし、親族によって受給権者が健全である旨の現況届が提出され、年金は支給され続けました。
 
これが、「所在不明高齢者に係る不正受給問題」です。所在不明高齢者に係る不正受給問題の原因は、所在不明者を把握する仕組みが十分でなかったと考えることができます。
 

所在不明高齢者に係る届出義務化

そこで、平成26年4月に年金機能強化法の改正により「所在不明高齢者に係る届出義務化」が実施されています。
 
国民年金法第105条第3項には「受給権者又は受給権者の属する世帯の世帯主その他その世帯に属する者は、厚生労働省令の定めるところにより、厚生労働大臣に対し、厚生労働省令の定める事項を届け出、かつ、厚生労働省令の定める書類その他の物件を提出しなければならない」と規定されています。
 
国民年金法施行規則第23条には「老齢基礎年金の受給権者の属する世帯の世帯主その他その世帯に属する者は、当該受給権者の所在が一月以上明らかでないときは、速やかに、次の各号に掲げる事項を記載した届書を機構に提出しなければならない」と規定されています。
 
これらの条文により、所在不明高齢者に係る届け出が義務化されているということができます。なお、ここでいう届け出とは「年金受給権者所在不明届」のことを指します。
 
一方、問題となった「現況届」については、平成29年2月より、その提出の際には、住民票の添付またはマイナンバーの記入が必要となりました。
 
マイナンバーを日本年金機構に収録しておくことで、日本年金機構は受給権者本人の生存を確認することができ、受給権者本人が死亡した場合の「受給権者死亡届(報告書)」の提出も、原則として不要となります。
 

まとめ

所在不明高齢者に係る届出義務化とは、年金受給権者の所在が1月以上明らかでないときは、その世帯の世帯主または世帯員が、年金受給権者の所在不明について届出を行う必要があるというものです。
 
年金の基本は、高齢者の生活を現役世代で支えることです。ルールを守って健全な社会で生活したいものですね。
 
出典・参考
日本年金機構 「年金を受けている方が所在不明になったとき」

総務省 「年金業務の運営に関する行政評価・監視結果報告書-所在不明となった年金受給権者に対する的確な措置の実施」

e-Gov 「国民年金法」

e-Gov 「国民年金法施行規則」

日本年金機構 「年金を受けている方が誕生月を迎えたとき」

日本年金機構 「Q 年金を受けていた方が亡くなったとき。」
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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