DVなどで配偶者と別居している場合、遺族年金はどうなる?
配信日: 2021.06.21
近年では、別居をしていても配偶者が遺族年金をもらえるというケースも増えていますが実際のところどうなのでしょうか。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
遺族年金は別居していても受け取れることがある
結論から申し上げますと、遺族年金は配偶者と別居中であっても受け取れる場合があります。状況次第で別居している配偶者が亡くなったとき遺族年金を受けられることもあれば、受けられないこともあるのです。それを判断するのに当たり、特に重要となるのは生計維持関係です。
遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金とがあるのですが、どちらにも共通して「亡くなった方に生計を維持されていること」というのが受給要件となっているからです。
生計維持関係が認められるには、原則として配偶者の方と同居していることが必要になります。仕事の転勤や病気の治療などから一時的に別居していたとしても、毎月あるいは定期的に生活費が振り込まれていたり、手渡しされているなど配偶者の収入で暮らしていれば、生計維持関係があると判断されて遺族年金を受け取ることができます。
その際、生活費が振り込まれている口座の動きや定期的に配偶者が家に帰ってきているなど、いずれまた一緒に生活するであろうと客観的に証明できると、より受給が認められやすくなります。
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DVなどの場合は要件が緩和される
DV被害など、やむを得ない理由で配偶者と別居していた場合、通常であれば同居するなどして生計維持関係が十分に認められない限り遺族年金が支給されないのですが、この点が柔軟に判断されます。
遺族年金を受給できるかどうかの判断に当たっては、別居期間の長短、原因や解消の可能性、経済的なつながりや定期的な音信・訪問の有無などが総合的に考慮されるほか、DV被害者においてはDVを受けていたという客観的な証拠が特に重要な判断材料となります。客観的な証拠があると判断されるのは主に次のような方です。
●DV防止法に基づいて裁判所が行う保護命令に係るDV被害者の方
●婦人相談所、民間シェルター、母子生活支援施設などで一時保護されている方
●DVからの保護を受けるために婦人保護施設や母子生活支援施設などに入所している方
●公的機関やそれに準ずる支援機関が発行する証明書などから、上記に準ずると確認できる方
ただし、上記に当てはまらなくとも支給が認められるケースもあります。別居していたからとすぐにあきらめるのではなく、まずは年金事務所や街角の年金相談センターへご相談ください。
過去に遺族年金を受けられないと判断されても今なら受給できる可能性も
近年ではDV被害者を救うべく、別居をしていたような方も遺族年金が受給できるよう、行政の対応が見直されてきています。
2019年には、DV被害により夫と約13年間別居していた女性に遺族年金を支給するよう国に命じた裁判例もあります。また同年には、「DV被害者に係る遺族年金等の生計同一認定要件の判断」に当たっては特に注意して取り扱うように、厚生労働省から通知が出されています。
そのためDV被害により別居していた方で、過去に遺族年金を受給できなかったことがある場合は、再度、年金事務所などへ相談してみることをおすすめします。
別居していても遺族年金を受けられることはある
DV被害者の保護や夫婦の在り方の変化などから、近年は別居していても遺族年金を受け取れることがあります。別居しているからとあきらめる前に、まずは遺族年金を受けられないか年金事務所や街角の年金相談センターに問い合わせてみてください。
出典
日本経済新聞 DV別居の妻に遺族年金 東京地裁、国に支給命令
厚生労働省 DV被害者に係る遺族年金等の生計同一認定要件の判断について〔厚生年金保険法〕
執筆者:柘植輝
行政書士