中高齢寡婦加算、経過的寡婦加算とは? 具体的な支給額は?

配信日: 2021.08.07

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中高齢寡婦加算、経過的寡婦加算とは? 具体的な支給額は?
一家を支える大黒柱の方が亡くなったとき、残された家族には遺族年金が支給されますが、亡くなった方が厚生年金の被保険者の場合、要件に該当する妻に加算されるのが「中高齢寡婦加算」と「経過的寡婦加算」です。この2種類の寡婦加算について解説します。
上山由紀子

執筆者:上山由紀子(うえやま ゆきこ)

1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者

1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者 鹿児島県出身 現在は宮崎県に在住 独立系ファイナンシャル・プランナーです。
 
企業理念は「地域密着型、宮崎の人の役にたつ活動を行い、宮崎の人を支援すること」 着物も着れるFPです。
 

中高齢寡婦加算とは?

会社員など厚生年金の被保険者の方(夫)が死亡したとき、その方に生計を維持されていた配偶者(妻)は遺族年金を受け取れます。
 
遺族基礎年金の支給要件を満たす子どもがいる妻は遺族基礎年金、また遺族厚生年金の支給要件を満たすことで遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取ることができます(※1)。しかし、遺族基礎年金の支給要件を満たす子どもがいない妻は遺族厚生年金のみの受給となるため、公平性のために中高齢寡婦加算が加わるのです。
 
加算額は一定で、40歳から65歳になるまでの間、年額58万5700円が遺族厚生年金に加算されます。ただし、65歳になると妻自身の老齢基礎年金が受給できるので中高齢寡婦加算はなくなります(※2)。
 
中高齢寡婦加算にも支給要件があり、下記のいずれかに該当する妻が受けることができます。
 
(1)夫が亡くなったときに40歳以上65歳未満で、生計を同一にしている18歳到達年度の末日を経過していない子、あるいは20歳未満で障害等級1級または2級の障害の状態にある子がいない妻。
 

※日本年金機構 「中高齢寡婦加算」を基に筆者作成
 
(2)遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻(40歳到達当時に子がいるため遺族基礎年金を受けていた妻)が、子どもが18歳到達年度の末日あるいは一定の障害の状態にある子どもが20歳に到達したために遺族基礎年金が受けられなくなったとき。
 

※日本年金機構 「中高齢寡婦加算」を基に筆者作成
 

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経過的寡婦加算とは?

遺族厚生年金を受け取っている妻が65歳になると老齢基礎年金の受給が始まるため、中高齢寡婦加算が支給停止になることはお話ししましたが、その代わりに加算されるのが経過的寡婦加算です(※3)。
 
国民年金の第3号被保険者(会社員など第2号被保険者に扶養されている方が対象)の制度は昭和61年4月に始まりましたが、それまでは各自で国民年金に任意加入となっていました(※4)。経過的寡婦加算は、任意加入していない妻の老齢基礎年金の額が低下することを防止するために設けられたという経緯があります。
 
そのため経過的寡婦加算の加算額は、昭和61年4月1日において30歳以上の方が60歳に達するまで国民年金に加入した場合の老齢基礎年金の相当額と合わせると、中高齢寡婦加算の額と同額になるように設定されています。
 

中高齢寡婦加算(58万5700円)=経過的寡婦加算の額+老齢基礎年金
↓     ↓
経過的寡婦加算の額=中高齢寡婦加算(58万5700円)-老齢基礎年金

 
例えば、昭和26年4月2日~昭和27年4月1日生まれの方の加算額は9万7637円です(※5)。
 
経過的寡婦加算は以下のいずれかに該当する場合に加算されます。

(1)昭和31年4月1日以前生まれの妻が、65歳以上で遺族厚生年金の受給対象となった場合。
(2)中高齢寡婦加算がされていた、昭和31年4月1日以前生まれの遺族厚生年金の受給対象の妻が65歳に達したとき。

 
経過的寡婦加算の額(令和3年度)

生年月日 加算額(年額)
大正15年4月2日~昭和2年4月1日 58万5700円
昭和2年4月2日~昭和3年4月1日 55万5665円
昭和3年4月2日~昭和4年4月1日 52万7856円
昭和4年4月2日~昭和5年4月1日 50万2032円
昭和5年4月2日~昭和6年4月1日 47万7990円
昭和6年4月2日~昭和7年4月1日 45万5550円
昭和7年4月2日~昭和8年4月1日 43万4558円
昭和8年4月2日~昭和9年4月1日 41万4878円
昭和9年4月2日~昭和10年4月1日 39万6391円
昭和10年4月2日~昭和11年4月1日 37万8991円
昭和11年4月2日~昭和12年4月1日 36万2586円
昭和12年4月2日~昭和13年4月1日 34万7092円
昭和13年4月2日~昭和14年4月1日 33万2435円
昭和14年4月2日~昭和15年4月1日 31万8550円
昭和15年4月2日~昭和16年4月1日 30万5377円
昭和16年4月2日~昭和17年4月1日 29万2862円
昭和17年4月2日~昭和18年4月1日 27万3340円
昭和18年4月2日~昭和19年4月1日 25万3817円
昭和19年4月2日~昭和20年4月1日 23万4295円
昭和20年4月2日~昭和21年4月1日 21万4772円
昭和21年4月2日~昭和22年4月1日 19万5250円
昭和22年4月2日~昭和23年4月1日 17万5727円
昭和23年4月2日~昭和24年4月1日 15万6205円
昭和24年4月2日~昭和25年4月1日 13万6682円
昭和25年4月2日~昭和26年4月1日 11万7160円
昭和26年4月2日~昭和27年4月1日 9万7637円
昭和27年4月2日~昭和28年4月1日 7万8115円
昭和28年4月2日~昭和29年4月1日 5万8592円
昭和29年4月2日~昭和30年4月1日 3万9070円
昭和30年4月2日~昭和31年4月1日 1万9547円

※日本年金機構 「年金給付の経過措置一覧(令和3年度)」を基に筆者作成
 

まとめ

厚生年金に加入している夫が亡くなると、要件に該当する40歳以上の妻は65歳になるまで遺族厚生年金に中高齢寡婦加算が加算されます。一方、経過的寡婦加算は昭和31年4月2日以降に生まれた方は対象となりませんが、ここから第3号被保険者の制度が充実してきたことが分かります。
 
また、遺族厚生年金を受給している妻が結婚や養子縁組などをすると遺族年金を受ける権利がなくなります。この場合、権利がなくなる理由に該当した日から10日以内に「遺族年金失権届」の提出が必要となるので注意してください(※6)。
 
出典
(※1)日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)
(※2)日本年金機構 中高齢寡婦加算
(※3)日本年金機構 経過的寡婦加算
(※4)日本年金機構 Q 私は昭和58年に結婚してからずっと、厚生年金に加入している夫の被扶養者になっていますが、「ねんきん特別便」には昭和61年4月からの国民年金の加入記録しか記載されていません。昭和61年4月より前は第3号被保険者にならないのですか。
(※5)日本年金機構 年金給付の経過措置一覧(令和3年度)
(※6)日本年金機構 遺族年金を受けている方が結婚や養子縁組などをしたとき
 
執筆者:上山由紀子
1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者
 

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