障害年金ヒント集(14) 「障害等級の目安」の運用実績

配信日: 2021.06.28

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障害年金ヒント集(14) 「障害等級の目安」の運用実績
年金の相談を受けていると、「障害年金をもらいたい。でも、ハードルが高くて……」と悩んでいらっしゃる人がたくさんいることが分かります。確かに、障害年金を受給するには、いくつものハードルがあります。

しかし、取り組み方をちょっと変えると、うまくハードルを越えられる場合もあります。悩んでいる人たちへの受給のためのヒント集です。第14回は「『障害等級の目安』の運用実績」です。
和田隆

執筆者:和田隆(わだ たかし)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。

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不安を解消してくれそうなデータがある

障害年金を請求するための準備作業を進めていると、実際に受給できるのかどうか不安になることも多いのではないでしょうか。特に、精神の障害の場合は、検査数値で判定を受けるのではないことが多いため、なおさらでしょう。そんな不安を少しでも解消してくれそうなデータがあります。
 

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どのように運用されているか分からなかった

厚生労働省が昨年9月の社会保障審議会年金事業管理部会(※1)に提出した「精神の障害に係る等級判定ガイドラインの実施状況について」という名称のデータ(※2)です。このガイドラインは2016年に定められたもので、その中心になっているのが「障害等級の目安」と名づけられた表(以下、「目安表」と表記します)です。
 
【障害等級の目安】


出典:「厚生労働省年金局 日本年金機構『障害年金の業務統計等について 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』」より筆者抜粋
 
表の縦軸は、精神の診断書の記載項目である「日常生活能力の判定」の7項目それぞれの4段階評価について、程度の軽いほうから1~4の数値に置き換え、その平均を算出したものです。
 
一方、横軸は、同じ診断書の記載項目である「日常生活能力の程度」の5段階評価を指しています。縦軸と横軸の交点のマス目に障害等級の目安が表示されています。
 
精神の障害で障害年金の請求を検討しておられる方は、おそらくこの目安表を目にされたことがあると思います。しかしこれはあくまでも目安ですので、実際にはどのように運用されているのか、外部からは知ることができませんでした。ようやく、その運用実績が明らかにされたわけです。
 

3年間の運用実績が明らかにされた

その一部を転載します。ガイドライン施行後の3年間(2017~2019年度)の障害基礎年金と障害厚生年金の新規裁定の結果で、「ガイドライン区分ごとの支給決定割合」という名称の表と「障害等級の目安と認定された障害等級の関係」という名称の円グラフです。総件数は約24万件です。
 


出典:「厚生労働省年金局 日本年金機構『障害年金の業務統計等について 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』」より筆者抜粋
 

目安と認定結果の一致率は92.1%

表の縦軸と横軸は、目安表と同じです。交点のマス目の上段には障害等級の目安が表示されており、下段には障害年金の受給が決まった割合と、障害等級の目安どおりに認定されたかどうかを示す認定率が表示されています。
 
例えば、判定の平均が「3.5以上」で、程度が「5」の場合、障害等級の目安は「1級」ですが、目安どおりに1級と認定されたのは、その78.4%であり、2級など他の等級も含めて障害年金の受給が決まったのが99.1%と読み取れます。
 
また、円グラフは、目安と実際の認定結果の一致率を示しており、92.1%です。ただし、目安と認定結果が「非該当」、つまり不支給で一致した場合も含まれていますから、支給率は分かりません。
 

目安表はおおむね尊重されているようだ

この表から、次のようなことがいえると思います。
 

・目安と認定結果の一致率が92.1%であることから、目安表はおおむね尊重されているようだ。
・日常生活能力の区分で重度とされたケースほど、支給率が高くなっている。
・目安が「非該当」でも、実際は障害年金が決定されている事例がある。判定の平均が「1.5未満」の場合など。傷病の種類によるものと思われる。

 
一方、請求者の立場からいえば、次の点は最も知りたいことですが、残念ながら分かりません。
 

・目安どおりに認定されなかった場合の理由は何か。
・障害認定日ごろを現症日とする診断書での一致率と、請求時を現症日とする診断書での一致率との間に差があるか。

 

診断書の「判定」と「程度」がやはり重要

障害年金の裁定請求では、診断書の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」の評価が、やはり重要といえそうです。「目安表はおおむね尊重されているようだ」と受け止めて、裁定請求の準備作業を進められるとよいと思います。
 
出典
(※1)厚生労働省「社会保障審議会年金事業管理部会資料(第51回)」
(※2)厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドラインの実施状況について」(資料「障害年金の業務統計等について」の9~14ページ)
 
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
 

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