長生きリスクに備えて、公的年金は自分で作ろう
配信日: 2021.06.24
自分には必要ない、受け取れないと誤った考え方をしている人に、公的年金は自分で作る年金であるということについてお伝えします。
執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。
社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。
また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。
老後に受け取る「老齢年金」
公的年金は2階建て年金といわれています。1階は日本に住んでいる20歳から60歳までの人が加入する国民年金、2階は会社員や公務員などが加入する厚生年金保険です。国民年金保険料を20歳から60歳までの40年間のすべて納付した場合、受け取る年金額は2021年度では満額の78万900円です。
国民年金は職業や立場によって変わることなく、受け取れる金額は同じです。厚生年金保険は給与の額によって変化します。これら2つの公的年金は終身で受け取ることができるため、長生きリスクに備える保険であるといえます。
しかしながら、公的年金を老後に受け取るには120月(10年)の受給資格期間が必要です。受給資格期間(保険料納付済期間、免除期間など)が9年11月では1円も受け取ることができません。仮に、国民年金のみで10年分の保険料のみ納付済みの場合、満額の年金分の4分の1であるため、19万5225円(78万900円×120月÷480月)が受け取る金額です。
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長生きリスクは老齢だけではない
一般的に皆さんが「年金」と聞くと老後に受け取る老齢年金を想像するため、若い世代の人はまだ自分には関係ない、後で払えば良いと勘違いしている人も多くいるかもしれません。では、仮に国民年金に加入年数の前半である、20歳からの40歳までの人が、10年あればもらえるからと未納でいた場合、どうなるのでしょうか?
長生きリスクは年齢だけではありません。障害や死亡(遺族)もあります。万が一のリスクにも公的年金は対応しています。納付要件等、支給要件はありますが、それは民間の保険会社などで加入する生命保険や年金にも加入条件などがあることと似たような考え方です。
一定の要件を満たしていなければ、万が一のリスクに対応できません。元気なとき、若いときには何もしない、後回しにしてしまう人は注意が必要です。例えば、けがをしたとき、病気になったとき、要件を満たしていなければ、保険(年金)が1円もでないという結果になることもあります。
自分で作るという考え方
公的年金は加入が義務となっているため、預金や保険と切り離して考えてしまいがちです。しかし、加入年数が少ないと受け取れない、もしくは受け取れたとしても減額になってしまいます。公的年金も自分で作ると考えてみてはいかがでしょうか。
国民年金は1年間、保険料を納付すると、受け取る年金は約2万円ずつ増えていきます。10年積み立て(納付)すると、高齢期に年金として受け取ることができます。保険料は定額のため、受取時も定額です(ただし、保険料、年金とも毎年改定されます)。
厚生年金保険は給与の額と加入月数によって、受け取る年金が増えるため、積立金額(報酬)に比例して受取時の金額が変わります。これらを考慮すると、年金は自分で作るものであるといえそうです。
まとめ
人生100年時代、コロナ禍、自然災害と、長生きリスクに備える保険の必要性は高いです。公的年金には、収入減などで、保険料を納めることができない場合、免除や猶予制度があります。未納のままでいると、老齢、障害、遺族(死亡)年金を受け取ることができないだけでなく、滞納処分により、財産差し押さえになる可能性もあります。
ライフプランを立てる上でも公的年金の仕組みを理解し、現在と将来、そして万が一のリスクに備えるために、自分で年金を作ることは大切なことです。
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士