更新日: 2021.06.21 その他年金
年金受給開始時期の選択肢が拡大。75歳まで繰り下げた場合は得なのか?
すでに老齢年金の受給開始は原則65歳です。しかし希望すれば、最大5年間の繰上げ(60歳~)、繰下げ(~70歳)をすることが可能となりました。
では改正のひとつ、「年金の受給開始時期の選択肢の拡大」とはどんな内容なのでしょうか?
執筆者:西川誠司(にしかわ せいじ)
2級ファイナンシャルプランンニング技能士・AFP認定者、終活ライフケアプランナー、住宅ローンアドバイザー(一般社団法人住宅金融普及協会)、キャリアコンサルタント
ウェディングドレスショップ「Atsu Nishikawa」を17年間経営。
接客の中でこれから結婚するおふたりのお金の不安や子供を授かったときの給付金や育児休業のこと、また親からの贈与や年金のことの悩みを伺い、本格的にファイナンシャルプランナーとして活動を始めました。
みなさまの「小さな疑問や不安」を分かりやすく解決していくことを目指しています。
現状の年金受給開始の選択とはどのようになっているのか?
現在、年金の受給開始は原則65歳です。しかし、受給者の希望により最大5年間(60ヶ月)の繰上げ、繰下げができます。
繰上げの場合、1ヶ月早く受給開始すると0.5%減額され、5年間(60ヶ月)繰上げした場合は、0.5%×60ヶ月=30%減額(受給する間永久)されます。例えば、老齢基礎年金が年額78万円の人が60ヶ月繰上げした場合の受給額は、年額54万6000円の受給です。
繰下げの場合、1ヶ月0.7%増額されるため、70歳から受給する場合は0.7%×60ヶ月=42%増額されます。同様に年額78万円の老齢基礎年金の場合、110万7600円の受給です。
65歳を基準に上記図1のような増減があり、繰上げ・繰下げを1度決めたら変更することができず、受給額の増額率・減額率は生涯の受給期間中変わりません。
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改正される受給開始期間の選択肢とは
改正による変更は
(1)繰上げの場合、減額率は0.5%から0.4%に引き下げ
(2)繰下げの場合、受給開始年齢が最大75歳まで引き上げ
となります。
(1)に関して、最大60歳という点は変わりません。(1)の適用は2022年4月以降に60歳に到達する人からが対象です。
(2)に関して、増額率は0.7%のままで、最大120ヶ月繰り下げられるため、0.7%×120ヶ月=84%の増額率となります。(2)の適用は2022年4月以降に70歳に到達する人からが対象です。
この改正により、受給額がどうなるかを計算します。
繰上げの場合、0.4%×60ヶ月=24%減額されます。例えば、老齢基礎年金が年額78万円の人が60ヶ月繰上げした場合の受給額は、年額59万2800円の受給です(改正前54万6000円)。
繰下げの場合、0.7%×120ヶ月=84%増額されます。同様に年額78万円の老齢基礎年金の場合、年額の受給額は143万5200円です(改正前110万7600円)。
繰上げの場合は減額率が下がったので、受給金額が上がったことになります。繰下げの場合は受給開始時期を75歳1ヶ月以降にすることにより、年額の受給額が上がることになります。
繰下げを75歳にした場合は得なのか?
では実際に、75歳から受給した場合の総受給額が、65歳から受給してもらう総額を超えるのは何歳からなのでしょう。年額78万円の老齢基礎年金受給の場合で考えてみます。表1をご覧ください。
86歳の時、65歳から受給している人は1716万円、75歳から受給している人は1722万2400円となるので、86歳まで受給できるのであれば、75歳から受給するほうが総受給額は多くなります。
まとめ
受給開始時期の選択肢の拡大と繰上げ受給の減額率の引き下げについてお伝えしました。今回、老齢基礎年金を中心にお話しいたしましたが、老齢厚生年金も繰上げ、繰下げは同じ制度です。老齢厚生年金は金額が多くなるので、75歳から受給することになれば、年間の受給金額はかなり多くなることがわかります。
今回の改定により、繰上げの受給額は増えました。繰下げに関しては86歳よりも長く生きることで、75歳から受給しても総額は増えることがわかりました。人生100年時代といわれる時代となり、これからは健康寿命を延ばし、少しでも長く働ける体を作ることができれば、老後も年金で十分生活ができるかもしれません。
執筆者:西川誠司
2級ファイナンシャルプランンニング技能士・AFP認定者、終活ライフケアプランナー、住宅ローンアドバイザー(一般社団法人住宅金融普及協会)、キャリアコンサルタント