更新日: 2021.05.28 その他年金

高齢者雇用安定法で70歳まで働けるようになると年金はどうなる?

高齢者雇用安定法で70歳まで働けるようになると年金はどうなる?
2021年4月、改正された高齢者雇用安定法が施行されました。これにより、今後は70歳まで働くことが徐々に一般化されていくことになるでしょう。では、70歳まで働いたとして私たちの年金はどうなっていくのでしょうか。高齢者雇用安定法という観点から今後の年金を見ていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

高齢者雇用安定法とは?

高齢者雇用安定法とは少子高齢化が進む日本において、高齢者の雇用の安定などを通じて経済と社会の発展を目指すために施行された法律です。本法律によって、2013年には65歳までの定年年齢の引き上げや再雇用が実施されるなど、高齢者が働き続けられるような社会づくりに一躍買っています。
 

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高齢者雇用安定法の改正で定年が70歳に!?

冒頭で述べたように高齢者雇用安定法は2021年4月より改正され、事業主には70歳まで雇用を継続する努力義務が課せられました。これはあくまで努力義務であり、強制ではないものの、多くの事業主が70歳までの定年の引き上げと継続雇用制度を導入する、または定年を廃止するなどの対応を取ることが想定されます。
 
この改正により、かつて定年が60歳といわれた時代から現在の65歳となったように、将来的には定年は70歳が当たり前となる日もそう遠くはないでしょう。
 

65歳以降も働く場合は年金に注意

現在は原則65歳から年金の受給が可能になっています。一方で65歳以降も会社員などとして働く場合、70歳未満であれば厚生年金の被保険者として保険料を支払うことになり、将来的に受給できる年金額が増えます。
 
しかし、65歳以降に厚生年金に加入して働く場合には在職老齢年金という仕組みが適用されるため、年金について損をしてしまうことがあります。
 

在職老齢年金により年金額が減少

在職老齢年金とは働きながら年金を受け取る場合、年金額と給与や賞与の額に応じて支給される年金の額が調整されるという制度です。大まかに説明すると、65歳以降は年金相当額と給与相当額の合計が47万円を超えると年金が一定額減少します。逆にいえば、合計が47万円以下であれば年金が減少することはないのです。
 

年金の繰り下げによる増額が適用されないことも

年金と給与の合計が47万円を超えると、在職老齢年金が適用されて年金額が減ってしまいます。それならば、繰り下げ受給をして年金を増額させようと考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、本来どおり65歳で年金を請求したとしたら、在職老齢年金が適用されてしまう部分については繰り下げ受給をしても増額の対象にはなりません。
 

なぜこのタイミングで70歳まで働ける環境を作った?

このタイミングで高齢者雇用安定法を改正し、70歳まで働けるような環境を国が整えようとする理由には、年金を受給するタイミングを遅らせるための下準備であることが想定されます。
 
年金の受給開始年齢が60歳から現在の65歳に引き上げられたときも、高齢者雇用安定法の改正で定年が65歳に延長されました。それを考慮すると今回の法改正は近い将来、年金の受給開始年齢を70歳まで引き上げるための準備といえそうです。
 
現段階で年金の受給開始年齢が70歳になると確定したわけではありませんが、高齢者雇用安定法が改正されて70歳まで働けるような環境となった以上、現役世代の方は年金が70歳からの受給になることを想定して準備をした方がよさそうです。
 

高齢者雇用安定法で私たちの年金には大きな影響が

65歳以降も働くとなると70歳までの間、厚生年金の保険料を支払うこととなったり、収入によっては年金の繰り下げ受給による増額効果が適用されない場合もあるなど、働き方によっては年金の受取額が減って損をしてしまうこともあります。
 
70歳まで働ける環境が整備されていくことで、今後は年金の受給開始年齢が70歳になることも想定されます。今回の高齢者雇用安定法の改正は、現役世代の年金に大きな影響を及ぼしたといえるでしょう。
 
出典
日本年金機構 老齢厚生年金の繰下げ受給
厚生労働省 雇用保険法等の一部を改正する法律の概要
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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