更新日: 2021.05.11 年金

障害年金ヒント集(11) 裁定請求時に注意すべきこと

執筆者 : 和田隆

障害年金ヒント集(11) 裁定請求時に注意すべきこと
年金の相談を受けていると、「障害年金をもらいたい。でも、ハードルが高くて……」と悩んでいらっしゃる人がたくさんいることがわかります。確かに、障害年金を受給するには、いくつものハードルがあります。しかし、取り組み方をちょっと変えると、うまくハードルを越えられる場合もあります。
 
悩んでいる人たちへの受給のためのヒント集です。第11回は「裁定請求時に注意すべきこと」です。
 
和田隆

執筆者:

執筆者:和田隆(わだ たかし)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。

ホームページ
「すぐわかる! 障害年金のもらい方」
「ルールブックで快適職場」

和田隆

執筆者:

執筆者:和田隆(わだ たかし)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。

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数値データのない傷病は注意が必要

障害年金の等級判定では、傷病のために日常生活や就労がどれほど制限を受けているかが判断材料になります。視力障害や聴力障害のように数値データのある傷病は、そのデータが重視されますが、数値データのない精神疾患などの傷病では、それだけ等級判定が微妙になります。
 
障害年金の請求者としては、慎重に対応する必要があるわけです。特に注意が必要なのは、次のような場合です。

・就労している場合
・遠距離を通勤している場合
・ひとり暮らしをしている場合

 

ガイドラインは策定されたのだが……

精神疾患に関しては、2016年に「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(*1)が策定され、障害等級の判定に用いられています。
 
ざっくりといえば、精神疾患の診断書の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」の欄で主治医が選んだ項目を数値化し、下記の表にあてはめて、障害等級の目安にするというものです。
 
この表のとおりに障害等級が決まる場合もあれば、そうでない場合もあります。ただ、現実は、この表での等級より低い等級に決まる場合が多いようです。
 
なぜ、この表とは異なる決定が行われたかは、日本年金機構に問い合わせたり、個人情報開示請求制度を利用して審査資料を取り寄せたりすればわかります。
 


(出典:厚生労働省策定「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」)
 
経験的にいえば、多いのが先に挙げた3つの場合です。対策を考えてみましょう。

対策の相手方は、主治医と日本年金機構の両方です。診断書は主治医が書きますので、誤解をされていたり、十分に事情を知ってもらっていなかったりする場合は、正しい診断書ができません。
 
日本年金機構の場合は、主に認定医です。主治医の診断書をそのまま受け入れてもらえるように配慮します。
 

事業所から受けている支援などをしっかり書く

【1】就労している場合

就労していることが請求者に不利に働く理由は、障害等級の判定に用いられている「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」(*2)を見るとわかります。「障害認定に当たっての基本的事項」という項目に次のように書かれています。
 
2級については「(前略)労働により収入を得ることができない程度のものである。(後略)」、3級については「労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。(後略)」。
 
上記の「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」には、「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活能力を判断する」と書かれています。
 
しかし、それは取りも直さず、就労していることで軽症と判断されやすい現実がある(あるいは、あった)ということではないでしょうか。
 
したがって、請求者のとる対策としては、仕事の内容をはじめ、事業所から受けている支援、上司・同僚から受けている配慮、などを具体的に書き出してみることです。そして、主治医に渡して読んでもらうとともに、自身で作成する「病歴・就労状況等申立書」の中にもわかりやすく書き込んでおきます。
 
事業所や上司・同僚の協力が得られるならば、この人たちが請求者に行っている支援や配慮について「申立書」の形で書いてもらえば、主治医や日本年金機構に、より客観的な資料として取り扱ってもらえることでしょう。
 

通勤の実態などをわかりやすく書く

【2】遠距離を通勤している場合

上記の「就労している場合」と関連がありますが、通勤の状況も判断材料にされる場合があります。自宅から就労先まで距離がある場合は、「1人で電車等の公共交通機関が利用できているんだな」と解釈されてしまいがちです。
 
しかし、電車が利用できていても、車内で息苦しくなると電車を降り、ホームで一息ついてから再び次の電車に乗るようにしている人もいます。
 
また、公共交通機関を利用せずに家族や知人の運転する乗用車に同乗して通勤をしている場合、頑張って自転車で通勤している場合などもあります。そうした場合は、そうする理由も含めて説明したほうが良いでしょう。
 

ひとり暮らしの理由や実態などを説明する

【3】ひとり暮らしをしている場合

症状が重くても、ひとり暮らしをしている人は少なくありません。父母らと死別して同居してくれる家族がいない場合、家族が病気に理解がなく一緒に住みにくい場合、不便でもひとり暮らしのほうが病気の治療に効果が上がる場合、など事情はさまざまです。
 
また、ひとり暮らしでも、実際には、毎日のように家族が様子を見に来てくれる場合や隣家が親類で何かと頼れる場合、訪問介護などの福祉サービスを受けている場合、あるいは掃除ができず、ごみ屋敷同然の住まいになっている場合などもあります。
 
このため、診断書や「病歴・就労状況等申立書」で、ひとり暮らしをせざるを得ない事情や、ひとり暮らしを援助してくれている人の存在、ひとり暮らしの実態などをしっかり説明することが大切です。
 

まず、主治医に理解してもらおう

診断書と「病歴・就労状況等申立書」を比較すると、日本年金機構の担当者や認定医が重視するのは診断書のほうです。したがって、上記のような事情や実態を説明するのは、診断書のほうが効果が高いわけです。
 
そうした事情や実態を診断書に反映してもらうには、まず、主治医に丁寧に説明しておくことが重要です。
 
出典
(*1)日本年金機構「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」
(*2)日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」
 
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士